『ベターッと開脚』本、からのP・T・バーナム『富を築く技術』
最近話題の『ベターッと開脚』本、気にならない? 正確には『どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法』という本。著者はEikoさんという人だそうですが、これ、現在27万部でしょ。1,400円の本だから、印税1冊140円として、いくらよ? 3,780万円か! 仮に税金で半分持ってかれたとしても、2,000万円は儲かったな。 で、我が家でも雑談の中でこの本のことが話題になって、4週間で誰でも180度開脚ができるようになるってんなら、一つ、この本買って試してみるか?! みたいな話に。 だけど調べてみると、アマゾン・レビューなんかだと、結構ボロクソに言われておりますな。開脚練習のノウハウは10ページくらいで、あとは必要もない小説が書いてあるとか。 だけど、如何にボロクソに言われようと、27万部売れて2,000万円儲かったら、文句ないよね! で、私はこの本の著者の Eikoさんという人は天才じゃないかと思うわけ。 だってさ、日本中にベターッと開脚出来る人って、一体何人くらいいると思う? 仮に100人に1人くらいの割合で開脚ができるとしたら、日本中に100万人居るということになる。用心深く200人に1人としたって、50万人はいる計算です。 その50万人の人の中で、「ベターッと開脚出来ることには2,000万円の価値がある、かも知れない」と考えた人って、Eikoさん唯一人なわけじゃん? だとしたら、それは天才のなせるワザだよね。大したもんだ。 「英語が話せるようになる本を書いたら、儲かるんじゃないか」と思う人は星の数ほど居るだろうけど、「ベターッと開脚出来るようになる本を書いたら、儲かるんじゃないか」と思うってのは、すごいセンスだと思うな。 でも、それを言ったら、「ベターッと開脚」と同等の、「そんなこと出来たからってどうってことないけど・・・もし出来たらちょっと嬉しいし、人に自慢できるかも・・・」的なことって、他にもあるのかも知れませんな。それは一体何なのか。 それがパッと思い浮かぶようなら、私もあくせく働いたりしないで済むんですけどね・・・。 あ! 「誰でも、スパーーッと切れるように包丁を研げる本」ってのはどうだ?! それなら、ワシにも書けそうだけど?? やっぱダメか・・・。どんなに体がかたい人でもベターッと開脚できるようになるすごい方法 [ Eiko ]価格:1404円(税込、送料無料) (2016/8/15時点) 閑話休題。 さてさて、P・T・バーナムが書いた『富を築く技術』という本を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。 P・T・バーナムって、誰かご存知? そう19世紀に活躍したアメリカの天才興行師ね。有名な「リングリング・サーカス」の生みの親と言えば通りがいいか。その人が1880年に蓄財のコツを語った本を出しておりまして、その本の翻訳がこれ。 ま、私としては、「野心の時代」とか「金メッキ時代」と呼ばれたアメリカ19世紀末、あの有名な興行師までもが時流に乗ってその種の本を出しとったのか!という興味がありまして、それでこの本を読んでみたんですけど、実際に読んでみると、これがまためちゃくちゃまともな本だったのよ。かなりインチキ臭いこともやっていたバーナムの書くものだから、この本もテキトーぶっこいているのかと思ったら、さにあらず。堅実一本槍の蓄財ノウハウを語った本だったので、逆に驚いたっていうね。 例えば、この本には「金持ちになるためのルール」ってのが20個ほど挙げられているんですけど、それらを見ると、例えば「職業の選択を誤るな」とか「借金をするな」、「けっしてあきらめるな」「何をするにも全力であたれ」「運に頼るな、自ら努力せよ」「希望は持て、ただし夢は見すぎるな」「一度に一つのことだけに集中せよ」「何ごともシステマティックにせよ」「新聞を読め」「うかつに保証人になるな」「常に誠実であれ」・・・みたいな感じですからね。要するに、真面目に一生懸命に、賢くやれば金持ちになれる、ってことで、これはもはや金持ちになるとかどうとか言う前に、真っ当な人生訓ですな、単なる。 ただ一つ、さすがに天才興行師だなと思ったのは、「ルール16 宣伝せよ」という項目があったこと。 バーナム曰く、客に提供するものは、それが商品であれ、サービスであれ、最高のものでなければならない。ただし、最高の商品、最高のサービスであっても、それがそこにあるということが人々に知られなかったら、何の意味もない。だから、「宣伝する」ということは非常に重要であると。 で、宣伝するにも賢いやり方ってのがあって、効果的な宣伝をするにはやっぱり頭を使うことが必要、というような話になっていくのですが、そこでバーナムが「たとえば・・・」と例を出す、その例がすごく面白い。 例えばチラシを作るにしても「このチラシの裏面は見ないで下さい」とデカデカと書く。 そう書かれていたら、大概の人は絶対に裏面をしっかり見るはずだと。だから、チラシの表面に細々と能書きを垂れるよりも、よほど効果的な宣伝になる。 なるほどね。 こんなのはまだ序の口で、バーナムが挙げた次の例はもっと面白いよ。 ある帽子屋の男が、ニューヨークの某オークションに参加して、有名歌手ジェニー・リンドのコンサートの初回分のプレミアチケットを大金で競り落としたと。そのオークションには、ニューヨークのセレブたちも数多く参加していたので、彼等を差し置いてチケットをゲットしたのは一体誰なのか?という話題で持ち切り。それが帽子屋のジョン・ゲニンだと分かると、一体、そのゲニンって男は誰なんだ? そいつが高額なチケットを競り落としたということは、その帽子屋というのは、よほど儲かっているのか? ・・・ってな感じで、もうニューヨーク中がその帽子屋の話題で持ち切りになり、多くの人が彼の店に詰めかけるように。実際、彼の店で扱う帽子は質が良かったので、以後、彼の店は大繁盛した・・・。 バーナム曰く、これが頭を使った効果的な宣伝法だよ、と。 ううむ、さすが天才興行師! おそらくバーナムって男は、この帽子屋同様、こういう所に頭を使ったんでしょうな。 ってなわけで、ちょっと面白い具体的な例を挙げながら、金持ちになるためのルールを20個、解説してくれるこの本、バーナムの面目躍如って感じですかね。 ちなみに、自己啓発本の常として本書には様々な引用がなされるのですが、珍しくエマソンからの引用が無かったですな。その代わり、聖書(特にソロモンの箴言)やシェイクスピア、ディケンズ(の小説の登場人物、例えばミコーバー氏とか)、ベンジャミン・フランクリンなんかが引用されておりました。あと、金持ちのコツは金持ちに聞け、みたいな感じで、アメリカ初の億万長者アスターの逸話とか、そういうのもちらほら。そういうことも含め、この本は「逸話系自己啓発本」に分類すべきものですな。 それにしても、いつも不思議に思うんだけど、アメリカのちょっと古い自己啓発本って、たいてい「余ったお金は銀行に預金して、金利を稼げ、そうすればお金は寝ている間にどんどん増える」的なことが書いてあって、この本にもそういうフレーズがあるんだけど、19世紀末とかのアメリカの預金金利って、そんなに良かったのかなあ? 今、超低金利の日本に住んでいると、預金の金利なんてジョークでしかないけど。その辺、一度調べないとね。富を築く技術 [ フィニアス・テイラー・バーナム ]価格:1296円(税込、送料無料) (2016/8/15時点)