「Iの悲劇」米澤穂信を読んだ
米澤穂信の地方再生連作ミステリーを読んだ。
○ストーリー
町や村が合併して生まれた田舎の自治体・南はかま市、そのまたはずれの簑石地区は、過疎化と高齢化が進み、残った住人たちも立ち退き、無人となってしまった。市長の肝いりで、ここに移住者たちをIターンで呼び、地域を再生しようというプロジェクトが始まった。市役所に《甦り課》が新設され、課長の西野、課員の万願寺、新人の観山(ミヤマ)の3人が赴任する。市のホームページへの応募、書類審査、面談を終え、12組の人々が簑石地区に移住をしてきた。だが・・・
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この作者は、学生たちを主人公にしたシリーズは除いて、真面目な作風が目立つ。そんな作家なのでどんな《悲劇》かと身構えていたら、ライトな連作ミステリーだった。
主人公は真面目な市役所職員の万願寺だ。《甦り課》に来たことで出世からは出遅れてしまったようだが、それでも腐らずに仕事は着々とこなす。
課長の西野は定時には、あるいは定時より前に帰ってしまう。同僚のミヤマは学生気分が抜けきれておらず、移住者にフレンドリー過ぎる。いきおい万願寺が様々なトラブルを解決しなければならないのだった。
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個性的な移住者たちは、どうしても軋轢を起こし、小さな事故や事件が起き始める。その結果、1組また1組と彼らは脱落してしまう。
簑石地区の未来はどうなるのか?
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ミステリーの短編集として楽しめるが、それ以外にも連作を通したカラクリがあり、さらには地方自治体の問題を問いかけるという部分もあり、何重にも楽しめる作品となっている。
冒頭にも書いたけれど、あまり米澤作品ぽくない。どちらかというと中山七里の雰囲気がある。あっちはもっと血生臭くなりそうだけどね。「ワルツを踊ろう」があるけど。