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カテゴリ:我が心はウィスキーにあり
日本産ウイスキーの最大手は、いわずとしれたサントリー。ニッカとキリンが一部をシェアし、メルシャンや本坊酒造が隅を齧っている。そんな戦場で一旗あげようと秩父に蒸留所を造った肥土伊知郎(あくといちろう)さんは、モルト小僧たちにとっては真田信繁や前田利益に肩を並べるほどのヒーローだ。
潰れた羽生蒸留所の原酒を買いもどし、新たに様々な樽に詰め替えて、イチローズモルトの名前で僕らを楽しませてくれている。弱小であることにはかわりはないが、もはやモルト小僧界で彼の名を知らぬ者はいない。 先月、ついに3年熟成のシングルモルト「秩父 The First」が売り出された。初年に仕込まれた原酒の何%が放出されたのかわからないが、限定7400本だ。 数10種類のバーボン樽に入れた原酒をバッティングさせた加水なしの61度。舌舐めずりしながら注文した。 トクトクトクトク・・・。 色は3年とは思えないほど濃いコハク。こんなに濃いということは、使い古されて個性が消されたリフィルの樽ではなく、つい最近までバーボンを入れてたファーストフィルやさらにリチャー(もう一度樽内面を焼いて焦がすこと)したものをメインに使っているのだろう。 重みがあって甘みもあって、山椒の辛さ。バーボンそのものではないんだが、バーボンっぽ過ぎる。3年ものとしては旨いけれど、3年ものとしては旨いということでいいのだろうか。食道から違和感がバックドラフト。 なんてったって記念のファーストリリースだぜ。旨いまずいは別として、リフィルホグズヘッドとかリフィリフィバーボンとか、元の酒のニュアンスを強く感じさせない樽で仕込んだシンプルでピュアなウィスキーを発表して欲しかった。 これじゃあ、小学生のくせにギャルメイク。濃いお化粧は次のバリエーションでいいんじゃね? そんなふうに感じているのは、僕だけではないと思う、たぶん、きっと。 もしかしたら、今回の意外性は戦略のうちなのかもしれない。セカンドリリースやサードリリースでさらに驚きを演出するための布石。 あるいは、ロマンより評判、夢より売れ行き、同情するなら金をくれ、蒸留開始後3年というのは経営的に厳しい時期なのかもしれない。 まあ、何にしたってイチローズモルトの新作が出たら一杯飲まずにはいられないんだな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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