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カテゴリ:ヒトの日常
「これが最後ですよ。」
お腹の上で組んでいた手を握り締めた。 眉間にものすごいしわが入っているのもわかった。 「よく頑張りました。数分後には感覚がなくなってきますから、 しばらく、リラックスしててください。」 後でのえぱぱから聞いたのだが、麻酔の注射が終わった後、 先生はこう言いながら、私の肩をマッサージしてくれたそうだ。 何も覚えていない。 「では、ご主人は受付でお待ちください。」と言われ、のえぱぱが 治療室から出て行き、治療が始まった。 痛みの感覚はないのだが、頭に何かが響いているような感じと 不気味な音だけは避けられず、「何か別のことを考えていよう」と 思った。 「♪カエルの唄が~ 聞こえてくるよ~」 昨日、しばらく会えなくなるからと、友人が買い物に誘ってくれた。 彼女が赤ちゃんをあやす時に歌っていた「カエルの唄」。 約30分間、頭の中で歌い続けた。 ひたすら歌い続けた。 「終わりましたよ。気分は悪くないですか?」 ガーゼをくわえ、診察台の上で脱力していた私は、先生からの 問いかけに、ただ頷くだけ。 のえぱぱを治療室に呼び戻し、先生は処置後の注意事項と今後の 予定についての説明をした後、いつものように受付まで見送って くれた。 のえぱぱが次回&そのまた次回の予約をしている間、私は、 アイスパックを頬に当て、ぼーっと椅子に座っていた。 受付にいた他の患者さん達が、「おっお~、お大事に」と いう笑顔を投げかけてくれ、こちらも情けない笑顔を返した。 そう、ここは専門医。 みんな同じような治療を経験したか、これから経験するのだ。 「痛かった?」 「痛くないけど、怖かったから、頭で『カエルの唄』歌ってた。」 (と言ったつもり・・・) 「何?」 「『カエルの唄』!」 「奥さん、テーマ曲が必要やな・・・」 あと2回・・・確かにテーマ曲が必要かも。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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