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July 14, 2008
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カテゴリ:アドベンチャー
 アメリカ兵に変装して、ソ連兵の一団(幕僚車や軍用トラック)が米軍基地に侵入してきました。彼らは、とある倉庫の前で車を止めます。幕僚車のトランクから、男が引っ張り出されました。顔は見えません。足元に、フェドーラ帽が転がります。男は帽子を拾い、被りました。姿が見えなくても、影だけで観客はその男が誰だか分かります。そう、インディ・ジョーンズなのです。
 大向こうから「待ってました!」の声がかかりそう。インディ・ジョーンズは、まさにみんなのヒーローです。
 
 前作から19年ぶりとなるこの映画ではインディ・ジョーンズも、60歳に手が届こうとする年齢です。劇中「じいさん」と呼ばれたりもしますが、昔と変わらず血気盛んでした。インディ・ジョーンズは、老若男女みんなに好かれるヒーローです。
 超常的な能力をもつスーパーヒーローではありませんが、体も心もタフネスで、嫌味がない性格。今も、アクロバチックなアクションだって、敢然と挑みます。天井の梁を渡って、平気で走り抜けます。激走するトラックの屋根だって登っちゃう。危ないからって、躊躇なんかしません。それでもって、本職は大学教授というインテリ博学ぶり。たまにはずっこけて笑いを取るところには、親しみが増します。

 監督のスティーヴン・スピルバーグにしてみれば、もともとは007を撮りたかったそうです。それが叶わなかった。だから、インディ・ジョーンズは、ジェームズ・ボンドに匹敵するようなヒーローとして生み出されました。ゴジラを撮りたかった金子修介が、ガメラを撮ったようなものでしょうか(金子氏は、後にゴジラを監督しました)。
 ジェームズ・ボンドの酒、女、ギャンブルという退廃的な嗜好、キザな振る舞いに比べて、インディ・ジョーンズはなんと健全、安全で、素朴なヒーローでしょう。ジェームズ・ボンドは、「女にモテモテでかっこいい」という人がいる反面、「女たらしで嫌い」という人もいます。好みが分かれるところでしょう。けれど、インディ・ジョーンズがいやだという人はいないのではないか。やっぱりみんなのヒーローです。日本でいえば、フーテンの寅さんか(寅さんも、だれにでも好かれるという意味で。念のために)。
 
 インディ・ジョーンズの第一作は「レイダース 失われた聖櫃〈アーク〉(1981)」でした。アメリカなど、シリーズ過去3作のうちではこの映画の興行収入が一番多いようです。でも、日本でインディ・ジョーンズが売れたのは、「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説(1984)」から。作品タイトルに“インディ・ジョーンズ”がついてからですね。そのためでしょうか、今DVDのパッケージを見ると、「インディ・ジョーンズ/レイダース 失われたアーク《聖櫃》」となっています。
 
 「レイダース」を見たとき、スピルバーグの映画というより、製作担当のジョージ・ルーカスの色が濃く出ているように感じました。ルーカスの監督した「スター・ウォーズ」と同じように、見せ場の連続だけれども深みがない。だから、見ていて途中まで気持ちがのりませんでした。また、内容的に超常現象が出てきそうで出てこないところも不満でした。超常現象っぽく興味を引きながら、じつは現実的に説明のつくお話でした、というパターンは好まないからです。
 しかし、クライマックスで聖櫃の蓋が開き、中から異様な物体がドビャーっと飛び出してくれたので、嬉しかった。悪霊のような物体は、悪漢ナチスドイツの一味を殲滅してしまいました。そして、聖櫃にまた蓋がされ、木箱に入れられて、アメリカのとある倉庫に運び込まれたのです。そこには似たような秘密の木箱が山と積まれていました。このラストにも、満足しました (この倉庫が、今回の映画につながっています) 。さすがスピルバーグと思ったものです。

 それだから、第二弾「魔宮の伝説」をとってもとっても期待して見ました。こちらも見せ場の連続、ジェットコースタームービーと呼ばれました。でも、やっぱり深みを感じません。魔術師が、素手で心臓を抜き取るような超常現象にも、もう意外性はありません。それは「インディ・ジョーンズ 最後の聖戦(1989)」でも同じ印象でした。

 「最後の聖戦」は、当時日本初のTHX認定を受けた試写室で見ました。凄い音響に感心していると、戦車が崖から落ちるシーンでは、地響きを体感しました。とってもリアルだなあと思っていたら、その後のニュースで本当の地震があったことを知りました。たまたま、それらが重なったのでした。

 「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」は、これまで以上に見せ場の連続でした。核実験場での爆発からの遁走、軍用車での追撃戦、軍隊アリの襲撃、アマゾン大激流滝下りなどなど。観客を楽しませようとあの手この手のまさに大活劇です。
 だれもが楽しめる映画で、興行収入も記録を打ち立てようとしています。でも、万人向けにつくった映画は、マニアックな気質には受けないのです。ロズウェル事件やエリア51といった怪しげな言葉も出てきますが、そこに興味深い怪しい世界が展開されるほどのことはありません。ラストの仕掛けも、大がかりなヴィジュアルではありますが、映画の内容からすれば十分に予想できるもので、意外性はありません。これまでのB級映画にありがちなパターンでした。
 
 インディ・ジョーンズは、みんなが好む味付けをされたヒーローです。いわば誰が食べてもおいしいといわれるラーメン。それよりも、評価が割れる中で、この味がいいと語ることができるラーメンを支持するタイプの気質もあるわけです。

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Last updated  July 14, 2008 07:17:56 AM
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