エマ・ダーシー著『愛を知った悲しみ』を読む
エマ・ダーシーと言う人の書いた『愛を知った悲しみ』(原題:Hidden Mistress, Public Wife, 2011)という本を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。 主人公はアイビー・ソーントンという名の27歳の女性。父親を亡くして2年、画家の母親サーシャは存命だが、アイビーは母親とはどちらかというと疎遠で、むしろバラ農園を経営していた父親っ子。で、父の死後もバラ農園を受け継いで経営している。都会から離れた場所で、農園を営むのがアイビーの性に合っているんですな。 で、アイビーのバラ農園のお得意の一人が、本書のヒーロー、36歳の若き不動産王ジョーダン・パウエル。超のつく資産家にして名うてのプレイボーイは、恋人をとっかえひっかえしており、新しい恋人を得る度にバラを贈り、その娘と別れる度にバラを贈る。だからバラ農園のアイビーは、いいお得意であるとはいえ、ジョーダンの女遍歴に他人事ながら辟易しているところがある。 ところが、ある日、母親サーシャの個展に顔を出したアイビーと、やはり母親ノーニのエスコートでこの画廊を訪れたジョーダンが出会うところから物語が転がり出すと。 この二人、実はこの画廊で2年前に一度会っているのですが、その時、アイビーは農園から直行のジーンズ姿。でも今回は、あまり場違いにならないよう、ドレスアップしてきたアイビーと再会して、ジョーダンはすっかり虜に。 で、早々と家に帰るというアイビーを自分のロールスロイスで送ろうと申し出たジョーダンは、なんと、そのクルマのトランクの上で(ということは公道で!)アイビーといたしてしまうんです。もう、この時点で犯罪だよね! だけど、あまりにもステキな体験にアイビーもうっとり。 で、結局、二人はこの後、ジョーダンの家に行き、そこでさらに一夜を共にする。 翌朝、しかしアイビーは、大富豪と一夜の関係を持ったのは楽しかったけれども、こんな関係が長続きするはずもなし、捨てられるまえに姿を消そうと、ジョーダンがまだ寝ているうちに自宅に戻ってしまいます。 だけどジョーダンの方はすっかりアイビーに御執心で、姿を消したアイビーを探すため、アイビーの母親にバラを贈り続け、その花束に「土曜日にどこどこで待っているから来て欲しい」というアイビー宛てのメッセージを添えるんですな。 で、アイビーは何週間も無視し続けるのですが、ジョーダンもまた花束攻撃をし続ける。で、根負けしたアイビーは、ある土曜日、指定された場所に行ってみると、確かにジョーダンが待っている。 で、会ってしまえばジョーダンの魅力には逆らい難く、結局、ジョーダンの家に連れ去られ、またも愛を交わしてしまう。 だけど、この時、アイビーはジョーダンの家を守る中年の家政婦のマーガレットに会うわけ。 で、このマーガレット、傑物でありまして、ジョーダンに意見が言える唯一の人物。で、ジョーダンがいつも付き合っているような金目当ての女どもには非常にきつく当たる常識人なわけ。そこがまたジョーダンが彼女を信頼する所以でもあるのですが。 で、マーガレットは一度会っただけで、アイビーが誠実で独立した素晴らしい女性であることを見抜く。要するに、アイビーはマーガレットのお眼鏡にかなったんですな。逆にアイビーも、マーガレットに認められたことで、ジョーダンが今回は本気らしいということに気付く。 それに加え、ジョーダンがあまりにも熱心に口説くので、ついにアイビーも彼の誠実を信じるようになり、二人は正式に付き合い始めます。 で、ここがこの作品が通常のハーレクイン・ロマンスと異なるところなんですが、ジョーダンはアイビーに出会ってから、終始一貫していい男なの。アイビーのことを常に大切にし、彼女の嫌がるようなことは決してしない。 で、彼の妹のオリヴィアってのが嫌な奴で、アイビーのことを、いつも兄に金目当てでたかる女の一人かと思って嫌なことを言うんですが、そんな時もジョーダンはその場で妹を叱りつけ、アイビーに謝らせ、相手にしない。 で、結局、二人の関係は順調に深まり、ジョーダンは正式にプロポーズして、婚約発表のパーティーが開催されることになると。 あれ? ちょっと順調すぎるんじゃね? と誰しも思うわけですが、やっぱり最後にちょっとしたハラハラがある。 その婚約披露パーティーに、アイビーの父親を名乗る男が乱入するんですな。 実はこいつディック・ソーントンといい、アイビーの父親ロバートの弟だったんですな。で、この男、若い時にはサーシャとも顔見知り、その上当時の芸術系の若者の常でサーシャ共々相当遊びほうけていた。で、その中で半ばレイプ気味にサーシャと関係を持ち、彼女はアイビーを身ごもることになってしまう。で、責任を感じたロバートはサーシャと結婚することにし、子供は二人の子供として育てることにしたと。まあ、だからディックは、確かに、アイビーの実の親ではあったわけ。 で、そのアイビーが大富豪と結婚することになったので、ディックは急に姿を現し、大富豪を揺すろうとしたわけね。 が、ジョーダンはこんなハプニングにも動ずることなく、ディックの脅迫をすべて録音していて、それを警察に持ち込むぞと脅して彼を難なく追い払ってしまう。 そして、このちょっとしたハプニングにも拘らず、ジョーダンのアイビーへの愛は変ることなく、二人は目出度く結婚することになりましたとさ。 ってな話。 まあ、ハーレクイン・ロマンスのヒーローってのは、最初、嫌な奴として登場して、ヒロインと喧嘩ばっかりして、そのうちに段々いい奴になってきて、最終的にヒロインと結婚するのが常道なんですが、この作品のヒーローであるジョーダンは、最初から最後まで終始いい奴なの。そこがちょっと珍しいところ。 普通、ロマンス読者ってのは、ヒロインに共感しながら作品を読み進めるものなんだけど、この作品に関しては、ヒーローもいい奴だから、最初からヒーローにも共感することが出来、彼を応援することが出来る。その点、読んでて楽かな。特に男性読者である私からすると、私はヒーロー目線で読み進めるからね。そのヒーローが、自分と同じように(?)いい奴だとなると、読んでいて楽よ。 というわけで、私としては楽しく二人の恋の成行きを見守ることが出来て、割と楽しかったのでありました。愛を知った悲しみ 【電子書籍】[ エマ・ダーシー ]