カテゴリ:ベルリンにて
(初公開2013年5月15日) 不気味な電話 そうなんですよ! そんな電話が来た事あったんです! あれは再び大雪の降り始めた11月の終わりごろでした。 面白いテレビ番組も無いし、夜も更けたので、そろそろ寝に行こうかなと思って立ちあがっった瞬間、突然電話が鳴りました。 当時はまだベル音だったので、し~んと耳鳴りが聞こえるほど静かな夜に、けたたましい電話の音です。 そりゃ~、ドキッとしますよ。 こんな夜遅くの電話だと、日本からの良くない知らせかもしれないと思うじゃないですか。 恐る恐る受話器を耳に当てると、聞きなれないドスのきいた男の声が聞こえました。 ドイツ人ではない、外国訛りのあるしわがれた、しかしまだ若い人の声です。 その声が私に聞きました。 「マイケはいるかい」 そんな名前の人は此処に住んでいませんし、知り合いでもありません。 つっけんどんな言い方だったので、返事もつっけんどんに一言「間違いです」と言って切りました。 すると、切った後からまた同じ電話が掛かって来ました。 その後も立て続けに同じ事が再三繰り返されましたよ。 だけど、ずいぶん失敬な男だなぁ。 だって、自分の名も言わず、電話の相手も確かめず、直接「マイケを出せ」だもの。 「夜の11時以降に掛かって来る電話は、みんなお前の電話だからね。」と変な言いがかりをつけて、プップクンは絶対に出ない。 この人は普通の電話に出るのも好きではない。 相手の留守番電話には絶対に何も話さないで切るタイプ。 そして私がちょうど歯を磨いているときにまた電話のベルが鳴り出しました。 洗面所が2階なので、歯ブラシを口の中に突っ込んだまま階段を下ります。 「モシャモシャ、」 「マイケはいるかい」 「マシガイデシオ、オヤシミナハイ」 そしてガチャッ。 上に上がったとたんまたベルが鳴ります、しゃんしゃんと。(←あ、しゃんしゃんは鈴だった。) 今度は腹を立てたプップクンが階下にすっ飛び下りて電話に出ました。 そして、しばらくしてからブツブツ文句を言いながら上がって来ると、 「電話線を抜いちゃったよ。」 とかなり気に掛かる事をホザいて、さっさと布団にもぐってしまいました。 これで静かにはなったけれど、いやだったなぁ、変な電話。 でもマイケっていったい誰かしら。 朝食の話題はこれの繰り返し。←私達、話題が無いといつも繰り返しです。 ホントはこんな豪華な朝食、うちではしたことが無い。 その日は午後からプップクンのサウナの夜で(わたしの最愛の日なのです)好きな音楽を聞いたり(まだインターネットなんてやっていなかったので)手紙を書いたり手仕事をしたり、母に電話をしたり---------。 電話を--------あっ、そうだ 電話 プップクン、案の定、電話線を繋げるの忘れていましたよ。 もちろん私は似た者同士の妻ですからノホホンと同じく忘れていました。 かなり夜も遅くなっていましたが電話の線を繋げると、ウッソォ~! まるで待ち受けていたかのように、それはとたんに鳴り出しました 頼りにはならなくともプップクンはいないし、私はもう、ドッキドキです。 その反面、なんで自分の家の電話に怖がらなくちゃならないのよっ!と自分に強く言い聞かせて、ベルの音に合わせながらホイッホイッと部屋を2周して←やっぱり怖くて勇気づけ----エイッと受話器を取ると 「マイケはいるかい」 と、いつもの相手は今日はかなり酔っ払っているような声です。 私も今日こそは決着を付けなければならぬっ と覚悟して言いました。 「まちがいです。」←何だ、今までと全然同じ言葉じゃん。 でも、その言葉でまたすぐに切られると察した男は、すぐさま切羽詰まったような悲痛な声を出しました。 「なぜうそを言うんだ。俺は何も悪い事はしていない。ただ、マイケと話さなくちゃいけないんだ。」 明らかに私を誰かと思い込んでしまってる。←マイケの守護神とか 自分が一人相撲を取っているのに気が付いていないのかなぁ。 よっぽど早合点のおっちょこちょいか、周りの人に嘘ばかり吐かれている哀れな奴なのかもしれない。 そう思って気が付いたら、私のドキドキがすっかり消えていて、なんだかこの人に同情心まで湧いてきました。 それにこっちだって真剣に最後の決着をつけようと思っているのと同じく、向こうだって ”繋がっていなかった電話” に何度も無駄な接続を試みていたのかも。 少し興味が湧いて来て、なぜ私がウソを吐かなければならないのか聞くと 「あんたは俺にマイケと話をしてもらいたくないんだ。」 と、酔っているせいか、随分感情的になって、声の調子が高ぶっています。 話していて、私が外国人だという事に気が付く余裕も無い様子です。 知らない他人に敬称のSieさえ用いていないところから察すると、教養のある人々とは接触が無いのでしょう。 ところがドイツ人の仕事仲間の多くが彼らに敬称で呼びかけず、口の利き方も横柄なので、きちんとしたドイツ語を覚える機会もありません。 素朴で正直な人々だと思うのに残念な事だと思う。 いつまでもこの人を苛立たせておきたくなかったので、日本語訛りをはっきり出して、私達がマイケなる人物とは全く関係が無い事を淡々と説明しました。 声の調子を落とし、ちゃんとした敬称を使ったドイツ語で、です。 電話の向こうでは一瞬沈黙があり、大きくため息が漏れると、急に元気のない声が受話器から聞こえて来ました。 「俺は彼女の”ヤク”を払ってやったんだ」 ウッソォ~ 路上の恋の物語だと思ってたら・・・・この人、実はマイケに麻薬のお金を取られたのだったぁ。 マイケが彼に渡した "いい加減な数字" が偶然にもここの電話番号と一致して、こっちは部屋の中でマラソンまでしちまったのですよ。 なにはともあれ、大変な世界を覗いてしまった。 こんな事は以前にもあって、知らない日本女性から自分は妊娠をしているが どの医者が良いかと電話で聞かれたので、私の主治医を教えてあげました。 私の電話番号は電話帳の日本名を探しあてて掛けたという。 彼女は日本語に飢えていたのか、すぐに自分の事を話し出しました。 ドイツ語もできなくて、夫がメキシコにいる間、夫の友人のアパートに転がりこんでいると言うので、ご主人はいつ帰っていらっしゃるの、と聞いたら「麻薬が手に入ったらすぐに戻ると言ってました。」 -------で、そのとたん私は二の句が告げなくて黙ってしまったら、向こうは「やばかった!」と気が付いたらしく、てあわてて電話を切ってしまいましたが、いったい誰だったのだろうと今でも判りません。 注: 2022年7月 気持玉数 : 8 これは20年も昔の話で、今は大麻はある程度なら解禁になっています。 この記事へのコメント 長老純爺 2013年05月15日 13:00 私の住む東京には、そして知り合いにもマイケはおりませんし、居て欲しくもありません。 我が家の電話は24時間留守電になっています。かかってくるのはほぼ100%セールスの電話なので…。 家族、親戚、友人、会社などは直接携帯に掛かってきますので、不便はありません。なおかつ、日本で大流行の“振り込め詐欺”の対策にもなっております。(←まぁ、そんな金は持っておりませんが…) そういえば、このお正月に家の電話からアメリカに掛けた国際電話の料金がいまだに請求がきません。 これって、ラッキー!と喜んで良いのでしょうか? あと2週間ほどで半年となります。もう時効ですよね。 ponko310 2013年05月15日 14:07 日本では信じられないと思いますがプップポン子家には携帯が無いんです。 PCも買って3年目ですし、私達ってかなり原始的な人間なんです。 未払いの電話料金は私がテレコムに通知しておきましたから100%の利子付きで直に請求書が届きますよ明日です、明日。 長老純爺 2013年05月15日 16:28 じぇ、じぇ、じぇ!! 明日請求書がくるの? しかも100%の利子付きで? 助けてくれぇ~!!! ponko310 2013年05月15日 17:14 え、ホントに来たらど~しよう(・・・と、内心ワクワクして、期待) 長老純爺 2013年05月17日 11:06 きたァァァァァァァァァァ~!!!!!!! なんだ夢か!(…ホッ) ponko310 2013年05月17日 18:03 ムム、だめだったか・・・ だからテレコムっていい加減なんですよ。 うちはとっくに解約してます。 YUKARI 2013年12月10日 13:36 オヤシミナハイ(ぶっ) マイケの守護神(ぶふっ) 適当な番号でたまたま自分ちにかかるなんて迷惑この上ない話なのに、ponkoさんは優しいです。 おじさん、もう諦めて真面目に働いてね。 tack 2018年02月26日 12:57 ジョギングやりすぎて足を痛めて凹んでます。何も運動ができないので落ち込んでponkoさんのブログで憂さ晴らしをさせてもらおうとアクセスしたら、こんな面白い記事が! 私もウィーンで一人暮らしをしていた時、知らない男の声でxxxはそこにいるだろうと電話があったことを思い出しました。 私は電話帳に名前を載せていなかったし、番号はごく限られた人にしか教えていなかったので未だに誰だったかわかりません。 ちなみにxxxは現在の夫で、彼にも全く心当たりがないらしい。 ponko310 2018年02月26日 20:21 tackさん 健康のためのジョキングなのに足を痛めたらやらない方がよかったね。 でもそのおかげでこの記事のお部屋に来てくれたのだから、足が治ったら無理してまたジョキングを続けてください。 うっひっひ、次は何処のお部屋に来てくれるかなぁ。 私はもう駆けるのは億劫です。 里帰りした時に津波が来たら逃げ遅れるので、海のないベルリンに留まっていますわ。 私、xxxさんに掛かって来た謎の人物について考えてみました。 ズバリ、xxx氏の不倫相手の旦那さん。 きっとxxx氏はもてるんだなぁ~。 もてないプップクンにはそんなこと絶対に起こらんよ。 あ~ぁ、もてる旦那にドキドキしたい。 tack 2018年03月09日 06:40 不倫相手のダンナというよりも、密かにxxxに心を寄せていたhomoな方だったんじゃないか、と私は睨んでおります。 夫だけではなく、なぜか私の男友達はhomoな方に慕われるんです。みんな正真正銘の異性愛好者なのですがね。 ponkoさま、プップくんを見くびってはいけません。妻が知らないところで持てていますわよ、きっと。 さて話がとんでもないところに行きそうなので、この辺で退散いたします。 ponko310 2018年03月09日 07:42 tackさん キャッ,言うじゃありませんか。 私がレストランで働いていた時、ウェイターはほとんどhomoで、それぞれ美男子ばかりだったわ。 あ、いつかその続きを書かなくちゃ。 私のナイトたちはどうもみんな男性に慕われるような傾向じゃないな。 そういえば、元夫が日本にいた時に、いつも駅で後をつけてくる男がいて、ある時電車の中でそいつに胸を触られて気持ちが悪くなってすぐに降りたって言う話を聞きました。 当時はhomoなんてまだ世間から随分反感を買っていましたから、私も度肝を抜かしたけれど、ベルリンに来てからhomo慣れしましたわ。 実はプップクンも少年時代に大人の男性からよく声を掛けられたらしく、いまだに悪党に追いかけられる悪夢を見るんです。 あら、tackさんがかわした話を私が続けちゃいましたね。 あ~ぁ。女の子に追いかけられる夢にうなされる旦那にドキドキしたい。 tack 2018年03月09日 20:30 まあ、貴重なお話ありがとうございます。 美男子のhomoの方々のお話も楽しみにしておりましてよ。 それでは本当にごめんあそばせ。 💕 お詫び:コメントを入れる時、何度も数字の打ち直しを要求されるのですが、スパム予防の為だと思います。 貴方の失敗ではないのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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