リン・グレアム著『憎しみが情熱に変わるとき』を読む
人気ハーレクイン作家、リン・グレアムの書いた『憎しみが情熱に変わる時』(原題:Flora's Defiance, 2011)を読了しましたので、心覚えを付けておきましょう。 主人公はイギリス人のフローラ・ベネット、26歳、身長178センチの長身で赤毛。大学出で、かつて一流会社に勤めていたが、上司からのセクハラに遭い、同僚と共にこの上司を訴えるも、上司からの圧力で同僚は訴訟を取り下げざるを得ず。さらに上司はフローラが自分と愛人関係にあったと嘘をつき、それをネタに彼を強請っていたのだと逆襲したため、スキャンダルまみれとなったフローラは、当時婚約関係にあったピーターから婚約解消を申し出られてしまう。で、その上さらにピーターが間髪おかず別な女と結婚したこともあって彼女はかなり落ち込み、今は会社も辞めて、一人、小さなホテルの経営をしているところ。 と、まあ、若くしてそこそこの苦労人なのですが、このフローラ、家庭環境もなかなか大変でありまして。 まず父親が極端な浮気性で、秘かに母親以外の女とジュリーという娘までもうけていたという強者。そのせいでフローラの母親は不幸なまま亡くなり、父親はジュリーの母親と再婚するも、さらに別な女性と浮名を流して離婚。ジュリーの母親も不幸なまま死亡。ただ、フローラは異母姉妹のジュリーは可愛がっていたんですな。 ところがこのジュリー、父親のDNAを継いでいたのか、これがまた破天荒な娘で、大学生の時にオランダ人の若者ビルムと恋に落ち、結婚しないまま娘のマレスカを産むも、ビルムとジュリーは薬物中毒で、ラリったままクルマを運転して交通事故死。かろうじて1歳のマレスカだけは命拾いし、今はビルムの異母兄弟であるアンヘロの元で保護されている状態。 で、フローラは妹ジュリーの葬式でオランダへ向かい、かつて妹の結婚式で一度だけ会ったことのあるアンヘロの家に向うと。 で、このアンヘロってのが若き鉄鋼王なんですな。冷徹な敏腕ビジネスマン。フローラはかつて一度だけアンヘロに会ったことがあるのですが、超ハンサムで男性ホルモン漂わせまくり。フローラは初めて会った時から彼に強く惹かれるも、アンヘロの方はあんまり愛想は良くなかったという記憶がある。だから、今回、ジュリーの葬儀に参列するのと同時に、それぞれにとって姪にあたるマレスカの養育権を、アンヘロとの間で争わなければならないのがフローラにとってはかなり重荷になっていると。 で、1年ぶりくらいにアンヘロに再会してみると、やっぱり慇懃無礼な感じ。しかし、それには理由がありまして。 アンヘロもまた不幸な生い立ちをしていて、10歳の時に実の母親が死亡。父が再婚した女は最低の奴で、アンヘロは少年時代から女というものに手を焼いていたんですな。で、異母兄弟のビルムは意志の弱い惰弱な奴で、アンヘロは彼の尻拭いばかりしてきた。で、その揚句、どこの馬の骨か分からない女ジュリーと勝手に付き合って結婚前に娘までもうける始末。その後ジュリーと結婚したはいいものの、今度は二人揃って事故死し、マレスカを遺すという面倒なことをやらかすという。 で、出来の悪い弟がジュリーと結婚するとなった時、アンヘロはジュリーやフローラのことを調査させたんですな。で、フローラのスキャンダルのことを知り、どうせジュリーも金目当てでビルムと結婚したんだろうと推測。さらに今回、マレスカの親権争いでフローラが勝てば、ビルムが受け継ぐはずだった巨額の財産が、フローラのもとに流れ込むということで、フローラのことをやっぱり金目当ての亡者なんだろうと見当をつけていたんですな。 だけど。 ジュリーの遺品を片づけるというので、ビルムとジュリーが家代わりにしていた船(アムステルダムだからね)にフローラがやってくると、案内をする予定だったアンヘロは、フローラの魅力に取りつかれ、その場でフローラのバージンを奪ってしまうという。(ええっ?!) で、ほとんどレイプか、ってな勢いでやらかしちまったせいか、フローラはこれ一発で3つ子を妊娠。(ええ~っ!) で、女性は性欲処理のためにあると思っていて、これまで一度も女性を愛したことのないアンヘロは、それでも仕方なく、フローラの3つ子の責任を取ると言い出すんですな。だから、とりあえず城みたいな家に居て、今後も何不自由なく暮らしてくれと申し出る。 でも、それは愛ゆえの申し出ではない。ゆえにフローラは激怒。ふざけんなと。で、お前の世話なんかにはならねーよ!と啖呵を切ってイギリスに帰ってしまいます。 だけど、やっぱり3つ子の妊娠ってのは大変で、つわりがひどくてホテル経営なんかやってられない。 そこへアンヘロがイギリスまでやってきて、とりあえず、せめて3つ子が生まれるまで面倒見させてくれというので、結局フローラはまたぞろアムステルダムのアンヘロの城に戻ります。 で、アンヘロのまわりをウロウロしているブレジッタ・エッテンという嫌な女から嫌味を言われたりしながら、一方、アンヘロの方ではフローラの元婚約者だったピーターの存在を気にかけながら、喧嘩しては仲直りってのを繰り返す。 で、ようやく二人は互いに対する誤解を解き、また惹かれあっているのは体の相性だけでなく、愛があるゆえだと気付き、アンヘロがプロポーズ! かくして二人は、マレスカを含めて4人の子供に恵まれ、仲良く暮しましたとさ。 ってな話。 相変らず、「まず体で惹かれあい、その後で精神的な愛を抱く」という最近のハーレクイン定番の筋書きですなあ。 しかし、この二人、物理的にちょっとでも近づくと、アンヘロの方は「下腹部がこわばり」、フローラの方は「胸の頂が鋭くとがり、腿の付け根が熱くなる」そうですけど、そんなことってある? もう、ハーレクインのヒロインとヒーロー、ちょっと色情狂すぎない? うーむ・・・。これが世界中のOLさんたちの好ましい妄想、なのかなあ・・・。【中古】 憎しみが情熱に変わるとき(2) 思いがけない秘密 ハーレクイン・ロマンス/リン・グレアム(著者),柿沼摩耶(訳者) 【中古】afb