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カテゴリ:ブック・レビュー
4万ワード強の和訳を終えて、少し時間ができたので、
前から読みたかったボブ・グリーン(Bob Greene)のコラム集を一挙に数冊読んでみた。 ボブ・グリーンは、米国の新聞や雑誌にコラムを書いているコラムニストである。 遥か昔、ボブ・グリーンの「野球と現実」その他を読んだことがあった。 「野球と現実」は、「人生では夢が叶わないこともある」と、 まだ9歳の少年が、少年野球で人生の挫折を味わう話だった。 ちょっとほろ苦い実話だった。 いろいろなコラムニストのコラムを集めた 「コラムニスト万歳!」(文藝春秋)も読んでみた。 米国のコラムを読みたい方は、この作品でお好みのコラムニストを探すと良いだろう。 巻末の説明で、スポーツや政治など、様々な分野のコラムニストが紹介されている。 私はやはり、人生の機微を描いたボブ・グリーン系コラムが好みだった。 英語版を読みたい方は、 「アメリカン・ビート」や「チーズバーガーズ」といったボブ・グリーン作品が 講談社インターナショナルから出版されている。 巻末に英語表現が説明されているので、英語を勉強したい人にもお勧め。 (日本で英語のペーパーバック本などを入手するには時間がかかるうえ、高いことが多い。) ボブ・グリーンの日本語版には、 「重層コンドミニアム」などという言葉が出てくるので、 英語版の方が良いかもしれない。 原文と照らし合わせていないが、 おそらくこれは分譲マンションか分譲アパートのことである。 (分譲=賃貸ではない。) 日本語版を読んでいると、職業柄、同業翻訳者のアラが目立って嫌なので、 私は英語版が好きである。 たとえば、一般的な「アラ」の例を挙げると、 何かが原因で批判されている人に、「It’s not personal.」と言って慰めている場合、 「君個人に対する批判ではない」というニュアンスで訳すべきだろう。 細かな状況によって違うだろうが、 「君のせいじゃないよ」や「君に対する批判じゃないよ」か、あるいは 敢えて「個人」という意味を強調するのなら、ちょっと不自然だが、 「君個人のせいじゃないよ」や「君個人に対する批判じゃないよ」という風に。 この場合、直訳の「個人的なことじゃないよ」では、 日本語では別のニュアンスが出て、何を言いたいのかよくわからない。 「一般的な個人では」という意味になりかねない。 なぜか「君」という言葉が要るのだ。 ちなみに20年以上前、同業翻訳者の誤訳をあげつらった本を出版して、 大儲けした上智外英出身の翻訳者がいたが、私にこのような趣味はない。 ごく一部の例外を除き、 ほとんどの出版翻訳者の英語読解力は、かなり低いので (← 一生懸命辞書を引いて字面で解釈している。努力は買うけど・・・)、 上智外英出身の翻訳者や通訳者が、本腰をいれてやれば、 このような誤訳摘発本は、何冊でも簡単に出版できる。 でも、そんなこと、普通は誰もやらない。 私は原作や翻訳作品を楽しみたい。 上田敏の翻訳詩集(海潮音)のように、 美しい日本語で、日本語のリズムに乗った日本語で、 翻訳を芸術にまで高めた作品は最高。 これについてはまたいつか。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.04.13 00:23:47
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