『アンドリュー・カーネギーのビリオネア養成講座』を読む
自己啓発本著者のキング、ナポレオン・ヒルの『アンドリュー・カーネギーのビリオネア養成講座』なる本を読了しましたので、心覚えを。 これ、ヒルの『How to Raise Your Own Salary』(どうやって自分自身の給料を上げるか)という本の抄訳なんですけど、なかなか興味深いところがありまして。 伝説によると、ヒルは1908年に鉄鋼王アンドリュー・カーネギーに新聞記者として取材したことになっていて、この時、カーネギーに気に入られたヒルは、カーネギーから「成功哲学」の編纂を頼まれたことになっている。で、500人のビリオネアを紹介するので、彼らの成功への道のりの取材を通じて、どうすれば彼らのようなお金持ちになれるか、その普遍的な方法論を確立せよという宿題を課せられた。で、その宿題を20年かけて果たしたヒルは、『思考は現実化する』という名著をものし、自己啓発本のキングとなって、自らも大金持ちになりましたと。 で、その伝説のヒルとカーネギーの面会場面を紙上再現したのが、まさにこの本であるわけ。 だからこの本は、基本的にヒルとカーネギーの対話から成り立っております。ヒルが尋ねたことに対し、カーネギーが答えるという形式ね。 で、それによると、ヒルが「どうやったらごく普通の能力を持った人物が、あなたのような大金持ちになれますかね?」という質問に対し、「そうじゃなあ、先ずは明確な目標を持つこと、それから自分の計画に完全に同意し、力を合わせてくれる仲間(=マスターマインド)を見つけることじゃ」みたいな感じであれこれアドバイスしてくれたと。 ま、そんな感じの本。抄訳だから、原著より余程短いですけれども。 ですが・・・。 前にも書いたと思いますが、実はヒルがカーネギーに実際に会ったという証拠は一つもないんですな。 カーネギーのご本尊に直接会ったとか、成功哲学を発見せよという課題を与えられた、というようなことをヒルが言い出したのは、カーネギーの死後のことで、だからカーネギー本人から「そんなことはない」と否定されることはあり得ない。それをいいことに、ヒルは自分とカーネギーとの直接対峙という伝説をでっち上げたらしいわけ。 そう考えると、まあ、この本なんてのは面白さ百倍よ。ここに書いてあるヒルとカーネギーの対話の一つ一つがすべてヒルの自作自演、まさに「自演乙」の世界なんだから。 いくらなんでも、そこまでやるかね、ヒルさん・・・。 というわけで、実在のビリオネアとの会話を自演乙してしまうナポレオン・ヒルなる人物の面白さだけが噴出してしまうこの本、世に数多ある自己啓発本の中でも噴飯モノの奇書と言うべきかもしれません。【中古】 アンドリュー・カーネギーのビリオネア養成講座 /ナポレオンヒル【著】,田中孝顕【訳】,ナポレオン・ヒル財団アジア太平洋本部【編】 【中古】afb