Jeffery Deaver 『Empty Chair』を読む
こちらに来てから読み始めたジェフリー・ディーヴァーの『The Empty Chair』というサスペンスを読み終えました。(以後、ネタばれ注意!) 主人公はいつものように肢体不自由の天才探偵、リンカーン・ライム。しかし、この作品の舞台はライムの本拠地ニューヨークではなく、ノース・カロライナの片田舎。実は、ライムの肢体麻痺を少しでも緩和できるかも知れない新たな治療法を試すため、はるばるここへやってきたんですな。 が、彼の到着を待っていたかのように、この平和な片田舎にはふさわしからぬ殺人・誘拐事件が勃発。地元住民から「虫男」の名で気味悪がられている札付きの不良少年ガレット・ハンランが、一人の青年をスコップで殴り殺した上、二人の若い女性を誘拐して逃走したんです。で、地元警察から捜査協力の依頼を受けたディーヴァーは、手術を受けるまでの待ち時間に限って、ガレットの行方を追うことを引き受けるわけ。 とはいえ、勝手知ったるNYとは異なり、ここは南部の片田舎。普段彼が駆使する捜査用器具も満足に揃うはずもなし。しかも南部の閉鎖性から、都会からやってきた肢体不自由のヤンキー捜査官への地元警察の不信感も強く、彼は完全なアウェイのやりにくさの中で、乏しい証拠物件からガレットの居場所を突き止めるという難行に挑む羽目になるわけ。 しかも相手は「虫男」。虫のことなら何でも精通し、虫の生態から学んだあらゆる知恵を使って巧妙に追手を振り切ろうとする。捜査員の一人は、(ガレットが仕掛けたと思しき)罠にひっかかり、スズメバチに何十か所も刺されてショック死する事態に。 とはいえ、ガレットも相手が悪かった。彼が仕掛けた様々な罠を見抜いたライムは、見事彼の居所を突き止め、とりあえず彼が誘拐した若い女性のうちの一人は助けることに成功します。が、ガレットは逮捕された後ももう一人の被害者メアリー・ベスの居所をどうしても明かそうとしない。果たして彼女は、まだ生きているのか? 一方、ガレット逮捕に成功したリンカーン・ライムは、あとは地元警察に任せることにして、既に心は自身の手術の方へ。もちろん、この手術によって肢体不自由の状態がさらに悪化するかも知れないのですが、彼はあえてそれにチャレンジしようとする。それが彼の長年の夢でしたから。 が、ここでまたトンでもない事件が! ライムの恋人にして相棒である女性刑事アメリア・サックスが、逮捕されたガレットの証言を聞いていて彼の無実を確信し、メアリー・ベスの居所を教えるということを条件に、無謀にもガレットの脱獄を助け、自らも一緒に彼のアジトへ向かってしまうんですな。その驚愕すべき事件の知らせを受けたライムは、再び病院から現場に戻り、今度はガレットとアメリアの行方を追うことになる。 ところが、ところが! ライムの予想した通り、ガレットはやっぱり「クロ」だった! 実は彼はアメリアが自分に同情的なのをいいことに一芝居打ち、彼女に脱獄を手伝うよう仕向けていたのでありまーす! かくしてライムは、最愛の女性を「虫男」に人質にとられた状態で、彼の後を追わなくてはならないことに! 果たしてライムは、ガレットが残した物的証拠だけを頼りに彼の行方を突き止め、メアリー・ベスを、そしてアメリアを救えるのかっ! というような話です。面白そうでしょ? もっとも、ここまでの筋書きは、この話の表面にしか過ぎないんだなあ。実はもっと深い陰謀があるのよ。しかもそのサスペンスが最後の最後まで続くんだ、これが・・・。 というわけで、相変わらずジェット・コースター・サスペンスを書かせたら右に出る者がないジェフリー・ディーヴァーの『エンプティ・チェア』、秋の夜長には持ってこいですよ~。教授のおすすめ!です。ただ、ディーヴァーって人は、本のタイトルの付け方だけは下手だねえ・・・。これこれ! ↓EMPTY CHAIR,THE(A) [洋書]