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November 26, 2010
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カテゴリ:プロレス


 あの頃、なんであんなにプロレスに熱狂したのか。
 今、プロレスは、ほとんどおもしろくない。

 映画『燃える闘魂アントニオ猪木50年の軌跡』を見た。アントニオ猪木の雄姿を大スクリーンで見られるなんて。料金が3000円!でも高くない(?)。

 とはいいつつも、じつはぼくは坂口征二のファンだったのだ。
 日本プロレスにおけるジャイアント馬場とアントニオ猪木は二大エースだった。それを追う形の黄金の若鷲坂口。その姿を見て「がんばれ坂口」とエールを送りたくなった。
 判官贔屓なのかへそ曲がりなのか、ぼくは、トップはあかんのよ。

 確かに猪木のプロレスは素晴らしかった。卍固め、コブラツイスト、ブレーンバスター、そして原爆固めと、猪木は多彩なオリジナルホールドで美しく、かっこよく試合を盛り上げた。
 しかし、その一方で猪木は、馬場に挑戦状を叩きつけたり、坂口に対しては「片手で3分でやっつけてやる」と挑発したりする。どうも猪木には「オレが、オレが」という自己顕示欲を強烈に感じて、引いてしまうのだった。

 坂口が新日本プロレスに入ったとき、坂口と猪木は対等のエース同士という条件だったはず。それなのに、どう言いくるめられたのか、いつのまにか猪木がメインを張り、NWFのチャンピオンにもなっていった。だから、ぼくは余計に坂口を応援した。坂口に活躍してほしかった。でも、元来の奥ゆかしい性格からか、それともとても猪木には敵わないと思ったのか、坂口は一歩も二歩も身を引いて猪木を立てていく。ぼくは、判官贔屓から、なおさら坂口に同情票を入れたくなったのだった。

 だが、こうして映画館で猪木の往年の名勝負を見て、あらためて思い知った。やはり日本のプロレス史は、猪木を中心に回っていたと。
 対シン戦、対ストロング小林戦、対スタン・ハンセン戦、対アンドレ・ザ・ジャイアント戦、そして幾多の格闘技戦。
 猪木の名勝負の数々、これらは明らかに坂口や他のレスラーはなしえなかったものだ。

 プロレスについては、あらかじめ試合結果が決まっていると分かってしまった。そんな今日現在の視点から見ると、確かにレフェリーが何度もぶっ飛ばされて勝敗に影響するような競技は他にないし、格闘技戦だって、アリ戦ではあんなにパンチを避けていた猪木が、モンスターマンやチャック・ウエップナーには果敢に挑んでいくのも不自然だ。
 しかし、そういったハイ・ストレンジネスな不合理さを実感しても、猪木の鬼気迫る戦いぶりには、鳥肌が立ち、涙さえ出てくるのだった。

 猪木ほど、リングで、衆人環視のもと、何の抵抗もなく己の闘魂を全開させられるレスラーはいない。だから僕は、あの頃、あんなに熱い思いでプロレスを見ていたのだ。


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Last updated  November 27, 2010 06:13:13 AM
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