『大統領の陰謀』を見る
今日は一日中、期末テストの採点などをやっていたのですけど(今頃?)、それにも飽きたので、夕食後、NHKの衛星放送でやっていた『大統領の陰謀』を見てしまいました。ロバート・レッドフォード、ダスティン・ホフマンの競演による、ウォーターゲート事件の顛末をめぐるドキュメンタリー・タッチの映画です。 で、見終わった直後の感想は・・・「これ・・・面白いの?・・・かな?」というもの。 アメリカ民主党の選挙本部に盗聴マイクを仕掛けようとした男たちが、工作に失敗し、逮捕されてしまう。最初のうちこそ瑣末な事件のように見えたこの出来事、実はこれが大統領をも含む共和党の陰謀だったことが明らかになって、最終的にはニクソンを在職中に辞任に追い込むことになる・・・言わずと知れた「ウォーターゲート事件」ですな。で、この事件を担当したワシントン・ポスト紙の2人の若手記者、ウッドワードとバーンスティンの活躍を描いたのが映画『大統領の陰謀』というわけなんですが・・・。 ま、最初は確かに面白いんです。事件とその裁判の成り行きから、どうもこの事件の裏にアメリカ政界の大物たちが絡んでいるらしいと睨んだウッドワードとバーンスティンが、執拗な取材により少しずつ事実関係を明らかにしていく一方、どこからか圧力がかかり、彼らの取材する先々で取材拒否や妨害が始まる。その間の駆け引きがなかなかスリリングで、何だか妙なリアリティとサスペンスがあるんですね。 しかし、いよいよ事件の核心に迫り始めたところで、突然、映画が終わっちゃうんだよなぁ・・・。それがあまり突然終わるので、何と言いましょうか、アンチ・クライマックスと言うのか、「え? これで終わるの?!」という感じなんですよね~。確かに、大統領に再選されたニクソンが就任式で宣誓するテレビ映像の向こう側で、いずれ彼を辞任に追い込むことになる二人の記者が黙々と記事を書き続けるラストシーンは、なかなか印象的ではあるんですけどね。 で、例によって映画を見終わってからちょっとウィキったわけですけど、この映画、もともとロバート・レッドフォードの発案で、彼が映画化を考えていた時には、まだニクソンは大統領のまま、果たしてこの事件が彼の命取りになるのかどうかもわからないような状況だったんですって。ですから、この映画の企画と制作は、ほとんど本物のウォーターゲート事件の成り行きと同時進行だった、と。 で、そういうこともあってか、映画に描かれることもほとんど事実そのままで、ドキュメンタリーのような映画が目指されたらしいんですな。実際、映画に登場するウォーターゲート・ホテルも、議会図書館も、すべて本物でロケされたのですと。それどころか、ワシントン・ポスト社の社屋も実物が使われたんですって。ただ、そのままでは映画のフィルムで撮るには暗くなり過ぎるので、特殊な蛍光灯を使い、社内を明るくして撮影されたのだそうですが。 なんか、そんな裏話を読むと、少しこの映画の点数が上がりますけどね。 ちなみに、この映画の封切りは1976年で、アメリカ誕生から200年目の節目の年。映画史的に言いますと、抑圧的なアメリカ社会を批判的に描く映画と、アメリカを無批判に讃える映画がせめぎ合っていた頃ですな。端的に言えば『大統領の陰謀』と『ロッキー』は同じ年に公開された、と。 とはいえ、『大統領の陰謀』も、『ロッキー』も、ある意味同じ傾向の映画なのかも知れません。無敵と思われる大物に対し、絶対不利の弱者が立ち向かうという話なのですから。 ま、そんなことも色々考えながら、結局、この映画は、そこそこ面白かったんだ、という結論に到達しました。まだまだ若かったレッドフォードとホフマンが生き生きと画面一杯に飛び回るのを見られるだけでも楽しいですし、脇を固める俳優陣も渋いですしね。 というわけで、ワタクシの採点は・・・1976年にちなんで「76点」といたしましょう。 テレビ映画の『コロンボ』などに登場する1970年代のアメリカ・ファッションがここにもある、という懐かしさも込めまして、『大統領の陰謀』、教授のおすすめ!です。