Try, Try Again
自己啓発本の歴史を研究していたら、「William Holmes McGuffey」という名前にぶち当たりまして。この人は、アメリカの初等教科書の編纂者として有名で、1836年から1960年代くらいまで、この人が作った教科書が全米で広く用いられていたらしいんですな。 で、この教科書の内容が、「自己啓発的」であったと。 中でも有名なのが、Lesson 2 に登場する「Try, Try Again」という詩で、Try, Try AgainIf you find your task is hardTry, try again:Time will bring you your reward.Try, Try again:All that other folks can do Why, with patience, should not you?Only keep this rule in viewTry, try again. ってなことが書いてある。これを、アメリカのいたいけな子供たちは嫌になるほど復唱させられていたと。百年以上も。 で、それはそれでいいのですけど、この「Try, try again」っちゅーフレーズを目にした時、私には「ああっ!」と思い当たることがありまして。 あれは今から40年前。私が小学生の頃、我が家にアメリカから大学生のお兄さんが1ヵ月ほど泊っていたことがありまして。ロングビーチからやってきたロン(=ロナルド)という交換留学生で、私の父がしばらく面倒を見ることになったんですな。 で、当時私は小学生ですから、もちろん英語なんてろくに話せないわけですけれども、それでも不思議なことに、意思疎通が普通にできていたという記憶しかない。どうやって互いに話をしていたのか思い出せませんが、私が言うことは向こうに通じたし、ロンの言うことは私には普通に分かった。 まあ、互いへの善意さえあれば、言葉の壁なんてものは存在しないのでしょうかね。 で、ロンは大学ではバレーボールの選手だったので、私へのお土産にバレーボールのボールをくれて、よく二人でトスのキャッチボールみたいなことをしていたんですな。 それで、トスのやり方を私に教えてくれて、私がうまく出来なかったりすると、ロンはよく「釈坊、大事なのは練習だからな。一度練習してダメでも、Try, try again だぞ」と、よく言っていた。私はロンがしばしば私に言った「Try, try again.」というフレーズがすごく頭に残って、ロンのことを思い出すたびに、このフレーズが同時に出てくるほどなんですわ。 で、それから40年経って、自己啓発の研究書を読んでいた時に、再びこのフレーズに出くわした。 あ、なるほど、このフレーズというのは、アメリカで育つ若者には耳タコで、ロンはそれを私に受け売りしたんだなと。 思い出と学問が40年の時を経て、一つにつながった瞬間でございましたよ。 ということで、思わぬところで、思わぬものがつながったわけですが、「Try, try again」、いい言葉じゃないですか。失敗したっていい、トライ、トライ アゲイン! できなかったら、もう一度やり直せばいい、トライ、トライ アゲイン! この精神で、人間、生きて行かないとね! 凡人だって、この精神さえ保っていれば、いつかどこか遠くまで行けるかもしれませんよ!