045181 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

Dobrze Widzi Sie Tylko Sercem

Dobrze Widzi Sie Tylko Sercem

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X
December 4, 2004
XML
カテゴリ:カテゴリ未分類
最近は卒論のインスピレーションのためにいろいろ本を読んでいます。先日読んだのは、「アイデンティティ/他者性」(細見和之著)。これは思考のフロンティアシリーズの一冊。「思考のフロンティア」は私の好きなシリーズで、全部で16冊ある。思想を扱ったものなので、難解なものもあるんだけど、その理論が魅力的。まあお気に入りとはいってもせいぜい5、6冊読んだ程度なんだけど、…中でもこの「アイデンティティ/他者性」は読みやすく、とても感動してしまいました。

その中に「投壜通信」が比喩として例えられている一節がありました。投壜通信っていうのは、ビンの中に手紙を入れて、コルクでふたをして海に投げるっていうあのやり方。私はこれについてすごくロマンチックなイメージしかなかった。でもルーツは実は違う…ということを知って、結構衝撃的でした(知らないの私だけだったりして?)。

「投壜通信というのは手紙を壜に詰めてコルク栓をして波に投じるあの方法にならないが、それは元来、難破船の水夫たちが行ったとされる、伝説的な振舞いである。船とともに自分が海の藻屑と消えるのが明らかなとき、彼らに残されたのは、かろうじて投壜通信に家族や知人のメッセージを託すことのみだったのだ。それがどこかの岸に無事に漂着し、誰かに拾いあげられ、その宛名に届けられる――そんな可能性はもちろん無に等しい。しかし、難破船の水夫にほかにいったい何ができるだろう。」(『アイデンティティ/他者性』61ページ)

この本の中でアウシュビッツを生き延びたパウル・ツェランという人についての記述があります。この投壜通信はその文脈で出てくるのですが、ツェランは自分の書く詩を投壜通信になぞらえています。

「詩は言葉が現われるひとつの姿なのですから、また、したがってその本質からして対話的なものなのですから、詩はひとつの投壜通信であるのかもしれません。どこかに、どこかの岸に、ひょっとすれば心の岸に打ち寄せられるかもしれないという信念――必ずしもいつも確かな希望を持ってではありませんが――のもとに、波に委ねられる投壜通信です」(同上、60ページ)

自分の重たい過去、どうしようもなく悲惨な経験を伝えるために、最後に残されたのが言葉という手段。けれども、自分がつむぐ言葉は、自分が本当に伝えたいことは、誰にも届かないかもしれない。表面的な言葉は見えても、自分の本当の意図は伝わらないかもしれない。でも誰かの心にもしかしたら伝わるかもしれない、という希望を秘めて――それこそ無に近い希望かもしれないけれど――それを詩に託す。その切なさが淡々と伝わってくるようでした。

投壜通信になぞらえることができるのは、詩に限らないかもしれない。ネット上のHPやブログで綴られる言葉、本、音楽……。
私は特に今卒論を書いているからこのことについて強く意識せざるを得ない。たかが卒論、単位取得、卒業するために卒論を書いている面もある。でもそれ以上に何かを伝えたくて、自分がずっと考えていたことを伝えたくて、その気持ちが原動力となってキーボードをたたいている気もする。それが誰に伝わるかも伝わらないかもわからないけれど。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  December 5, 2004 01:45:34 AM
コメント(2) | コメントを書く


PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

KUMAKKO7648

KUMAKKO7648

Favorite Blog

関本洋司のblog 関本洋司さん
つむじやのlightful … yobinoyoさん
弾き語り(アコース… まる213さん

Comments

KUMAKKO7648@ Re:かなり久しぶりのコメント。(08/06) spring breezeさん コメントありがとうご…
spring breeze@ かなり久しぶりのコメント。 お久しぶりです。 お仕事お疲れ様です☆ …
KUMAKKO7648@ Re[1]:もうひとつの世界(04/10) かなさん ありがと、大丈夫だよー☆ 先週…
かな@ Re:もうひとつの世界(04/10) 社会人生活、忙しいのかな。 無理してな…
KUMAKKO7648@ Re:私も(03/03) かなさん >でも、私もKUMAKKOちゃんの運…

Freepage List


© Rakuten Group, Inc.
X