ルイーズ・L・ヘイ著『ライフヒーリング』を読む
ルイーズ・L・ヘイ(Louise L. Hay, 1926-2017)という人の書いた『ライフヒーリング』(You Can Heal Your Life, 1984)という本を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。 この本、1984年に出版されると、アメリカで大ベストセラーになるのですけれども、まあ、久々に読むゴリゴリの「引き寄せ系自己啓発本」でございました。第1章の冒頭からして「人生は、自分について考えていたことが現実になります。私自身を含めて誰もが、良くも悪くも自分の全人生に100%責任を負っています。人生について考えることは、未来を創造することです」、だからね。 つまり、今現在の時点で嫌なこと、思うに任せないことがあるならば、それは自分自身がそういう状況を引き寄せているからだと。 でも心配ご無用、今、この瞬間に自分に対する否定的な考え方をすっぱり捨てて、自分を認め、自分を愛し、これからは自分の思うような人生を生きて行こうとポジティヴに考えれば、その考え通りの人生が展開しますよと。 ま、そういう感じ。 で、本書にはいろいろな自己啓発思想の影響が窺えまして、例えば「ACIM」についての言及もあるし、エメット・フォックスへの言及もある。あと、ニューで、それらの先行する自己啓発思想を、特に優劣をつけることなく、好きなように引用していますから、要するに自分がいいと思ったポジティヴ思想はみんな取り入れちゃおう、という傾向の人なんでしょうな。 だけど・・・。 後半に入ってくると、病気・体の不調についての言及がどっと増えてきて、こういう病気も、心の持ちよう次第で全部治ってしまう、というスタンスを取り始めるんですな。 ちなみにこの人が最初に有名になったのは、『Heal Your Body』という小冊子で、これはそのタイトル通り、精神治療の本だったんですな。で、ここに書かれた内容が、本書『You Can Heal Your Life』にも大幅に採り入れられてると。 で、その結果、たーくさんの病気が並べられ、それぞれについて「(その病気の)考えられる原因・内的要素」と、それを治療するための「新しい思考パターン」を表にしたものがどーんと載っているわけ。 例えば「結膜炎」は、「あなたが目を向けているものに対する怒りや欲求不満」が原因で生じているので、その治療法としては「愛を通して見る。そこには調和があり、私はそれを受け入れる。正しくあらねばならないという気持ちを取り除く」ことをお勧めすると。 なるほどね。 ちなみに「花粉症」はですね、「感情的すぎる」こと、もしくは「被害妄想」が原因らしく、「私はあらゆるものと気持ちが通じている。私はいつでも守られている」と唱えれば快癒するらしいですよ。 あと「ガン」は、「深く傷つけられる。恨みが募る。嫌悪感」などが原因で、対処法としては「心から過去を許して手放」し、「私の人生は喜びに溢れている」ってなことを日々唱えると治るようです。 本書にはノーマン・カズンズが笑いによって難病を治したことへの言及などもありますけど、結局、アレだね。この人の思想の大本は精神治療ですな。ま、タイトルからして「ヒール」なんだから、そりゃそうか。 一つ、ちょっと意外に思ったのは、この人、この種の本の著者にしては性的なことについて割とオープンなところがあって、例えば女性に多い「片頭痛」の対処法として、「そういう時は一人Hしちゃいなさい。片頭痛は、性的抑圧が原因のことがよくあるので」と言っているのにはちょいビックリ。そうなの? とまあ、そんな感じで、ところどころでほんのちょっと驚かされつつも、全体的にはふんふん、そういうことね~と軽い気持ちで読み飛ばしていたんですけれども、最後の最後、ヘイさんが自分の過去を振り返った章を読んで仰天。なんと、語るも涙、聞くも涙ってな感じの悲惨な人生をヘイさんは歩んでいたのでした。 彼女はカリフォルニアで生まれたようですけれども、生後18か月で両親が離婚、その後母親が再婚した相手が最悪の冷血漢で、ヘイさんは幼児期から家庭内暴力に晒され、しかも5歳の時には近所の老人にレイプされるという。で、昔のことですから、周りからは「お前が悪い」的な悪口を言われ、また牢屋に入ることになったその相手の老人がいつまた復讐に来るか、びくびくして暮らしていたそうで。 で、そんなですから、小さい時から自分に自信がなく、自分には価値がないと信じていたので、それゆえに学校でもいじめられたと。 で、その反動からか、興味を持ってくれた男とは誰とでも寝るようになり、16歳の時に出産(生まれた子供は、子供のない夫婦にもらわれていったそうです)。そして、出産後すぐ、継父のあまりの暴力に耐えきれず、妹を残して母と二人でシカゴに逃亡。そこでモデルとして仕事を始めるんですな。で、やがてイギリス人の老紳士と結婚するも、14年後に「他の女と結婚したいから離婚して」と言われ、大ショックのうちに離婚。 で、このショックが一つの契機となり、彼女は精神療法団体の一つであるリリジャス・サイエンスにのめり込むんです。 なるほど、彼女がヒーラーになる素地ってのは、ここにあるわけね。 だけど、いよいよヒーラーとしての活動を始めようという時に、今度は婦人科系のガンが見つかると。彼女曰く、「そりゃ、5歳からレイプされているんだから、そうなりますよね」と。 ですが、ここからがヘイさんの真骨頂で、外科的手術なんかじゃガンは治らんと喝破、精神療法に専念し、自らの力でガンを完治!(マジか!!) レイプされたことへの憎しみや、自分自身を愛せないことからガンになったのだから、その逆を行って、「ルイーズ、あなたが好きよ」ってなことを自分自身に言い聞かせることで、ガンを治してしまったと。 で、その後ヒーラーとしての実績も積み重ね、故郷であるカリフォルニアに凱旋、かつて生き別れとなった妹や、必ずしもいい関係ではなかった母とも再会し、特に目を患っていた母親とは同居もして、少しずつ過去のしがらみを改善していると。それが、この本を書いていた頃のヘイさんの人生だったんです。 まあ、すごいね。いかにもオプラ・ウィンフリーに気に入られそうな経歴ですな。でも、こういう人生があって、それを自己啓発思想で乗り切って有名になったからこそ、自分と同じように人生で苦しんでいる人に福音を届けようと考えたのでしょうな。自分自身という実験材料で既に成功しているから、自分の教えていることに自信があったのでしょう。 でまたこの本がすごく売れちゃったので、その後彼女は「ヘイ・ハウス」という出版社を設立、ディーパック・チョプラを始め、ここから本を出している有名な自己啓発ライターも沢山いるという。ある意味、アメリカン・ドリームを成し遂げております。 ま、そういう人が書いた、こういう本。 で、最後に私としてこの本をどう評価するか、ということなんですけど・・・ うーん。割と好き(爆!)アホみたいな本だとは思うけどね。 っていうかね、私は基本的に、引き寄せ系の本が好きなのよ。自分を肯定し、ポジティヴに願えば、なんでも夢が叶うっていう系の奴が。夢があるじゃん? だから、ヘイさんのおすすめに従って、「限りのない人生/完成され満たされた世界/どの瞬間にも私のうちに流れる力/その力の知恵に身を委ねる/必要なことはすべて啓示され/必要なものはすべて与えられる/私の世界ではすべてがうまくいく」みたいな呪文を密かに唱えちゃったりするの。唱えると、とってもいい気分。ウフ! というわけで、私と同様、そういうのが好きな人にはおすすめ! ということで一つ。ライフヒーリング改訂新訳 [ ルイーズ・L.ヘー ] ところで、ウィキペディアでヘイさんの経歴を見ていて気付いたんですけど、この人、ロスにある「University High School」を中退しているんですよね。 で、その記述を読んでいてふと思ったんですけど・・・ 私、この高校に通ったことがあるかも。 いや、もちろん高校時代に通ったのではないのですが、1998年にUCLAで研究していた時、夜間にこの高校の校舎を使ったロス市のアダルトスクールに通っていたんですよね。うろ覚えだけど、確かそう。 ヘイさんと私は、だから、同窓・・・ってことになるのかな? ・・・そう思ったら、余計、この本が好きになってきたかも!