「グーグル・ドキュメント」を使う
今日は指導している大学院生・I君の修士論文の添削をしていたのですが、これがなかなか面白かった。 I君の修論のテーマは「集合知」なんですが、「集合知」ってのは、要するに「人々の知恵を集めたもの」ですから、百科事典も、図書館も、学会も、国会も、市場も、みな何らかの形で集合知の要素を持っているということになります。この頃では誰もがお世話になっているネット上の検索エンジン「グーグル」なんてのは、現代の集合知の代表的なものですね。 で、今日読んでいたのは、そのグーグルを論じた章だったのですが、それを読んでいたら、グーグルの賢さがよく分かった。 例えば、情報の検索エンジンが非常に便利なものであることは誰にでも理解できるわけですが、実際にこれを開発しようとすると、すごく難しい壁にぶちあたります。つまり、重要なサイトと、下らないサイトの区別をどうつけるか、という問題です。 たとえば、「あるキーワードが沢山出てくるサイトが、そのキーワードでネット検索している人にとって重要なサイトである(に違いない)」と定義して検索エンジンを作ってしまうと、とんでもないことになります。つまり、悪用される可能性が非常に高くなるんですな。 たとえば一昨日・昨日とセンター入試が行われましたから、今日は沢山受験生がその情報を求めて「センター入試」というキーワードでネット検索すると予測されます。こういう状況下で、もし「あるキーワードが沢山出てくるサイトが、そのキーワードでネット検索している人にとって重要なサイトである」のならば、「センター入試」という言葉をやたらに貼り付けたサイトを作っておけば、たとえそれが入試とは無関係のサイトであっても、検索結果の先頭に来ることになってしまう。悪用するのは、簡単です。 で、それじゃあイカンと思った「ヤフー」は、人海戦術でもって優良サイトと悪質サイトの区別をつけ出したわけ。確かにこれをやれば悪質なサイトが検索結果上位に来ることはある程度防げます。が、これをいちいち膨大なキーワードについてやっていたのではものすごい手間と時間がかかってしまう。 そこで「グーグル」は、重要なサイトの定義の仕方を変えて、「リンクを沢山貼られるサイトが、重要なサイトである」という風にしたんですな。これなら、貼られたリンクの数を数えられるソフトさえ作ってしまえば、あとはウェブ上のサイトの善し悪しを自動的に判別できるわけです。それに、実際問題として、確かにリンクを沢山貼られるサイトは、重要サイトであることが多かったので、このやり方でまったく問題がなかった。グーグルがものすごい勢いで先行するヤフーを追撃したのは、重要サイトの新しい定義の仕方を思いついたところにあるんですな。簡単なことですけど、これが決定的だった。 かくして、今やグーグルの収益は1兆2720億円。しかも社員はたった16,000人ですって。トヨタの社員が30万人なのと比べても、桁違いの収益率です。かくして今やグーグルの社屋には無料の社員レストラン、託児所、フィットネスクラブ、マッサージ・ルームが完備され、テーブル・サッカーやらビリヤード、ビーチ・バレーなどを楽しむ娯楽スペースもあちこちにあり、社員はこれらを享受しながら楽しく働いているのだとか・・・。 うちの大学の職場環境とは随分違うなあ・・・。 ま、それは仕方ないとして、I君の論文を読んでいるうちに、今やグーグルは検索エンジンだけでなく、他にも色々サービスを提供していることも分かってきたんです。 で、「ホット・メール」的に使える大容量の「Gメール」というのがある、というのは私も知っていたのですが、この他に「グーグル・ドキュメント」というのがあるの、ご存じでした? これ、要するにウェブ上のワープロでして、ウェブが開ける環境なら、世界中から自分のワープロ原稿を開けるようになるんです。いや、そればかりでなく、他の人にアクセスしてもらって、同時に複数の人間で一つの文章を作ることもできるわけ。たとえば、「1章は僕が書くから、2章はAさん、3章はBさんに頼むね」というふうにして、複数の人間で一気に長い文章を書き上げることもできるわけですよ。これ、すごくないですか? というわけで、私も思わずグーグルの会員になって、「Gメール」と「グーグル・ドキュメント」が使えるようにしてしまいました。やった~! これで、ウェブにつながっているパソコンさえあれば、わざわざ自分のパソコンを持ち運ばなくても、世界中どこででも仕事ができるぞ~! ・・・ま、別にそんなワールド・ワイドな活躍してないですけど・・・(ガク、ガク!) でもね、さすがに修論レベルの指導となると、こちらの知らないことをどんどん知ることができるので、なかなかいいもんですわ。 ということで、今日はなんだか、ちょっと得をしたような気になっているワタクシなのでありました。今日も、いい日だ!