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March 30, 2008
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カテゴリ:アクション
 ツルツルっと、蕎麦を食べるみたいに「ボーン・アルティメイタム」を最後まで見てしまいました。きっと、高級な蕎麦なのでしょう。喉ごしなめらか、あとからあとから軽快に食堂を通過し、胃袋に消えていってしまいました。けれど、高級な蕎麦にありがちなのは、量が少ないこと。おいしかったんだけどね、もう終わりですか?味的には大変結構なのですけれども、蕎麦つゆも飲み干しましたが、おなかはいっぱいにはならないのです。
 というのも、好みの問題ではあります。おいしいものを少量だけ、外連味がない、そういったものが喜ばれるのはわかります。

 「ボーン・アイデンティティー(2002)」から始まったジェイソン・ボーンのシリーズは、記憶をなくしたボーンの自己解明を巡る展開に引き込まれます。一匹狼のボーンと組織力を誇るCIAの駆け引きがスリルとサスペンスにあふれています。人も物も、圧倒的な物量作戦と政治力で攻めてくるCIAに対して、人智を尽くして裏をかくボーンの策略には、スクリーンに釘付けになります。
 また、ボーンはクラヴ・マガ (イスラエルの格闘術)の達人です。CIAが“究極の殺人マシーン”ボーンのみならず、特殊な技能をもたない彼の支援者たちをも襲ってくる。支援者たちが殺されれば、ボーンの自己解明が妨げられてしまう。ハラハラドキドキだ。けれど、ボーンが駆け付ければもう大丈夫。クラヴ・マガの秘術であっという間に敵の群れを蹴散らしてしまいます。ボーンはスーパー・スパイです。

 映画を見ている間は、ツルツル、スルスルと、間断なくお蕎麦が流れ込んでいくようです。
 でも、スパイ映画として、足りないものがある。それは、荒唐無稽な新兵器と美女たちです。
 おっと、これは007に毒された観客のないものねだりか。
 確かに、高級なお蕎麦もいいのです。しかし、天ざるとか、あるいはミニカツ丼セットであれば、味的にも、そしてお腹もいっぱいになる。ミニカツ丼セットなどというものは、本来の蕎麦メニューからしたら、邪道なのかもしれません。でも、ツルツルと喉ごしがいいだけでなく、噛み応えやゴックンと嚥下したときの満足感てものがあるじゃないですか。
 
 ボーン・シリーズにもスパイらしい秘密の小道具も出てきます。けれど、それらはとっても現実的なのです。ホンモノのスパイがきっとつかっているだろうなという代物。
 ボーンには、恋人がいました。前作「ボーン・スプレマシー(2004)」で殺されてしまいます。以後、ボーンには浮いた話はなし。今回も、二人ばかりボーンにからむ女性は出てきますが、そういう関係にはなりません。
 だからボーン・シリーズは、リアル志向のスパイ映画と言えます。本格派のお蕎麦なわけです。

 では、映画でしかありえない秘密兵器を駆使し、美女をはべらせたジェイソン・ボーンが見たいか?
 いやいや、マット・デイモンは、スウエット・パーカーやTシャツ、ジーンズなどのアメリカン普段着カジュアルが似合ってしまう人。どこにでもいるアメリカ青年という目立たない雰囲気で、存在感を見せるスターです。
 彼には、派手な秘密兵器や美女軍団は似合いません。なにしろ「オーシャンズ13(2007)」の中では、マット・デイモンが出演していたことに気付かなかった人もいるくらいですから。
 

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Last updated  March 30, 2008 05:51:08 AM
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