狂犬病
日本では既に撲滅した狂犬病 厚生労働省は17日、フィリピンで犬にかまれ、帰国後に狂犬病を発症した京都市の60代の男性が同日未明、入院先の京都市内の病院で死亡したと発表した。 国内での狂犬病による死亡は1970年、ネパールで犬にかまれ、帰国後に発症した男性が死亡して以来。 狂犬病は通常、人から人には感染しないが、京都市保健福祉局は「念のため」として、男性が接触した可能性のある人について感染の有無を調べる。 男性は8月末、フィリピンで野良犬にかまれ感染したとみられている。11月1日に帰国後水を怖がるなど狂犬病に特徴的な症状が現れて13日に入院、意識不明の重体となっていた。約4,000年前から人類に知られていましたが、高度な医療が確立した現在も、世界では毎年約50,000の人と十数万の動物が発病死していると推定されている。インドでは毎年30,000人の死亡が報告されています。狂犬病ウイルスの感染源動物は、先進国では主に野生動物で、北米では特にアライグマ、スカンク、キツネ、食虫コウモリ、ヨーロッパではアカギツネが中心になっています。一方、発展途上国では、主に犬や吸血コウモリ(中南米)で、人での発生の90%以上がこれらの国々で起こっている模様。日本では1920年代に年間約3,500件の発生がありましたが、1922年に家畜伝染病予防法が制定され 犬にワクチン接種が義務付けられてから約10年で年間数件の発生までに激減させています。その後、太平洋戦争で予防対策が疎かになったとたんに約1,000件の発生が見られています。しかし、1950年に狂犬病予防法が施行され、犬に年2回のワクチン接種が義務付けられたところ、1956年の6頭の犬の発生を最後に、1970年にネパールで犬に噛まれた青年が帰国後発病死した1件を除き、今日まで、狂犬病の発生を許していません。このことは世界で稀な快挙と言える。しかし、日本を取り巻く国々では、未だに本病が多数発生していること、中でも年々交流が盛んになっているロシアや東南アジアなどでは多数の発生が報告されており、何時侵入されてもおかしくない状況にあると言えます。なお、この図から動物(ほとんどが犬)と人の発生数が平行しており、犬での予防の大切さがこれでもうかがうことが出来る。 狂犬病ウイルスは、主に発病動物に噛まれ、唾液中に排出されるウイルスが傷口より体内に侵入することにより伝播される。体内に侵入したウイルスは、末梢神経を介して中枢神経組織に達し、そこで大量に増えてさらに各神経組織へ伝わり、唾液腺で増殖する。発病した人や動物は咽喉頭の麻痺により唾液を飲み込むことが出来ず、結果としてウイルスは唾液と共に体外に排泄されることになる。潜伏期間は、長く一定せず平均で1~2ヶ月を要しますが、時には 7年間の例も人で報告されている。発病すると、物事に極めて過敏になり、狂躁状態となって、動物では目の前にあるもの全てに噛みつくことになります(狂躁型)。その後、全身麻痺が起こり、最後は昏睡状態になって死亡します。発病後終始麻痺状態の動物も15~20%認められる(麻痺型)。写真は、タイで撮影した狂躁状態の発病犬。他の動物や人も基本的には犬とほぼ同じ経過で発病死します。豚や馬では狂躁型が、牛では麻痺型が多く認められる。人は、水を飲む時に、その刺激で咽喉頭や全身の痙縮が起こり苦痛で水が飲めないことから「恐水症」とも呼ばれている模様。 狂犬病に発病した犬日本の発生状況の推移から、本病の予防にワクチン接種が極めて効果的であることが明らか。予防には2つの方法が行われている。 1つは、他の感染症で一般的に行われている感染前(暴露前)接種です。人での感染のほとんどは犬が感染源となっているので、人における本病の予防には、猫にワクチンを接種しなくても、犬にワクチンを接種することで十分に予防効果があると言える。また、人では流行地への旅行者、研究者、獣医師などに接種することが勧められています。他は 感染動物に噛まれた後(暴露後)での接種です。本病は潜伏期間が長いので、咬傷後、傷口を丁寧に洗浄し、ワクチンを接種することで発病を十分防ぐことが出来ます。その際、0, 3, 7, 14, 30日の5回接種が行われており、場合によっては90日目に6回接種をすることになっているとか。初回接種時に人狂犬病免疫グロブリン20IU/kgの併用をWHOは勧めているが、現在国内では入手出来ない。なお、海外では、係留されていない犬、猫、リスなど飼い主の分からない動物には、気軽に近づかない事。 発病した人や動物の治療方法は無く。特に動物の場合は、殺処分をし、迅速に診断する事。 昔からの真の脅威の病原菌と言えるのでは無いでしょうか?