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August 23, 2007
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テーマ:ニュース(100224)
カテゴリ:メディア関連
再び今日の産経新聞朝刊の「ゆうゆうLife」欄に記事が載りました。

今日は2回連載の2回目、「下」となります。

こちらの記事も産経新聞HPに掲載されていますので
どうぞよろしくお願いいたします。

http://www.sankei.co.jp/yuyulife/sonota/200708/snt070823005.htm


明日も同じ記者さんによる移植医療に関するコラムが掲載されるそうです。
移植を受けた者としても、移植に関する報道は自分に関わる内容が
含まれていることもあり非常に興味があります。
明日も是非読んでみたいと思います。


<以下、上記HPからその記事の内容を転載させていただきます。>


向きあって 脳死移植後に結婚、出産(下)


■就職で踏み出した復帰/不安と隣り合わせでも/生命を引き継いだ喜び

 英国滞在中に原因不明の急性劇症肝炎に倒れ、1996年、脳死肝移植を受けた今川真紀子さん。昨年、長男、駈(かける)くん(1)を出産しました。今年7月からは臓器移植への理解を訴える公共広告機構のコマーシャルに実名で登場しています。(聞き手 佐藤好美)


 ようやく普通の生活ができるようになったのは、手術から半年近くたったころでしょうか。9カ月後に帰国し、月1回、通院しながらの生活ですが、日本で仕事も見つかりました。

 もともと普通にできたことが、一時は何もできなくなり、社会復帰できないんじゃないかと思っていましたから、就職できたのは、すごくうれしかった。通勤電車に乗るのも、朝、会社に行って「おはようございます」と言うだけでうれしい。

 就職したのは、結婚も子供も無理だと思っていたから。薬代くらい、自分で払おうという気持ちもありました。今は月に4万円くらいですが、当時は10万円くらい払っていましたから。

 そもそも、こんなに医療費がかかるのに、企業が採用してくれるのか、社会が受け入れてくれるのか不安でした。結婚だって、月に1回は病院通いだし、何もしなくても月に10万円必要で、体調を崩せば働けないし、稼げない。OKと言ってもらえるなんて思えなかった。年を取るごとに、生きるリスクは増えますし。

 帰国した年、日本で臓器移植法が通りました。当時は移植に否定的な雰囲気も強く、「人が死ぬのを待ってまで生きる必要があるのか」と言われたこともあります。私が誰かと恋愛関係になることがあっても、相手の両親や親族は許してくれないだろうと思っていました。

 夫は就職先の同期。私が移植を受けたことを知って、彼は費用を払えるか、結婚して体調が悪くなってもやっていけるか、子供を持てないかもと悩んだそうです。

 結局、その後、再渡英した時期を挟んで、7~8年つきあって結婚しました。

                  ◆◇◆

 子供はすごく欲しかった。めいがかわいくて、こんな子がいたら幸せだろうなって。主治医からは「副作用を心配しなくてもいいけれど、妊娠は、薬の量を調節しながらにしましょう」と言われていたのですが、調節しないうちに妊娠して。

 それでも、薬の影響がどう出るかは分からない。障害のある子が生まれてくるかもしれないけれど、受け入れて2人で育てていこうと、夫と話しました。

 父は出産に反対しました。「妊娠、出産に耐えられるのか。孫か娘かどっちを取るかといわれたら、娘を取る」って。現実に体調の悪い私を目の当たりにすると、このままいなくなってしまうのではないかと恐れたようです。「私の命と引き換えにしても産む」と、説得しました。

 妊娠中はずっと体調が悪かったです。熱があるし、しょっちゅうゲホゲホとせきが出て寝られないし、薬は減らすはずが、増えちゃうし。通常分娩(ぶんべん)の予定でしたが、3日間陣痛に苦しんで、結局、帝王切開でした。

 子供は今のところ薬の影響もなく、順調に育っています。母乳は当初から「あげられませんよ」と言われていて、初乳もあげられませんでした。

                  ◆◇◆

 私自身は移植するまで病気知らずでしたが、今は風邪をひきやすいし、1年の半分くらいは寝込んでいます。めいっぱい元気でいたいし、そういう時もあるけれど、実際には明日どうなるか分からない。せきが出始め、熱が出て、体調が急に悪くなると、先が見えません。

 移植後に調べたら、ちょっと古いデータだったようですが、肝移植後に10年生存している人は30%に満たなかった。今はもっと伸びていますが、当時の医療とすれば、私はもう30%の方に入っているのかも。「移植から11年も来たから安心」とも、「もう、11年も経ってしまった」と思うこともあります。

 でも、根本的に楽観的なので、自分は絶対に大丈夫と信じているんです。信じると、人って強くなれる。そして、精一杯に頑張るところから次が生まれると思うんです。

 病院で、ドナーは英国人の中年男性で、「肝臓を2つに分けて、マキコと小さな男の子に行ったんだよ」と聞きました。

 あのとき、自分が助かって命を引き継ぎ、駈にまで命を継ぐことができた。その人の命が、1つだけじゃなくて、いくつかの命につながって行くのって、素晴らしいことじゃないかと思います。

 今は夫もドナーカードを持ってくれています。日本では脳死臓器提供は58例。移植を受けても、公にしない人が多いと聞きました。でも、何でもない1人の人間が移植を受けて、結婚して、出産までできたことが、誰かを元気づけたり、勇気づけたりできるなら、それは、私のできる唯一のこと。それで移植医療に理解が深まるなら、どうぞ、この体験を実名で伝えてくださいという気持ちです。


(2007/08/23)


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Last updated  August 23, 2007 10:55:16 PM
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