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March 2, 2008
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カテゴリ:アクション
 泥臭い、しかし魅力がある。そういうことってあります。
 かつて香港映画は、カンフーなどのアクションだけが売り物で、撮影や演技の技術は未熟だった。けれど、ストーリーそっちのけで延々とカンフー対決を見せたり、建物のすきまで両側の壁に足をかけて登りながらパンチを打ち合うといった驚きのアクション繰り広げたり(「帰ってきたドラゴン(1974)」ブルース・リャンvs.倉田保昭)など、じつに型破り、アメリカ映画にも日本映画にも見られない斬新で個性的な映像を生み出しました。
 その香港映画も、最近は洗練された映画が多くなってきました。

 今、泥臭い魅力がいっぱい、破壊的な映像を展開するのはタイ映画です。
 「マッハ!(2003)」「七人のマッハ!!!!!!!(2004)」「トム・ヤン・クン!(2005)」など、やたら「!」が好きなタイ映画。今回ご紹介するのは「ロケットマン!(2006)」。やっぱり「!」。(じつは邦題に「!」がついているだけ。オリジナルにはありません)
 一連の「!」映画には、制作総指揮にソムサック・デーチャラタナプラスートの名前があります。ここまで彼が手がけた映画は「CGなし ワイヤーアクションなし スタントなし」を売り物にしていた。デンジャラス、フルコンタクトの死にそうなアクションこそタイアクション映画の生きる道、みたいに。じつに泥臭い。
 しかし、今回の「ロケットマン!」は一転、CG,ワイヤーアクションまであるのです!。この節操のなさはどうだ。ますます泥臭いぞ。

 これまでの「!」映画は、より過激なジェッキー・チェン映画みたいな作りでした。今回CG、ワイヤーを使っているということは、これは推測ですが、「少林サッカー(2001)」「カンフー・ハッスル(2004)」のチャウ・シンチーばりの映像をイメージしたのではないか。いやはやおもしろくするためには、なんでも取り入れようというわけです。

 1920年代のタイを舞台にした「ロケットマン」。タイの民から「ロケットマン」とに呼ばれるは、爆竹仕掛けのロケットを数多にぶっ放し、弱きを助け強きを挫く謎のヒーロー。あまつさえロケットマン自身も大型爆竹ロケットに乗って、手綱を引きながら空中をぶっ飛びます。しかし、爆竹ってそんなに推進力があるのか?

 ロケットマンは、牛泥棒から牛を奪い、貧しい農民に分け与えます。牛飼いが牛を移動させる様子を見て、かつてクリント・イーストウッドが出演していたアメリカテレビ西部劇「ローハイド(1959~1966)」を思い出しました。やはり、牛を連れて長い距離を旅する男たちの物語。だから、「ロケットマン」も「ローレン、ローレン、ローレン、ローハァイド・・・」と、あの軽快なフランキー・レインの歌声が聞こえてきそう。
 「ロケットマン」に登場するタイの風景や服装が、じつに西部劇風。残念ながら、浅学非才の身ゆえ、タイの国のことをよく知りしません。だから、1920年代のタイの人の生活が、西部劇風であったのかどうかはわかりませんが、これは、やっぱり “無国籍アクション”なのでしょうか。

 さらに、ロケットマンの敵は「黒鬼」と呼ばれる “妖術使い”だぁ!爆竹ロケットに、西部劇に、おまけに妖術使い、タイ映画の破壊的パワーが爆発!何が起こるかわからない。
 この妖術使いを演じるのがパンナー・リットグライ、「七人のマッハ!!!!!!!」の監督です。十数年ぶりの俳優復帰とか。「カンフー・ハッスル」では、あのブルース・リャンが、笑う殺し屋・火雲邪神として15年ぶりに映画出演、驚愕カムバックを果たした。そのエピソードと似ていると感じるのは勘ぐりすぎか。そこまでいただいちゃうのか、タイ映画。映画のためならなんでもやる。

 型破り映画を探し求めていたら、香港映画からタイ映画へと続く鉱脈を発見。とにかく観客を驚かせ、楽しませようとする熱意が流れています。

 人も映画も、洗練されれば、かっこよくなります。しかし、洗練されると、人も映画も型にはまり、冒険ができなくなっちゃいます。泥臭い映画には、形振り構わぬ勢いがあり、見る者をねじふせます。

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Last updated  March 2, 2008 07:23:20 AM
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