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November 11, 2007
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カテゴリ:ヒーロー映画
米ソの宇宙ロケットが、次々と行方不明になるという怪事件が発生した。米ソは、お互いの陰謀だと疑い、一触即発の緊張が高まった。英国情報部は謎のロケットが日本から発射されていることを突き止め、007を日本へ派遣した。ボンドは、日本の諜報機関のタイガー田中と協力し、ついに火山下にスペクターのロケット基地を発見、潜入する。

「007は二度死ぬ(1967)」

監督:ルイス・ギルバート
出演:ジェームズ・ボンド: ショーン・コネリー
タイガー田中: 丹波哲郎
アキ: 若林映子
キッシー鈴木: 浜美枝
ブロフェルド: ドナルド・プレザンス

荒唐無稽の最高傑
 「007は二度死ぬ」の楽しさはシリーズ最高峰ともいえます。その楽しさは、荒唐無稽の極みだからです。

“二度死ぬ”とは?
 まずタイトルがいいですね。原題はYou only live twice.直訳すると、「きみは2回しか生きられない」。英語的なセンスというのはわかりません。あるいは洒落た言い回しなのかも。それより“007は二度死ぬ”の方がカッコいいですね。
 タイトルを見た瞬間に、どういうこと?って思いますね。そして、映画を見て確かめてみたいっていう気持ちになります。当時は子供でしたから、ついに007もサイボーグになるか超自然的な能力を身につけるかして、不死身になってしまったのかという飛躍した空想を描きました。キャラクターからして、そういう展開はあり得ないと子供ながらに理解していながら、「二度死ぬ」を懸命に解釈しようとしたわけです。そんなことばかりに気を取られて、学校の勉強はいつも上の空、雲にのってフワフワ。
 “二度死ぬ”については、あなたが見て、確かめてください。

展開が回りくどい?
 007ジェームズ・ボンドは、香港で、怪しい賊が数名にマシンガンで撃たれて絶命。新聞には、英国海軍中佐(ボンド)死すの報が掲載される。英国海軍の戦艦で水葬が行われボンドの死体は海中へ。海底に沈んだボンドに、アクアラングをつけた男たちが接近。ボンドの亡骸を潜水艦に回収する。エジプトミイラのように亡骸を包んだシートを剥がしてみると、そこには酸素ボンベを付けて呼吸するボンドが。
 ボンドは密命を受けて、潜水艦の魚雷口から撃ち出される。やがて、夜の海岸に、アクアラング姿のボンドが闇に紛れて日本上陸。
 これこそが60年代のスパイ映画です。今から見ると、手間暇かけて煩わしい展開ですが、諜報員は秘密裏に行動しなければなりません。観客は、「そこまでやるか」とあっけにとられながらも、「さすが英国秘密情報部員だなあ」と納得しながら見ていたのです、多分。

日本は男性天国?
 この映画、じつは封切り時には見ていません。「007ゴールドフィンガー」で激しい衝撃を受け、将来は秘密情報部員になるとまで憧れた少年にとって、日本を舞台にした007映画は、今や遅しと公開を待っておりました。雑誌などで情報を集めるだけ集めて、準備万端整い、後は本編を見るだけでした。ところが、父親が一言「あんな国辱映画は見に行かない」なんぞと宣った。「コクジョクって何?」と小首かしげるばかりだったけど、とにかくどんなにねだっても頑固オヤジには通じません。
 結局実際に映画を見ることができたのは、大人になってからのリバイバル上映(記録を見ると1976年。封切りから10年も待ったのだねぇ)
 スクリーンには、確かに変な日本が映し出されました。姫路城に忍者訓練場があったり、畳の部屋なのに洋間仕立てだったり、まだまだあります。まさに荒唐無稽。そんな日本人はいません、そんな日本はありません、と言いたくなりますね。でも、日本を軽視または蔑視しているのとはちがうような。
 西洋人にとっては、東洋、または日本というのは別世界なのでしょう。彼らの知識にあるゲイシャ、フジヤマ、ニンジャをデフォルメすると、いかにも日本だなぁと感じられるのでしょう。
 タイトルバックには、日本髪を結ったヌードのシルエットが登場します。なんだかお座敷ストリップみたいです(見たことはないけど、そんなイメージ。和物=日本髪、お座敷と洋物=ヌード、ストリップの混合から)。さらに、お風呂では、女性達がボンドや日本情報部のボス田中の体を洗う。田中が言うには「日本では何でも男が先、女が後だ」
 お風呂のサービスや田中の言葉について、日本人の男達は「(実際は)全然ちがう!」と拳をにぎり、鼻をふくらませて憤るかもしれない。しかし、日本の女性は、夫を立てて自分は耐えることが妻としての役目、美徳だと考えている部分が今なお根強くあります。伝統的に日本の女性は、そこに自分の存在意義を見出してきました(私は、なんてけなげなの)。だから、外国人からすれば、日本は「男性天国」と見えるのだろうね。

トヨタ2000GTはボンドカーではない?
 日本を舞台にした007映画には、日本車のトヨタ2000GTが登場します。
 トヨタ2000GTついては、ボンドカーと呼ぶのに異を唱える向きもあります。なぜなら、ボンドが所属するイギリス情報部M16の車ではなく、日本の情報部が所有するものだからです。さらに、ボンド自身は2000GTのハンドルを一度も握りません。運転手するのは、日本の女性情報部員のアキです。
 けれど、秘密兵器を搭載した2000GTは、007映画を引き立てる役目を十分に果たしています。まずはそれだけで、ボンドカーの称号に十分ふさわしい、と考えます。
 そして、ボンドカーと言える決定的な根拠があります。ボンドは、運転こそしませんが、助手席に鎮座されております。2000GTはツーシーターですが、リアシートの背もたれにあたる部分に通信テレビモニターが設置されています。これは、日本の情報部との連絡用です。助手席にいるボンドが振り向くと、ちょうどモニターが見えます。
 そこなのです。なぜ、後ろにモニターがあるのか。普通だったら、運転者が連絡できるように前にあるものですよね。まさか、バックミラーでモニターを見て、お話しすることはありますまい。つまり、これは、ボンドが助手席に乗ることを想定して、彼が日本情報部のタイガー田中と秘密の通信をするために作ってあるのです。だから、この2000GTは、まぎれもないボンドカーなのでございます。

敵基地は、一夜にしてならず?
 007映画のクライマックスは、悪の巣窟、敵基地への総攻撃です。そのパターンは、この映画からできました。「007は二度死ぬ」記念すべき、敵基地大爆破の第一弾です。
どうやら日本から謎の飛行物体が打ち上げられている。007が調査を進めると、阿蘇山の火口に、悪の組織スペクターのロケット基地がカモフラージュされていた。
 しかし、阿蘇山規模の山をくりぬき、その中にロケットの打ち上げ射場をつくるのは、大々規模工事です。何台もダンプが出入りし、土砂を運んだり、何台もトラックが出入りして、機材を運んだり、人だって半端な数では工事が進まないでしょう。うちの親戚が改築で地下室を作るときだった、大変だったぞ。よく世間にばれない完成したものです。いやはやりっぱな荒唐無稽。楽しいですね。

 まだまだ、ボンドガール、新兵器など、「007は二度死ぬ」にはふれたいことがあるのですが・・・。

 007のシリーズは、荒唐無稽路線がいくつか作られると、「原点回帰」「揺り戻し」「原作に忠実に」などといって、リアル路線に鞍替えしようとします。007映画の007らしさは、ボンドカー、ボンドガール、新兵器、悪の秘密組織などにあるもの。その頂点が
「007は二度死ぬ」です。

 人は、2回生きることはできません。1回の誕生を、精一杯自分らしく生きてほしいものです。

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Last updated  February 24, 2008 08:15:21 AM
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