雪・月・花

パクチーとは、十年程前に彼女が入社してきてからの付合いである
彼女が面接に来たとき、会社の玄関ですれ違ったのも覚えている

彼女が自分の部の部長さんに気に入られ
ランチや飲み会に頻繁に誘われ
何故だか、私はそのお供のように、ゴチになっていた

女性が一人だとかわいそう　とかいった理由だったと思うが
彼女にそんな気遣いはいらないと、今なら思う・・・

パクチーが会社を辞める少し前に、彼女の部に入社してきたのが

私がオヤジと呼んでいる男である

見た目は、バブルの時にアクドク儲けた不動産屋のようで
雰囲気は、電車で痴漢をしていそうな感じ

その歓迎会に、当然のように私も出席したのだが
そのオヤジが
「なんで、部外者がいらっしゃるの？」と聞いたので
「宴会部員でーーーす」と答えた

確かに他の部の私がまぎれているのはおかしいのだが
その頃は、パクチーとセット物のようにくっついていたので
不思議だとは思わなかった

見た目だけじゃなく、嫌なヤツ

これが、私の彼に対する第一印象だった

パクチーが退社したとき、後のことを頼まれたし
流れで仕事の手伝いをするようになった
次の女子社員が入るまでと思い、随分親切にした

その後、入社してきた女性が
Ｂ５の書類を、半日以上かけて仕上げるというツワモノだったので
オヤジは、当然のようにその後も私に、仕事を頼んできた

密に頼めばいいのに、なんの気遣いもしないので
社内のヒンシュクをかい

当時いた年配の女性に、他の部の仕事をするでしゃばり扱いされ
オヤジと私が男女の関係とまで言われた

その後、オヤジはアクの強いところが嫌われたのか
社長にある事無い事をチクラレ
いろいろあった後、退社することになったのだが

ゴキブリのような生命力で、下請け会社に潜り込み
その後も、会社に顔を出し
携帯の番号を、教えたつもりがないのに
携帯に連絡をしてきて、飲もうと誘ってきた

必ず、「あのグラマーな女性も呼んでね」と言うのだが
グラマーな女性って言うのが、パクチーのことで
彼の美的感覚も、相当おかしいと思った

その後は、ＰＣでわからないことがあったり、
急ぎで書類を作らなければならなかったりすると
携帯に時所をかまわず、連絡してきて
私は、彼のサポートセンター扱いとなっている

人に書類を頼む時も
「パンと数字を打ったら、バンバンと答えが出るようにしてちょうだい」
「ポンと入力したら、パッと全部出ないの」
こんな説明しか出来ない


オヤジの希望に応えるため、エクセルの関数など随分勉強した・・・
勉強になったと思えば、腹も立たない

何ヶ月も連絡がないと思ったら、毎日のように連絡をしてきたり
そんな付合いが、８年位続いている

さすがの私も嫌気がさして、携帯拒否設定をし
会わないように避けていたことがあったが
ばったり、会ってしまったときに

オヤジ　「あなたの、携帯壊れていらっしゃるんじゃないの？」
ポテ　　「携帯拒否設定してあるのよ」
オヤジ　「あら、何で？」

このやりとりで、あきらめた・・・・

このところ年をとったのもあるだろうが、
飲み会の誘いもなく、仕事の依頼もなかったのだが
先月私が風邪で寝込んでいる時に、携帯がなり
急いで作って欲しい書類があるといってきた・・・

「熱があるんですが」と言ったら
「いつごろ、治るのかしら？急ぐんだけど・・・」

治ってすぐに、仕事を仕上げてあげた


そしたら、さすがに悪いと思ったのか

「明日焼肉をおごるわよ」






「あのグラマーな女性も呼んでね」



だそうで、今晩焼肉です！