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日本時間の金曜日夜7時に配信していただいたメルマガ「出たきり邦人」の連載第13回です。
------------------------------------------------------ 【出たっきり邦人 北米・オセアニア編】282アメリカ 〓アメリカ・ミシガン発〓第13回★フードバンクと貧困と (続き) センターを後にしながら、それにしても・・・と思う。 日本にも貧困問題はあるし、そのサポート組織もある。しかしこの国の場合、この組織が全国ネットワークで非常にポピュラーなプログラムとして存在する。逆に言えば、余剰食料分配プログラムがこれだけ大がかりで組織化され、盛大に運営されなければならないほど、この国の貧困問題は深刻で規模が大きいということである。 最近フードバンクの本部が作成したCMがある。シーンは、ファーストフード店が集まったショッピングモールを歩いている女性の姿で始まる。その女性は一軒のファーストフード店に入り、紙ナプキンやバターなどが置いてある棚にまっすぐ歩いていき、そこに積み上げてある小さなケチャップの袋をいくつか取って店を出て行く。次の店でも次の店でも彼女は同じことをしてケチャップの袋を集めていく。最後のシーンは家のキッチンでその袋入りケチャップをあけて、子どもに食べさせるスープを作ろうとしている彼女の姿で終わっていく。 このCMを見たKさんの友人が電話してきて、いったいあれはどういうことだ、本当の話か、と聞いたそうだ。Kさんが実話だと答えると驚かれたそうだが、「もっと大変な話だってたくさんある」とKさんは付け加えた。社会の理解レベルは実態からはまだまだ遠い。 12.1%の貧困層に属する人というのは、実数にして約3452万人になる(U.S.Census局・2001年―2003年集計の平均)。Poverty lineと言われる貧困層の基準は国によっても違うし、家族構成によっても違うが、アメリカの場合、2002年基準で、大人2人子ども2人の4人家族で世帯年収が1万7960ドル(197万円程度)、母と子ども2人の3人家族で世帯年収1万4269ドル(157万円程度)となる。日本のたった2倍の人口しかいないアメリカで、日本人口の約4分の一強もの人が、そういう貧困に属するというのだ。同じ調査が、アメリカ全土の子どもの16%が貧困の中にあるという数値も出している。 人種別に見ると、貧困層のうち黒人世帯が23.6%、ヒスパニック系世帯が21.9%、ネイティブ・アメリカン(アラスカ原住民を含む)世帯が20.0%、ハワイ等太平洋島々の出身世帯が10.8%、アジア系世帯が10.7%、白人世帯が10.2%という構成になっている。目に見えない、人種に基づく社会の壁がまだまだ存在し、社会保障が穴だらけで、公共の医療保険が整備されていないこの国。フードバンクのような組織が、一生懸命活動せざるを得ないという社会だと言うこともできるのではないか。 来月、11月のこの連載を配信する頃には、アメリカの次期大統領が決まっているはずだ。選挙は接戦の様相を呈し、誰がこれから先の4年間をホワイトハウスで過ごすのか予想もつかない状況だが、アメリカの国外問題はもちろんのこと、国内の問題も、せめて改善の方向へ向かっていくことができるような政権ができてくれれば良いがと、選挙報道とイラク戦争で埋め尽くされる報道を見ながら思っている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
October 9, 2004 06:59:19 AM
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