エレクトリック・ギターの「生鳴り」とは 3
正解がないのがロックの世界です。ギターアンプのボリュームを上げすぎて音が歪んでしまった。オーディオ的にはダメですね。でもそれが「カッコいい」と感じたから、ロック・ギターにディストーションが加わった、と。ジャズ用に開発されたレス・ポール・ギターですが、エリック・クラプトンによってマーシャルにプラグインされたときから、ロック・ギターとしてよみがえりました。ジミ・ヘンドリックスが登場する直前、ストラトキャスターは売り上げが落ちて製造中止を検討されていた機種でした。当時のフェンダーにおける主流のトレモロは、ジャズマスターやジャガーのように緩やかにアーミングできるものでした。ジミによる大胆なアームダウン以降、トレモロ・ユニットは右手でビブラートをかけるための装置ではなく、音程を大きく変えるマシンへと変身します。楽器に設計意図はあっても、その通りに使われる時期はごくわずかで、その後はミュージシャンによる自由な解釈が加わり、あるものは生き残り、残りは休火山のように姿を消しますが、またレス・ポールのようにいつ生き返るか分かりません。あるギターについて「鳴らなさが良い」とミュージシャンが言ったという雑誌記事を見て、ロック楽器に正解はないなぁと感じた次第です。