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テーマ:DVD映画鑑賞(14213)
カテゴリ:ヒーロー映画
この片岡千恵蔵のいう人は、大スターだったらしい。 なにしろ、「御大」と呼ばれるほどなので、大スターの中の大スターだったのだろうと思われる。 当方は、片岡千恵蔵の全盛期を知らないのだが、小学校の同級生に千恵ちゃんという女の子がいた。 その子が語るところによると「お父さんが、片岡千恵蔵の大ファンで、私の名前を千恵にしたの」とのこと。 そんな具合だから、ある世代にとっては、スーパースターだったのだね。 今回、シリーズ第一作の『七つの顔』を見たわけだけど、初めて見たのではない。 今はない大井武蔵野館で、七つの顔の男シリーズの何本かを見た。 このときは片岡千恵蔵を見たかったからではない。 古き良き荒唐無稽のミステリ活劇を確認したかったからだ。 「ある時は探偵多羅尾伴内、またある時は片目の運転手、……」 七つの顔の男は、奇術師、占い師、新聞記者などに変装して事件の解決に挑む。 じつに映画らしい現実離れした世界が展開される。 内容は、一応ミステリの体をなしている。 この映画の中には、推理小説にたびたび登場する「二つの部屋のトリック」が使われている。 そういったトリックもさることながら、当方は、やっぱり様々な変装がおもしろい。 変装といえば、江戸川乱歩の怪人二十面相がほぼ専売特許化している。 怪人二十面相は、江戸川乱歩の「少年探偵シリーズ」に登場する怪盗である。大人向けの小説には出てこない。江戸川乱歩としても、子供向けのキャラクターだと考えたのだろう。 しかし、そのような区別をしながらも、同じく江戸川乱歩が生み出した名探偵明智小五郎、こちらもひんぱんに変装する。それは、大人向けの一般推理小説でも、変装する。 ともすれば、バレバレでしょ、あるいは、そんなにうまく化けられないでしょ、などといわれかねないわけだが、そこがつっこみどころであるとともに非現実的な楽しいところでもあるのだ。 そして、七つの顔の男には決め台詞がある。 「ある時は片目の運転手、またある時は……」 もういろいろな映像作品などに引き継がれているセリフだ。 「しかして実体は、藤村大造だ!」 あれ、「しかしてその実体は、正義と真実の使徒、藤村大造だ!」ではなかったのか? どうも、このシリーズ第一作では、まだ「正義と真実の使徒」は使ってないようだ。 さらに、七つの顔の男の正体藤村大造は、もともとは怪盗だったようだ。 その罪滅ぼしとして、難事件を解決して正義のために力を尽くしていると本人が語っている。 ということは源流は、アルセーヌ・ルパンか。 さてさて、話を片岡千恵蔵にもどすとする。 当方は、片岡千恵蔵の映画『赤西蠣太(1936)』を見たことがある。 あれは確か、銀座並木座だったと思う。やはり今はもうない。 この『赤西蠣太』で、片岡千恵蔵は、ショボい赤西蠣太とキリッとした原田甲斐の二役を演じていた。この二つの役の落差をかっこよく演じ分けていた。 そして、『七つの顔』でも、藤村大蔵の正体を現してからがダンディでかっこいい。じじむさい多羅尾伴内との落差がすばらしく大きい。 藤村大蔵は、オープンカーを乗りつけて、それで悪人とカーチェイスを繰り広げる。 そのオープンカーには、なんと放送設備がついている(とセリフで言ってる)。 放送設備って何だ?もしかして、犯人に向けて「待て!」とか沿道の人々に「前の車には悪い奴が乗ってます」とかスピーカーから流すのか、と思ったら、要は無線機だった。 でも、当時は自家用車に無線機が備え付けてあるだけで、007のボンドカー並みの衝撃があったのだろう。 なにせ藤村大造のオープンカーが悪人の車を追撃しても、道にほかの車はいない。街灯もなければ、建物もないところを2台の車は走っていく。 警察でさえ、出動したパトカーは1、2台で、あとはオートバイとサイドカーなのだ。 そのオープンカーをまさにさっそうと乗り回し、藤村大造は犯人を追い詰める。演じる片岡千恵蔵は、ジェームズ・ボンドに負けず劣らす決まってる。 さすがに御大、大スターの中の大スターだ。 若くしてこの映画を見た人は、片岡千恵蔵の大ファンになり、あやかって娘の名前につけようというものだ。 そういえば、同級生は「私が男の子だったら、そのまま千恵蔵だった」とも言っていた。女の子でよかったんじゃないかな。 じつはこの「七つの顔をもつ男」、小林旭で『多羅尾伴内(1978)』としてリメイクされている。 小林旭も大スターだ。見比べようと思ってDVDを借りにいったら、レンタル中だった。はなはだ残念。 人気ブログランキングへ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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