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March 2, 2014
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カテゴリ:アクション


 我々の世代にとって、チャールズ・ブロンソンは「ウーン、マンダム」である。
 ジェリー・ウォレスの歌う「マンダム〜男の世界」である。
 1970年のヒット曲だが、今でも英語で歌える。
 そして、チャールズ・ブロンソンは、男臭いスターとして一躍有名になった。
 (対抗して女臭いスターといわれたのはカレン・ブラックだが、それはあまり知られてないかも)

 その割には、チャールズ・ブロンソンの映画はあまり見ていなかった。
 テレビで『大脱走(1963)』や『荒野の七人(1966)』をよく放映していた。しかし、そこからはブロンソンの男臭さはあまり感じられなかった。
 新聞のテレビ欄に深夜映画で『赤い矢(1957)』出演者チャールズ・ブロンソンの文字を発見し、がんばって見てみたが、ブロンソンは端役で期待の男臭さはなかった。マンダムで売れていたから、新聞の映画欄には主役のようにその名を載せたのだろう。

 初めて映画館でブロンソンを見たのは『レッド・サン(1971)』だった。三船敏郎、アラン・ドロンとともに三大スター揃い踏みと前評判は高かったが、ブロンソンからエモーションを揺さぶられるようなことはなかった。

 その直後、『燃えよ、ドラゴン(1973)』が公開される。
 そして、日本全土の男の子がブルース・リーに強く影響を受けるわけだ。
 ブルース・リーは、肉体的な強さも、精神性も、スクリーン上にあった、本質的なところを理解したかどうかは別にしても。
 おそらく、チャールズ・ブロンソンに対しても、男臭さ、男らしさといった言葉に託された見習うべきモデルとなるもの、カリスマ的なものを期待していたのだろうが、残念ながらブロンソンの映画で出会うことはなかった。

 そうこうするうちに、テレビで映画監督大林宣彦のトーク番組を見た。
 大林監督は、ブロンソンを起用してマンダムのCMを撮った人だ。
 その大林監督が、番組の中でつぎのように言っていた。
 「チャールズ・ブロンソンは、チャールズ・ブロンソンが出演するような映画は見ないそうだ」
 つまり、ブロンソン自身が、ブロンソンの出演するB級アクション映画なんて低俗だから見ないと大林監督に語ったとのこと。自分は、普段、もっと高尚な映画を見ていると。

 そうだったのか。
 そして、単純にもこう思ってしまった。ブロンソンの出演する映画は見る必要なし、と。

 それから、一種の食わず嫌い状態で、チャールズ・ブロンソンの映画は見なかった。
 しかし、最近『Death Wish』シリーズが当方のアンテナにひっかかってきた。
 それで、第一作の『狼よさらば』を見てみた。
 そうしたら、これがなかなか見応えがあった。

 設計技師のポール・カージーは、留守宅を三人組の強盗に襲われる。そして妻を殺され、娘は暴行されてしまう。
 となると、このポール・カージーが復讐をする話だな、と思うわけだ。
 特に、三人組の一人がジェフ・ ゴールドブラムだから、犯人にいい配役をもってきているという印象もその推測を助長した。
 その割には犯人がしょぼいんだ。男チャールズ・ブロンソンが追い詰める相手にしてはいかにもただのチンピラで、存在感が薄い奴らなんだ。
 悪者が強ければ、復讐も盛り上がる。しかし、この相手じゃあ盛り上がらないな、と思って見ていたら、それから三人組は一切登場しない。犯人は見つからず、迷宮入りをしちゃうわけ。

 じゃあ、映画のストーリーはどうなんだといえば、ブロンソン=ポール・カージーが、街のダニどもを人知れず処刑していく話なんだ、これが。復讐するべき相手が分からないから、悪人どもをつぎつぎに殺して、憂さ晴らしというかもって行き場のない気持ちをぶつけているわけ。
 だが、ブロンソン=ポール・カージーの行為で多少なりとも街の治安がよくなり、人々は勇気づけられて泣き寝入りしないで悪に立ち向かうようにもなる。
 そして、警察は、ブロンソン=ポール・カージーの存在を突き止め、追うことになる。殺されるのが悪人どもとはいえ、殺人を許していくわけにはいかないのだから。

 つまり、この映画は、復讐を達成するのがゴールなのではなく、ブロンソン=ポール・カージーが警察に捕まるかどうかが興味のポイントとなる。その警察も、ブロンソン=ポール・カージーの行為を、犯罪とするか、それとも見て見ぬふりをするかと困惑する面がある。
 これは意表を突いた展開だし、一筋縄ではいかない葛藤もある。
 この後、『Death Wish』シリーズはクオリティが下がっていくようだが、そこを見届けたいと思うのがマニアック。

 まあ、コスプレのない『キック・アス』だね。


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Last updated  March 2, 2014 08:14:09 PM
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