英語独習の鍵は、動詞じゃなくて名詞だと思うよ~
今、岩波新書の『英語独習法』っていう本が売れているっていうじゃない? 8万部行ったとか?これこれ ↓英語独習法 (岩波新書 新赤版 1860) [ 今井 むつみ ] で、私もどういう本なのかなと思い、そのうち買って読まなければと思っていたんですが、今朝の新聞の読書欄にこの本のことが紹介してあって、それ読んだらこの本の中身が大体、推測できました。 つまりね、この本は「英語のキモは動詞だ」ということを主張しているヤツですね。 よくあるんだよね、この手の本。特に言語学者の書いたものはたいていそう。英語は動詞が重要だ、という奴。 たとえば、日本語には「フラフラ歩く」とか「ヨロヨロ歩く」とか、擬態語が多いのに対し、英語にはこの種の擬態語が少ない。何故ならば、フラフラとヨロヨロの区別を動詞でつけるから。 だから、歩き方を表現する動詞が英語には一杯ある。walk だけではなく、staggerとか、reel とか、lurch とか。で、それぞれの動詞がちょっとずつ微妙に意味が異なり、合せて使う修飾語も変わったりする。 かくのごとく英語というのは動詞によって意味内容を調節する言語だから、そういう動詞をいっぱいいっぱい覚えて、適切な時に適切な動詞を使いなさい。それが英語達人への道である・・・ ・・・っていうタイプの本。 これを別な言葉で言うと、「この世に存在するありとあらゆる英語の動詞を覚え、その使い方をマスターしたら、英語が話せるようになりますよ」ということであって、逆に言えば「それができるまで、あなたは英語が話せるようにはなりません」ということ。 つまり、『英語独習法』と銘打ちながら、実際には「あなたには永遠に英語はマスターできません」ということを言っている本ですね。 これは、「独習法」とか言いながら、英語をマスターしたいと思っている読者を絶望に突き落とす、そういう本なのでありまーす(多分)。大昔からこの手の本はいくらでもある。 古いねえ・・・頭固いねえ・・・。私は思うんですけど、どうしてそういう絶望の書が8万部も売れるんですかね? 意味が分からないな。 一方、最終的には読者を絶望に突き落とす「英語=動詞が重要説」を真向から否定し、英語をマスターしたい人への福音の書となるのが、「英語=名詞が重要説」を掲げるこの本!これこれ! ↓基本12動詞で何でも言える裏ワザ流英語術 [ 尾崎俊介 ] この本は「英語は動詞が重要」などとつまらないことばっか言ってるお偉い(=お堅い)言語学者とは異なり、「英語は名詞中心に学習しろ」と主張している本。 名詞中心ということは、逆に言えば動詞をあまり重視していない。「英語なんて12個の動詞、それもごく簡単な動詞を覚えれば全部言えるよ」っていうことを主張しているんだから、『英語独習法』の真逆のことを言っているわけですよ。だからこそ「裏ワザ」流英語術なのね。 では、学習者の立場からして、『英語独習法』と『裏ワザ流英語術』はどれほど違うのか? ベストセラーの『英語独習法』によると、英語は「stagger」とか「reel」とか「lurch」とか、そういう動詞を全部完璧に覚えないと、「フラフラ歩く」というような簡単な英語すら口にできないと言っているわけでしょ。 だけど『裏ワザ流英語術』で使うたった12個の動詞の中には、「stagger」とか「reel」とか「lurch」なんて含まれてないわけよ、当然。だって、裏ワザ流では「make, have, get, give, put, take, keep, let, do, go, come, be」しか、基本、使わないんだもん。これだけの動詞で、自分の言いたいことは全部英語で言えるよって言っているのであって。 じゃあ、裏ワザ流英語術で、「フラフラ歩く」ってどう言うの? 簡単よ! 歩くっていったら、その名詞形は何? 「歩行」でしょ。じゃあ、「歩行」という日本語の名詞を英語の名詞に直すとしたら? そう「walk」でしょ。 で、裏ワザ流では「主語+12動詞+形容詞+名詞+場所の特定」という順序で単語を並べるという鉄則があるのね。で、この鉄則の中の「名詞」の位置に「walk」という英語の名詞をぶち込むわけよ。 となると「彼は道を歩いていた」だったら、 He had (or took) a walk along the street. となります。主語(He)+12動詞(have/take)+形容詞+名詞(walk)+場所の特定(along the street). の順になっているでしょ? だけど、この場合、「フラフラ歩いていた」と言わなければならないので、このフラフラをどうするか、ということになる。 だけど、ほれ、先の鉄則には動詞と名詞の間に「形容詞」という項目があるでしょ? ここで対処すればいいの。「フラフラ歩く」というのは、要するに「不安定な歩行をしていた」ということだから、「不安定な(unsteady)」という形容詞を補って、 He had an unsteady walk along the street. と言えばいい。これが「裏ワザ流英語術」で言う「彼は道をフラフラ歩いていた」です。 あるいはね、「日本人なら walk という動詞くらいは知っているよ」と言うのであれば、そこは譲歩して、 He walked along the street with an unsteady gait. なんて言ってもいい。ここで決め手となる「gait」というのはやはり名詞で、「足取り」という意味。つまり「不確かな足取りで」という名詞句を使って「フラフラ歩く」という意味を生み出しているのね。やはり重要なのは動詞ではなく、「gait」という名詞です。 ほら、「walk」の他に「stagger」とか「reel」とか「lurch」、あるいは「stumble」とか「totter」とか「teeter」とか、「waver」とか「roll」とか「wander」とか、そういう動詞をぜーーんぶ覚えて、場面場面で使い分けなきゃダメ、と言っている『英語独習法』と、英語は名詞が中心、だから動詞なんて12個(+アルファ)覚えれば大体言えるよ、と言っている『裏ワザ流英語術』と、日本人の読者が買うべき本はどちらなのか? 私が『英語独習法』なんて古臭い、昔ながらの、頭の固い英語教則本であって、本当に画期的な英語教則本は『裏ワザ流英語術』だけだ、という意味が分かるでしょ? だからね、悪いことは言わない、ベストセラーだからという理由で『英語独習法』なんて買ってないで、『裏ワザ流英語術』という本をお買い求め下さい。そうすれば、ああ、英語っていうのは、名詞中心でやればこんなに簡単なんだ、ということが目からウロコ状態で分かるようになりますよ。これこれ! ↓基本12動詞で何でも言える裏ワザ流英語術 [ 尾崎俊介 ]