愛書家倶楽部
昨日は都内某所で行われた「愛書家倶楽部」というイベントに参加してきました。 「愛書家倶楽部」とは、読んで字のごとく、本を愛することにかけて人後に落ちない人たちが集まり、本にまつわる様々なイベントをするというクラブなのですが、これがまたなかなか面白かった。 例えばまずイベントの冒頭に本の即売会がある。これは神保町辺りで仕入れてきた適度にレアな古書の即売会でありまして、最初のうちは3冊2,000円、最後の方では3冊1,000円で販売されるのですが、3冊まとめて、というところがミソで、1冊2,000円ででも欲しい本があれば、後の2冊はおまけ、くらいの心構えで欲しい本を物色して行く感じですかね。 そして同時に、もう少し価値のある本の下見会があり、これは後ほどオークションに掛けられる。 で、前座的なイベントとして本の即売会が一段落つきますと、今度は講師の先生による本にまつわる学術的な、それでいて気楽なお話がある。昨日の場合ですと、20世紀初頭から戦前くらいまでにかけての落語・漫才の音源(SP版)のデジタル化にまつわる講話がありまして、これら放っておけば散逸してしまうような音源をデジタル化するプロジェクトが進んでいるが、しかし、音源だけをデジタル化しても、学問の対象にはならないのであって、デジタル化と同時進行で落語の速記本などもきちんと収集していかなければならない、というような趣旨のお話でありました。 で、講師の先生は、日本でも数少ないこの分野のコレクターでいらっしゃって、貴重な資料をいくつも見せていただきましたけれど、なるほど、この種の芸能資料というのは国会図書館にも収蔵されていないそうで、今はまだ個人の収集家のコレクション頼りの状況らしい。なるほどねえ・・・。 そしてこの後、お茶とワインを供しての休憩時間があり、それぞれ雑談を楽しんだ後、今度は「奇書/希書自慢」の時間となる。 これは、倶楽部の会員が、それぞれ最近入手した古書を持ち寄って、それぞれ入手の経緯や、希書の謂われなどを自慢するというもの。これもまた、同じ古書好きでも、集めている古書の方向性がそれぞれ違いますから、他人のコレクションの一端を覗うことができるという意味で、興味津々。 そしてこの後、いよいよ古書のオークションの時間となり、狙っていた逸品を入手すべく、競合した場合は互いに競り合って、一番の高値を付けた人がこれをゲットするという趣向。 そしてこれらすべてのプログラムが終了すると、最後に懇親会があるという感じ。 私はその日のうちに名古屋に戻らなければならなかったので、オークションと懇親会には参加できませんでしたが、3冊2,000円でちょっと面白い本をゲットできましたので、その点でも大満足。充実の午後となったのでした。 この愛書家倶楽部というのは、英国ケンブリッジ大学にあった同種のクラブを模して数年前に結成されたようですが、このクラブを創立して、学部学生や大学院生に呼びかけたところ、結構な数の学生・院生が会員となり、それぞれ神保町に繰り出しては、古書を掘り出してくるような古書マニアに育っているらしい。まさに「古書マニア・虎の穴」ですな。 まあとにかく、みんな好きで集まっている連中で、しかも本が買えたり、本の話が聴けたり、本の自慢が出来たりという盛りだくさんな内容ですから、集まっている人たちも皆喜喜としている。そこがいいんですな。義務で、とか、義理で参加しているわけではないところがいい。これが学会だとね、ちょっとそういうところも出てきてしまうわけですが。で、今回のイベントはこういうものでしたけれど、時には皆で神保町に繰り出すとか、近代文学館などに見学ツアーに出たりもするようで、それもまた面白そう。 というわけで、初めてこの倶楽部の会合に出席し、存分に楽しめたと同時に、私自身の所属大学でも、こういうようなクラブを作って楽しむというのはできないものか、なんてことも考えたりして、そういう意味でも面白い経験だったのであります。 ま、一つ問題があるとすると、名古屋には神保町がない、ということで、そこがね・・・。