ビーチボーイズ『ペット・サウンズ』を聴いたり、読んだり
今週、月・火・水と連続出張で、総計600キロを走破したんですけど、この過酷なドライブを、ワタクシがただ淡々とこなしていたと思ったら大間違いだぜっ! 転んでもタダでは起きないワタクシ、この600キロのドライブの最中、ずっと一つのことを集中して行なっていたのであります。 それは何かと申しますと・・・ ビーチボーイズのアルバム『ペット・サウンズ』を聴き込んでいたのでありまーす、ガーン! 若い頃と違って、一枚のアルバムを徹底的に聴き込むというようなことが最近ではなかなかできなくなりましたが、今回は、若干必要に迫られて、ではありますが、『ペット・サウンズ』を600キロ分、聴き込んでみたわけですよ。 ちょっとカッコよくない? 「○○時間、聴き込んだ」じゃなくて、「600キロ、聴き込んだ」だからね。なんか、CMのコピーとかに使って欲しい気がする。無理か。 じゃ何でビーチボーイズか、何で『ペット・サウンズ』なのか、ってことですけど、前にも言いましたように、後期の授業で「アメリカ・ロック史」というのを開講するのね。ロックの歴史を講義すると。 で、60年代のことを語るとなると、どうしてもビーチボーイズのことに触れざるを得ない。で、ビーチボーイズに触れるとなると、世上、彼らの一大傑作と言われている『ペット・サウンズ』に触れざるを得ない。 で、前にこのアルバムを買ってですね、とりあえず聴いてみたのですが、これがね、その良さが全然分からないのよ、ワタクシには。 で、「ん? このアルバムって、ビートルズの『サージャント・ペパーズ』に匹敵する傑作コンセプト・アルバムなんじゃないの?」と、自分の耳を疑ったのですが、やっぱり、何度聴いてもあんまりピンと来ない。 以来、そのままになっていたのですが、後期の授業開始も間近に迫った今、「このままじゃ、このアルバムについてちゃんとした説明ができないよ~」と思い、今回、600キロに亘る長距離ドライブをすることになったのを機に、この際、このアルバムを本格的に聴き込んでみよう、と思ったわけよ。 真面目か! そうだよ、真面目だよ! こう見えて意外にワタクシは真面目なんだよ! で、600キロ分、聴いてみた。 突破口は8曲目の『God Only Knows』でした。これこれ! ↓God Only Knows これは・・・すごいじゃないの。こんな楽曲、他にない。上昇諧調のメロディーが美し過ぎる・・・。 なんで最初に二、三度聴いた時に、この曲に気付かなかったかなあ・・・。 で、この曲を、いわばピボットの支点にして他の曲を聴いて行くと、段々その良さが分かってくるんだなあ。1曲目の『Wouln't It Be Nice』とかタイトル曲の『Pet Sounds』、あるいは最後を飾る『Caroline, No』の良さなんかがね。 で、600キロの苛酷なロードの中で段々良さが分かってきたところで、ジム・フジーリという人の書いたその名も『ペット・サウンズ』という本を読んでみた。村上春樹が訳している奴ね。これこれ! ↓ペット・サウンズ/ジム・フジーリ/村上春樹【3000円以上送料無料】 ま、いかにもアメリカのライターっぽい書き方で、さらに言えば、いかにも村上春樹っぽい翻訳調で、鼻につくっちゃ鼻につくんだけど、短い分量の中で、このアルバムを作っていた当時のブライアン・ウィルソンのことが分かるという。ちょいと情報を仕込むにはうってつけの本。 で、この本読んで、ああ、と思ったのだけど、ワタクシが感銘を受けた『God Only Knows』、実はビートルズのポール・マッカートニーがこれを聴いて大絶賛した、という話があるらしい。これは偉大な曲であると。 まあね、つまり、ワタクシとポールには通じるものがあるってことかな。前からうすうすそう思ってたけどね。 あ、あとね、フジーリはあんまり評価してないみたいだけど、このアルバムの唯一のインストルメンタル曲『Pet Sounds』ですが、これってオリジナルのタイトルが『Run, James, Run』で、ジェームズ・ボンドに捧げた曲らしい、なんてこともこの本を読んで知りました。でまた、それを知ってからこの曲を聴くと、確かに『007』っぽいなと。 あと面白かったのは、ブライアン・ウィルソンの編曲能力ね。 ブライアンの指示通りに各パートを楽器演奏すると、どうも変な具合になる。そこでスタジオ・ミュージシャンの一人が、「ブライアン、あのね、ここんとこ、ちょっと変じゃね?」って尋ねたらしいんですな。そしたらブライアン曰く、「いや、各パート全部合わせると丁度良くなるから、完成形を聴いてから言って」と。 で、実際に全パートを合わせた完成形の楽曲を聞いたら、パートごとの変なところが見事にはまって、素晴らしい音になっていたと。 つまり、ブライアン・ウィルソンの頭の中では、最初からその完成形が鳴っていて、それを各パートに振り分ける能力があった、というわけね。こういうエピソードの一つ一つから、ブライアン・ウィルソンという人がどれだけ才能があったか、つーことがよく分かる。 というわけで、まだ完全に理解したわけではないとは言え、少なくとも『Pet Sounds』というアルバムを少しは語れる程度には成長したワタクシ。 600キロの超疲れる出張も、少しは私自身のために役に立ったのであります。PET SOUNDS【輸入盤】▼/THE BEACH BOYS[CD]【返品種別A】