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テーマ:DVD映画鑑賞(14214)
カテゴリ:アニメ映画
自慢じゃないけど、テレビの実写版「鉄人28号(1960)」を見てました。「そんなものがあったのか」とおっしゃるでしょうが、あったのですよ。ちなみに、実写版「鉄腕アトム(1959~1960)」も見ていました。両方とも、アニメ版の陰に隠れてしまって、今は話題になることもありません。実写版は、ビンボー臭さや胡散臭ささえ感じます。でも、夢中になって見てました。
「鉄人28号」は月刊雑誌「少年」に連載されていました(1956~1966)。「少年」には「鉄腕アトム(1952~1968)」も連載されていて、二大看板でした。この頃の月刊誌は、本誌の方に数ページ、イントロのようにマンガが載り、続きは別冊付録というマンガごとに分かれた小冊子で読むスタイルでした。どうしてそんなことをしていたのかはわかりません。 日本初のテレビ番組としてのアニメーションが「鉄腕アトム(1963~1966)」です。それ以前の話ですから、その時点でアニメにすることはできなかったのですね。「鉄人28号」も「鉄腕アトム」も、マンガの人気にあやかって映像化するには、実写しかなかった。かといって、(多分)技術的、予算的に巨大ロボットとして描くこともまだできなかった。だから、最初にテレビに登場した鉄人28号は、驚くべきことに、等身大だったのですよ。 この実写版「鉄人28号」を、毎回欠かさず見ていまして、あるとき、あんまり大きな音でテレビを見ていたものですから、そこから聞こえるサイレンの音を近所のおばさんが本物とまちがえて「パトカーが来た!」と大騒ぎになったこともありました。 それはともかく、テレビ番組の実写版「鉄人28号」は、あるとき唐突に終わってしまったのです。確か、正太郎が敵に襲われ、爆弾が破裂する中を逃げ惑います。何度か爆発があり、正太郎の生死は不明という状態で(と記憶していますが、ちがうかもしれません)、つぎの回を心待ちにしていたら、もう放送がなかった。地方テレビ局が、子供番組だと軽く見てたのかな、などと思っていましたが、その後番組自体が未完で終わっているとわかりました。 実写版「鉄腕アトム」は、ビデオテープを所有しています、ベータのカセットで。「鉄人28号」も手に入れるチャンスがあったのに、逃してしまいました。今とても悔やんでいます。 雑誌「少年」が生んだ2大ロボットヒーロー、アトムと鉄人。アトムが陽なら鉄人は陰というイメージがあります。それは、アトムが(その時点の)未来世界のアンドロイドであるのに対して、鉄人は、第二次大戦の兵器としてつくりだされた、などのことから。 陰のイメージをもつ鉄人の作品世界は、「怪」と「謎」がからんできます。“怪”ロボットという表現がよく似合います。なにしろ主人公金田正太郎は少年探偵で、拳銃を撃ち、車を乗り回して“怪”事件に挑むのですから。その怪事件には、“怪”ロボットが姿を見せます。怪、怪、ですね。これは、江戸川乱歩の少年探偵団の世界と共通するものがあります。少年探偵団は“怪”人二十面相が企む“怪”事件を、年端もいかない子供達が追っかけるお話。少年探偵団の小林団長、彼も、少年ながら拳銃の撃ち方を習い、車を運転しちゃいます。江戸川乱歩の探偵小説に、怪(物)ロボットが登場したら、鉄人28号の世界になりそうな(ちょっと時代背景が違う)。 鉄人28号はロボットを扱いながら、鉄腕アトムのようにSF的ではなく、少年探偵団のように、謎の怪事件というダーク(陰)な世界観をベースにしているというわけです。 「怪」「謎」の鉄人28号は、基本的には“怪”物=モンスターなのです。アトムが人と言葉等を介して、主体的にコミュニケーションを取るのに対して、鉄人は「いいも悪いもリモコン次第」と歌われるように、鉄人自体に善悪の区別はつきません。だから、その圧倒的な巨体とパワーは、怪物的な脅威です。鉄人はロボットのもつメカの面ではなく、怪物的な面を強調しています。 今川泰宏監督がつくったテレビ版「鉄人28号(2004)」は、鉄人の登場時からモンスターとして描かれ、ワクワクしました。映画「鉄人28号 白昼の残月」でも、鉄人のモンスター性は遺憾なく発揮されます。正太郎の操縦が効かないにもかかわらず、ビルの谷間にぬっと体を現す様子は、まさに怪物。ゴジラなどの怪獣の雄姿が重なる(だから音楽が伊福部昭なのか?CDを買わなくちゃ)。 鉄人28号が好きな理由のひとつは、巨大ロボット同士が繰り広げる迫力のバトルが見られることです。光線技、ミサイルなどの飛び道具がなくて、パンチ、キック、体当たりなどを中心とした肉弾戦であるところが、やっぱりメカというよりモンスター。 「白昼の残月」は、映画版として、グレードアップしたロボットバトルを見せてくれるだろうと、期待の焦点はそこでした。ところが、そういった場面は予想外に少なく、鉄人のバトルがクライマックスになっているわけではありませんでした。 敵ロボットは、バッカス、ギルバート、ロボットモンスターと、鉄人のスターロボットが一挙に登場します。これは、ゴジラが映画の中で、モスラ、ラドン、キング・ギドラなどのスター怪獣と闘うようなもの。 バッカス、ギルバートなどがシルエットで姿を現したあたりでは、ドキドキしました。しかし、バトル場面でのそれらのロボットは、なんだか影が薄い。と思っている間に、さっさと鉄人に片付けられてしまいました。 敵ロボット軍団との闘いが映画のメインになると思っていたので、拍子抜けしました。けれど、映画がおもしろくなかったかというとそうではありません。期待に応えてくれる映画でした。 鉄人贔屓としては、実写版の映画「鉄人28号(2005)」が公開されたとき、押っ取り刀で駆け付けました。長年描いた、アニメではない巨大鉄人の大迫力の大活躍が見られるかと。けれど、ストーリーが、なんだか妙な正太郎の成長物語になっていて拍子抜け。鉄人とブラックオックスのロボットバトルも迫力がありませんでした。がっかり。 「白昼の残月」は、ロボットバトルには少々不満でも、映画として納得できました。監督今川泰宏の鉄人に対する熱い思いが伝わってくるからです。 かつて、マンガの鉄人を読んでいたときに、ほとんど鉄人が登場しないエピソードがありました。“謎”と“怪”のマンガですから、事件によっては鉄人の登場を必要としない展開もあったのです。子供心には、鉄人の雄姿を拝みたい。ところが、鉄人が出てきた場面は、悪漢が正太郎邸を襲ってきたときに、「ガオッ」と姿を現して威嚇しただけ。それでも、ストーリーが面白かったし、短い場面でも鉄人は迫力があったし、で満足しました。 今回の「白昼の残月」は、戦争や戦後の日本に対する今川監督のこだわりから、重厚なストーリーが味わえました。また、その時代を背景にした鉄人や正太郎の有り様に、鉄人及び原作者の横山光輝へのリスペクトを感じました。 子供の頃から、さまざまなヒーローや作品に胸を躍らせてきました。そして、もし、自分がそれらを作る側に回ったら、こうしてみたい、ああしてみたいと空想を膨らませました。それらのヒーローや作品が大好きだから。 今川監督もきっとそういう想いで、映画版そしてテレビ版の鉄人28号をつくったのでしょう。平成ガメラが、迫力の映像だったのと同じように。 ということで、できれば、見応えのある実写版「鉄人28号」をどなたかつくってください。 「鉄人28号 白昼の残月」、出たばかりのDVDを見たその夜に、テレビでまた映画が映っているのにびっくり。一瞬、借りてきたDVDをプレーヤーに入れっぱなしにしてあって、何かの拍子に勝手に再生されたのかと思いました。そうではなく、なんと、NHK-BSで放映されていたのでした。 人気blogランキングに参加中。クリックしてね。ご協力、よろしくお願いします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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