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東方見雲録

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2024.09.07
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カテゴリ:環境

「一枚田」周辺の草刈を実施


すると


カヤネズミの巣発見

ちょっとおさらい:カヤネズミ  引用サイト:日本自然保護協会  こちら

写真1 カヤネズミは、世界でも珍しい草の上に巣をつくるネズミ。巣の大きさは8~10cm程度。


世界には約1000種のネズミの仲間がいますが、カヤネズミはその中でも珍しい、草の上に巣をつくるネズミです。そのため、体のつくりも草の上での生活に適した形に進化しています。

ネズミの耳というと、ミッキーマウスのような大きな耳を想像しがちですが、カヤネズミの耳は小さく、顔の横に沿うようにつき、鋭い草の葉から保護されています。尾はしなやかで、草の葉や茎に巻きつけて体を支えたり、ぐるんと大きく振って、バランスを取ります。後ろ足の指は、広げてものをつかむことができます。これらの機能を活用して草を登り、前足と歯で葉を裂いて球形の巣を編みます。

カヤネズミが暮らしているのは、草原の中でも、特にオギやススキやヨシなどの「カヤ」と総称される草丈の高いイネ科植物(イネ科高茎草本)がまとまって生えている草原「カヤ原」です。茅葺き屋根の「茅」はこのカヤのことです。カヤ原は河川敷や休耕田に多く、ここがカヤネズミの代表的な生息環境となっています。

巣材には、主にイネ科やカヤツリグサ科の植物が使われます。オギとススキは代表的な営巣植物です。繁殖期は春から秋(雪の少ない地域では初冬まで)で、ピークは秋です。出産の近づいたメスは複数の巣をつくり、その中のひとつに子どもを産みます。ほかの巣は休息場所として使われます。オスも休息用の巣をつくりますが、子育てにはまったくかかわりません。寿命は半年から1年程度です。天敵は多く、アオダイショウやモズ、カラス、コミミズク、トラフズク、イタチ、ネコなどに捕食されます。


温暖で湿潤な日本では森林が発達しやすく、自然条件下で草原ができるのは、河川や湿原、高山や風衝地など、樹木が育ちにくい環境に限られます。それ以外の場所では、草刈りや火入れ、放牧など、人間の働きかけで草原が維持されてきました。人々が生活の資源を得るために生み出された草原が、カヤネズミにも良いすみかを提供してきたのです。

残念なことに、今ではカヤネズミを知らない農家の方も珍しくありませんが、かつてはごく普通に全国の田んぼで見られるネズミでした。60代以上の方は、稲刈りのお手伝いの時にカヤネズミや巣を見たという思い出がある方もいらっしゃるでしょう。千葉県の方言ではカヤネズミを「イナ(稲)ッチュネズミ」と呼んだり、新潟県と福井県にはイネにつくられたカヤネズミの巣を「豊作のしるし」と見なしていた地域もあり、カヤネズミと稲作文化との興味深いつながりが垣間見えます。

ただし、田んぼそのものは人の手が頻繁に入るため、カヤネズミにとっては一時的な生息場所です。参考例として、京都の巨椋干拓地での農作業暦をもとに、カヤネズミが確認された時期をみてみましょう(図1)。6月はイネがまだ小さく、田んぼに水が張られているので、カヤネズミは田んぼに入ることができません。7月にイネの草丈が1mを越え、田んぼの水を抜く「中干し」が行われると、周辺の休耕田や茅場、ため池や水路の土手といった草地から田んぼに入り込みやすくなります。そして10月の稲刈りで田んぼを追われると、再び周辺の草地に移動します。

このため、農耕地においてカヤネズミの生息環境を保全するには、田んぼの周辺に休耕田や茅場など、通年の生息場所となり得るイネ科高茎草地が点在し、それらの草地をつなぐ畦や土手には、カヤネズミが安全な通路として利用できるような、チガヤなどの比較的草丈の高いイネ科草地が残されていることが理想です。なお、カヤネズミはイネに営巣する際に少し米を食べますが、イネを食い荒らしたりはしません。イネに混生するヒエや、イネにつくバッタやイナゴも好んで食べます。


かつて人々が暮らしの資源を得る場所だった草原は住宅や工場に変わり、圃場整備やコンクリート水路の普及によって、生息場所となる草地の消失や分断が進んでいます。
筆者が2003~04年に滋賀県内の河川や湖沼、農耕地、造成地など、さまざまな環境のイネ科草地でカヤネズミの分布と生息環境を調べたところ、湖西地方の山間部では26地点中18地点(69.2%)で巣が見つかったのに対し、市街化が進む湖東地方の平野部では、34地点中7地点(20.6%)のみでした。山間部は耕作放棄地が多く、営巣場所となるオギやススキなどのイネ科高茎草地が比較的保たれやすいのに対し、市街化が進む平野部では、頻繁な草刈りや短い耕作サイクルでイネ科高茎草地が成立しにくいことや、道路や人工水路で生息地が分断・孤立しやすいことが、その原因として考えられました。


カヤネズミの生息場所で草を刈る際は、幾つかに区画を分けてローテーションで草を刈ることで、刈り残し区画がカヤネズミの避難場所になります。田んぼの畦や水路の草を刈る際にも、少し刈り残すことで草地の連続性が保たれて、生息場所の孤立化が防げます。野生動物の生息地を守るというと、難しく考えがちですが、そうしたちょっとした配慮で、彼らの暮らしを守ることが可能です。

関連日記:2024.08.13の日記 一枚田情報  こちら





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Last updated  2024.09.07 17:21:50
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