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May 10, 2015
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 最低映画方面でよく話題となる映画がある。
 その一本がシルヴェスター・スタローンの『コブラ』だ。

 冒頭、強盗一味がスーパーマーケットを襲う。そこに登場するはみ出し刑事。たったひとりで、手段を選ばず強盗団を殲滅。
 これって、『ダーティーハリー』のパターンじゃありませんか。

 まあ、それはいい。
 『ダーティーハリー』のパクリだろうが、たとえば『ゴジラ』に対する『ガメラ』のように、いいとこどりをしながらも、本家がやらなかった(できなかった)ことをやり、おもしろい映画を見せてくれればいいと思う。

 ストーリー的には、はみ出し刑事がカルト殺人集団に襲われる美人モデルを救う、というものだ。

 この筋書きだけを見れば、期待感が高まる。
 しかし、実際のところは、気持ちが入らない。

 それは、美人モデルが危機に襲われる状況に納得がいかないからなんだ。

 美人モデル=イングリッドは、偶然、カルト集団の殺人現場を通りかかってしまい、そいつらか追われる羽目になる。

 だが、この設定があまい。

 「新世界をつくる」といいながら、若い女性を殺戮にエネルギーを費やす[ナイトスラッシャー]。
 何がしたいんだかよくわからないこのカルト狂信集団、人通りのない暗がりで一人の女を殺す。

 そこをイングリッドが車で通り過ぎようとする。
 そして、ナイトスラッシャーのパッドンが、よせばいいのに眼(ガン)をとばしにイングリッドの車に近寄っていく。

 だいたいが、イングリッドは殺人現場を目撃してはいない。だから、カルト集団が人を殺したことを知られて困るならば、車の陰に隠れてイングリッドの車をやりすごせばすむことでしょう。
 わざわざ顔を見せにいってどうするんだ!?
 イングリッドは異様な雰囲気を醸し出すパッドンから逃げ去ろうとするが、不審に思ってバックミラーを覘く。そうすると、人を持ち上げているような様子が見える。
 ここまでの段階で、無理無理イングリッドをピンチに追い込んでいる。
 この状況であれば、パッドンさえ顔を見せなければ、イングリッドが事件に巻き込まれることはないのだ。

 意味不明な行動から、カルト集団の執拗なイングリッド追撃が始まる。

 しかし、イングリッドは、自分が何で追われているかが分かってなかったから、のんきにモデル稼業を続けている。

 写真撮影終了後にイングリッドが襲撃されるが、パトカーが駆けつけてなんとか助かり、病院に運ばれる。
 そこにも殺人鬼が迫る。患者が殺され、看護師が殺され、そしてイングリッドが危ない、という展開。
 通常は、サスペンスが盛り上る場面だが、やっぱり気持ちが入らない。
 なぜか。
 「重大な秘密を握っている」からこそ、殺す、殺されるのサスペンスが盛り上がる。
 犯人側からしたら秘密がばれたら困る、警察側からしたら秘密を明かさなければならない、そのせめぎ合いが大切だ。
 なのに「重大な秘密」をイングリッドは握ってない。

 コブラ刑事たちに「襲われるについて、何か思いあたることはないか」と聞かれて、ようやく「そういえば」と関連づけていったにすぎない。
謎の襲撃ということで、サスペンスが盛り上がるというシチュエーションもある。だが、この場合は、犯人側の単なる勘違いなので、それもない。
巻き添えをくらって殺された看護師や患者さんがお気の毒。

 これが、殺人現場を目撃した、と設定を変えるだけで、もうちょっとスムーズな展開になったのとちがうだろうか。
 カルト狂信集団の無軌道な暴走といえば恐い印象になるのかもしれないが、わざわざ顔を見せにいくようなまぬけぶりでは緊張感が薄れる。

 おそらく、撮影終了後の襲撃場面を撮りたかったのだろう。
 イングリッドが殺人場面をちゃんと目撃しているという展開だったら、警察が動きだし、イングリッドの周辺は隙がなくなってしまう。
 そうなると、イングリッドを襲撃する場面は、工夫が必要になるからね。
 お手軽路線を行ってしまったわけだ。

 後半は、イングリッドを守るスタローン=コブラ刑事とカルト狂信集団の大アクションが展開する。このあたりは、『ダーティーハリー』ではしなかったことかな。
 だって、イングリッドをかくまうべく病院を出た後で、カルト狂信集団が襲ってきたら、コブラ刑事は反撃に転じて逆に追っかける側に回る。大銃撃戦、激突カーチェイスを繰り広げる。あんたがタフでマッチョなのはわかる。しかし、助手席で怯えているいるイングリッドまでいっそう危険にさらすことはないだろう。彼女の安全はどう考えているんだ!?ここは逃げるに徹するべきでしょう。

 逃げるに徹したって、スリルはあるぜ。
 やっぱりスタローンとしては、保護対象の身の安全よりも自分のタフ&マッチョを誇示したかったのだろうな。

 それにしても、じつはカルト狂信集団のメンバーであるという婦人警官、この人の憎々しさは格別だ。カルト狂信集団がつぎつぎに若い女性を襲うのは、このいかれた婦人警官の嫉妬心からではなかったのか。

 なんだかんだいいながら、気持ちが入らなくても「最低映画」を楽しんじゃってるわけだ。
 あのアントニオ猪木の疑惑のIWGP決勝戦舌出し失神KO事件(1983年)だって、その疑わしさゆえに30年以上たっても、未だに書籍等で語られるものなあ。
 これが普通の試合だったら、忘れ去られている。

 正しいことよりも、楽しいことを。


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Last updated  May 17, 2015 08:48:24 PM
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