The Beatles 「Here Comes The Sun」
ビートルズの事実上のラスト・アルバム「Abbey Road」でのジョージの曲は、今までの分担通り(?)、2曲だけだが、その2曲はジョンやポールの曲に勝るとも劣らないクオリティと存在感を兼ね備えていた。そのうちのひとつがこの「Here Comes The Sun」だ。清涼感溢あふれるナチュラルな名曲で、線の細いジョージのボーカルも、アコースティックを基調とした優しいサウンドにピタリとハマッている。Here comes the sun …Dudududu…ほら 太陽がHere comes the sun and I say 太陽が顔を出すよIt's alrightもう大丈夫だLittle darling, it's been a long, cold, lonely winter リトル・ダーリン 長く冷たく孤独な冬だったLittle darling, it feels like years since it's been here リトル・ダーリン 何年もじっと堪えてきたような気がする(歌詞一部抜粋)ジョージがエリック・クラプトンの家の庭で日なたぼっこをしてる時に浮かんだ曲だそうで、アコースティック・ギターによる爽やかで、ちょっぴり感傷的なイントロは、寒い冬が終わり春の訪れを感じさせる解放感を思わせる。アナログ盤ではB面の一曲目に配置されているが、CDでは、前曲にあたるジョン作の「I Want You」の重苦しく混沌とした演奏が突然終わった後に、この曲のイントロがスーッと聴こえてくるという構成になっており、なんとも言えないカタルシスを感じさせてくれる。一聴するとシンプルなサウンドに思えるが、バンドの演奏の他にも、シンセサイザーや17人編成のオーケストラが加えられている。見逃せないのが当時ジョージが入れ込んでいたムーグ・シンセサイザーのサウンドで、数種のムーグを重ねた音色は、後のプログレなどで聴ける無機質なイメージとは違った、独特の温もりを感じさせる素晴らしいものだ。ビートルズ時代のジョージというとどうしても地味なイメージがあるが、ロック・ミュージャンとしてはインド音楽や電子音楽にいち早く関心を示し、最新のサウンドを自分流に取り込んで作品として表現する手腕は、ジョンやポールにもひけを取らなかった事がこの曲からも分かる。メロディは美しく、どこかリラックスした曲調なのもジョージならではの名曲と言える。もちろん「Sun Sun Sun, Here It Comes…」という部分でのコーラス・ワークも、ビートリーな気持ちよさを感じさせてくれる。シングルカットはされなかったものの、後期ビートルズを代表する一曲である、というのは勿論だが、後のジョージのソロ曲と並べて聴いても、さほど違和感がないというのも面白い。ジョンやポールに匹敵する実力を身につけたジョージは、同時にこの時点で「ビートルズのジョージ」から一人のソロアーティストになっていたのかもしれない。「Here Comes The Sun」を聴くにはここをクリック!ポム・スフレのホームページでは、自作曲の公開の他に、独自の名盤レビューやビートルズ・レビューを行っています。