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カテゴリ:教授の雑感
いやあ、体調が悪い中、若い人の論文の査読をしているのだけど、まあ、ひどいね。
文学の論文って、基本、論じている作品は面白いよね、という共通認識がまずあって、それに加えて、でもこういう読み方をするともともと面白い作品がもっと面白くなるよ、という点を指摘するのが役割なのよ。少なくとも私はそう思っているんですが。 だから、ある意味、論文というのは、補助線のようなもので、その補助線を引いてみると、あーらビックリ、そういうことだったのか~!という感動的な解釈が生まれると。 たとえば、「1から10までの数字、全部足したら幾つになる?」という問いがあって、もちろん、1+2+3+・・・とやって行ってもいいのだけど、一方、1から10まで小さい順に並べた列と、逆に10から1まで大きい順に並べた列を上下にセットすると、各項の上下の数字の和は全部11になるわけで、11が10個並ぶ。ならば11×10÷2=55というやり方で、1から10までの数字の和が55であることを一瞬ではじき出すやり方もある。 このアクロバティックな計算法を示すことで、1から10までの数字を全部足すということが劇的に面白くなるでしょ。文学の論文もそれと同じことなわけよ。劇的に面白い読み方を提示するわけだから。 ところが。 最近の若い人たちの文学論文って、そういうことが全然わかってない。 むしろ、そう読むことで、当該の作品が劇的につまらなくなるような、妙な読み方を提示してくるのよ。え? それじゃ、もともとの小説の魅力が全部失われるじゃん?というような読み方をしてくる。 それが、一つだけならまだしも、査読を担当したすべての論文がそうだから。 っていうか、そもそもこの小説が面白いということが、論者には分かっているのだろうか?とすら思えてくるからね。 こんなつまらない論文しか出てこないんだったら、もう、文学部は解散して可だわ。確かに、必要ないもん。 一体全体、文学研究の世界ってどうなっちゃったんだろうね。昔はもっと面白い世界だったけど。それが進歩せずに、恐ろしいほどの退歩をしているという。 体調も悪いけど、こんな論文ばっかり読まされて、気分も悪いわ~。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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