文士の家
『作家の家』という本がありまして、それぞれ住居にこだわりのあった文士の家の写真や、それにまつわるエッセイなどで構成されているのですが、私のように建築マニアな文学研究者には興味津々の本。このところ寝しなにこの本をパラパラめくっては楽しんでおります。これこれ! ↓【送料無料】作家の家 [ 平凡社 ]価格:1,728円(税込、送料込) で、ここに掲載されている中で、個人的になかなかいいなと思うのは、澁澤龍彦邸、吉田健一邸、それから立原道造自らが設計したヒアシンス・ハウスあたりですかね。特に立原のは、コンパクトな間取りながらなかなか良く出来ている。ま、彼は作家以前に、もともと建築家ですからね。 それにしても、この時代の文士たちの家の、趣のあること。この本に載っている中でベストセラー作家と言えるのは山口瞳くらいかと思いますが、その他の人たちもみんないい家に住んでおりますな。特に井上靖くらいになると、豪商とか有力政治家の家かと思われるほどのもの。 昔は、本というのは、そんなに売れたのかなあ。今、筆一本で、この本に掲載されているような家を建てるとなったら、よほどのベストセラー作家じゃないと無理なんじゃないかと。いや、そうでもないのかな。 この本で吉田健一氏の家を見たから、というわけでもないのですけど、ついでに吉田暁子さんの書かれた『父 吉田健一』という本も読んじゃった。 大体、父親賛歌の本というのは、作家の娘によって書かれるものでありまして、この本もそんな感じ。例えば鴎外の二人の娘が書いた父親本なんかと比べると、吉田家の父娘関係はよほど淡いもののようですが、それでも娘の眼を通して見た吉田健一像というのが見えて、なかなか興味ぶかい本ではあります。これ読んだら、私も吉田健一さんの『英国の文学』とか、再読したくなっちゃった。これこれ! ↓【送料無料】父吉田健一 [ 吉田暁子 ]価格:1,890円(税込、送料込) ところで、ふと思ったのですが、「父親の話は娘が書く」ように、「息子の話は父親が書く」という傾向もありますね。小泉信三さんの『海軍主計大尉小泉信吉』とか。高階杞一さんの『早く家へ帰りたい』とか。なんか、その辺、あるんでしょうね。