Simon&Garfunkel 「The Only Living Boy In New York」
サイモン&ガーファンクル(S&G)の言わずもがなの名盤「Bridge Over Troubled Water(明日に架ける橋)」(写真)は、タイトル曲をはじめとして、「El Condol Pasa(コンドルは飛んでゆく)」「The Boxer」「Cecilia」といったスタンダード曲が目白押しの一枚だが、この「The Only Living Boy In New York(ニューヨークの少年)」も忘れられない名曲だ。ニューヨークでひとり強く生きる少年が、旅立つ友を想う心情を綴った歌だが、これは当時解散間際の状態にあったS&Gの歌でもあった。S&Gとして成功する前にも、二人はトム&ジェリーという名前のデュオで活動しており、歌詞の中に出てくるトムとは、アート・ガーファンクルの事である。13歳の時から二人で一緒のステージに立ち、S&Gとして空前の成功を収めたこのデュオには、長い間に培われた友情の他にも他人には分からない緊張関係があり、それは成功を収めるに従って、互いのエゴや確執となって表れていった。「Bridge Over Troubled Water」のレコーディング時には、二人の関係は飽和状態となっていた上、俳優志向もあったアート・ガーファンクルは出演映画「キャッチ22」の撮影に追われて、レコーディングには全く参加してない曲もあった。こうした状況の中で、二人は自然と「解散」を意識せざるをえなくなった。そしてできたのがこの曲だった。Tom, get your plane right on time.トム、飛行機に乗り遅れるなI know your part'll go fine.大丈夫、仕事はうまくいくさFly down to Mexico.メキシコまで飛んでいきなDa-n-da-da-n-da-n-da-da and here I am.僕はここにいるThe only living boy in New Yorkニューヨークに、たったひとり生きる僕なのさポール・サイモンの抑えた歌とアコースティック・ギターのストロークを中心とした演奏は、シンプルだが実に力強い。そして、サビで静かな盛り上がりを見せるコーラスワークは、天高く昇っていくかのような美しさを持つものであり、爽やかな感動と少しばかりの寂しさをもたらす。ここにあるカタルシスと寂しさは、「別れ」と互いの「新しい出発」を思わせる。「Bridge Over Troubled Water」は当時としてはケタ外れの大ヒットを記録、その年のグラミーで六つの賞を受賞という輝かしい成績を残して、1970年にサイモン&ガーファンクルは解散した。「人々は次の曲を出すのが当然と考えただろうけど、ヒットすればそれだけ次作に要求される事はハードになってくる。そう考えれば「Bridge Over Troubled Water」の次作を作らなくてよかったと思うよ」-----ポール・サイモンデュオ解散後の二人は、新作アルバムを作る事はなかったものの、ポール作の「My Little Town」やサム・クックのカバー「Wonderful World」で共演し、1982年にはS&Gとして、ニューヨークはセントラル・パークで再結成フリーコンサートを行った。このコンサートには50万人もの観衆が集まったといわれる。集合離散は人間の宿命であり、「くっついたりはなれたり」を繰り返すのが人と人なのかなあ…とか思ってみたりする。「The Only Living Boy In New York」を聴くにはここをクリック!