Rolling Stones 「Miss You」
今から30年前に発表された「Miss You」は、ローリング・ストーンズにとって八曲目の、そして現時点での最後の全米No.1ヒットである(イギリスでは3位)。クレジットはミック・ジャガーとキース・リチャーズの共作となっているが、ほとんどミックがメインで作った曲らしい。ビリー・プレストンとのセッション中にインスピレーションを得たのだとか。また、ジョン・レノンは、この曲を聴いて「自分の作った『Bless You』(※)を下敷きにしている」と言ったなんてハナシもある。下敷きですか、う~ん。まあ、似てると言われれば確かに似てるかな…………タイトルがね曲は、アルバム『Some Girl(女たち)』からの先行シングルとして'78年に発売されている。当時流行していたディスコの要素を取り入れたサウンドが大きな話題となり、12インチ盤のシングルによるロング・ヴァージョン(というかそちらがオリジナル・テイク)も発売された。当初はキワモノ扱いされたというこの曲。ミックは「『サタデー・ナイト・フィーヴァー』が流行る前から出来ていた」とか「ディスコ・ソングとは思っていない」と発言しているが、そこはしたたかな彼のこと。多かれ少なかれディスコを意識していたのは間違いないだろう。歌は世につれるもの。"流行は正しい"、"ポップスはヒットしてナンボ"というミックの主張が聞こえてくるような仕上がりだ。とはいえ、時代の音を取り入れながらも、しっかりと"ストーンズの曲"になっている所はさすが。サウンドは程よくスカスカ(笑ミックの、ふてぶてしくてネチっこい歌声がズカズカと耳に入りこんでくる。スキャット部分で聴けるファルセット・ヴォーカルがとてもセクシーだ。ビル・ワイマン&チャーリー・ワッツのリズム隊も強烈。このグルーヴ感は真似できるようでマネできない。キース&ロンによるぶっきらぼうなコーラスもヘタカッコいいですゲスト・ミュージシャンの演奏も聴きのがせない。イアン・マクレガン(スモール・フェイセズ/フェイセズ)の弾くエレピは妖しくてメロウだ。それまでは路上で演奏していたという黒人ミュージシャン、シュガー・ブルーの吹くハーモニカも曲にブルージーな印象を添えている。そして、間奏で短いサックス・ソロを聴かせるのは、キング・クリムゾンやキャメルのメンバーとして知られるメル・コリンズだ。三人のプレイヤーがそれぞれの音を出しているのに、そのどれもがストーンズの中に溶け込んでしまっている。この胃袋の大きさもバンドの生命力というべきか。「Miss You」は、現在でもライヴで必ず演奏されるストーンズ・クラシックのひとつだ。ロック、R&Bをベースとしつつも、"なんでもあり"な姿勢で転がり続ける彼らの底力を見せつけられる傑作と言える。なお、この曲およびアルバムの録音に際しては、キース・リチャーズは間接的な参加のみとなっている。同時期に起こっていた、彼の麻薬所持問題のためだ。裁判沙汰にまでなったキースは、当局に監視され自由に身動きがとれず、パリで行われたセッションのテープを送ってもらい、自分のパートだけを演奏するという形をとった。ギターの音がどこかふてくされているように聞こえるのは、そのせいだろうか。それでも、この時のセッションは実りあるものだったらしく、全部で50にも及ぶ曲が録音されたという。「Respectable」「Lies」といったパンキッシュな曲にもその勢いは表れている。「たかがロックン・ロール」とウソぶきながら、たくましく時代を生き抜いてきたストーンズ。この当時はまだ、"日本に来ないバンド"だったストーンズ。そんな彼らのギラギラした魅力は、アルバム『Some Girls』にもたっぷりと詰めこまれている。「Miss You」を聴くにはここをクリック!「この国(イギリス)には、世界に誇れるものがふたつある。 ひとつは女王陛下。 もうひとつは俺だ」------ミック・ジャガー※ ジョン・レノンの'74年のアルバム『Walls And Bridges』に収録。