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カテゴリ:ヒーロー映画
ダニエル・クレイグの007はリアル・スパイ路線です。 そして、元祖007ショーン・コネリーからピアース・ブロスナンまでのジェームズ・ボンド映画は、ファンタジー・スパイ路線、別の言い方をすれば荒唐無稽なスパイ映画です。 当方は、ファンタジー系が好きです。荒唐無稽でもいいんです。悪の組織が世界的な大陰謀を企て、ジェームズ・ボンドが秘密兵器などの奇想天外なガジェットを駆使してそれを阻止しようと活躍し、最後は007たちのチームが敵基地を襲撃して壊滅させ、世界の平和が戻るというパターンがいい。 ダニエル・クレイグの007は、秘密兵器が登場しない007映画でした。これは肉体アクションで007のすごさや行動力を見せるパターンです。どんなに危険でスリリングなスタントシーンがあったとしても、その主人公がジェームズ・ボンドでなくてはならないということはありません。そこで超人的な力を発揮するのが007の際立った個性ではない、当方は、そう思います。 ところが、前作『007スカイフォール』においては、兵器係のQが再登場し、また初代ボンド・カーであるアストンマーチンも姿を現し、秘密兵器の存在を再確認するシーンがありました。そのことから、今回の『スペクター』への期待は高まりました。いよいよダニエル・クレイグ版007も、本来のファンタジー路線に軌道修正してくれるのではないかと。 まず、オープニングのボンドを狙う銃口のシーンが復活、これには胸が高鳴りました。 そして、ボンド・カー=アストンマーチン、今回は最新デザインのDB10が、秘密兵器搭載でお披露目されました。 初代ボンド・カーのアストンマーチンDB5が、数々の秘密兵器が搭載して『007ゴールドフィンガー(1964)』に登場したときは、度肝を抜かれました。時代的にそのアイデア自体が、とても斬新でした。50年前のボンドカー=アストンマーチンDB5は夢の車だったのです。 今回のDB10については、もう今では、技術的に乗用車に兵器を仕込むことは、そう難しいことでも目新しいことでもありません。また、ごく普通の自家用車だって、カーナビや各種センサー等昔のボンド・カー並の装備がされているわけです。 そういう点では、ボンド・カーは現実としてとらえることができます。もう夢とは言えません。 ですが、いくらシークレット・エージェントといえども、自分の車に火炎放射器などの兵器を乗せて町中を走り回っていることはないはずです。そう考えれば、これはファンタジーですね。 つぎに、このたびの映画では、007の宿敵、悪の組織スペクターが久々に暗躍します。 かつて、ショーン・コネリー時代の007は、スペクターとの闘いに明け暮れていました。 スペクターの恐怖は、幹部会議で容易に知ることができました。作戦に失敗したメンバーや命令に従わなかったメンバーについては、会議室でその者が座っている椅子が、即座に電気椅子となります。あっという間に裏切り者は感電死して、椅子は床下に隠れる。そして、空席となってまた会議室に迫り上がってきます。 新しい映画でも、スペクターの幹部会議がありました。以前のスペクターの会議よりも、いっそう重々しい雰囲気でした。さらに、公開処刑は、電気椅子ではなく、殺し屋が裏切り者を叩きのめす形で行われました。これは、時代に逆行するような形ですが、じつにリアル路線にふさわしいものでした。 というようなことなどなど、『007スペクター』はやはり基本リアル路線でした。 それとはべつに、2点ばかり?と思うところがありました。 まず、ボンドが、スペクターの秘密基地で捕らえられ、拷問されるシーンがあります。 この窮地を、ボンドは身につけたひとつの秘密兵器を駆使して切り抜けます。 しかしですね、なんでスペクターは、あらかじめボンドからそれを取り上げなかったのでしょうか。もちろん秘密兵器ですから、外見上はそんな仕掛けがあるとはわかりません。でも、21世紀の世の中で、シークレット・エージェントが身につけている物には、何か仕込まれていると警戒するのは当然のことと思うのですが。 もうひとつ、同じようなスペクターの不思議な対応について。 ジェームズ・ボンドは、クライマックスで旧MI6の建物に乗り込もうとして、スペクターに捕まってしまいます。 ボンドは拘束されて連れて行かれようとした瞬間、手にした拳銃をスペクターの手下どもに向けて発砲します。この場面も、イージーではないのでしょうか。スペクターには、捕らえた相手を身体検査するという習慣がなかったのでしょうか。 このあとボンドは旧MI6の建物に潜入します。ここでボンドが手にしていた拳銃は、どうもジグ・ザウエル P226のようです。これは、ボンドが、ボンド・ガールのマドレーヌに護身用に渡したものだと思います。 ボンドが旧MI6の建物に乗り込む以前に、マドレーヌから決別宣言があったときに返されたのだっけ。いずれにしても、ボンドが愛用するワルサーPPKではありませんでした。 そして、ボンドは、建物内に拉致されていたマドレーヌを救って、MI6が爆破される寸前にボートで脱出します。 このときのボートが、『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ(1999)』に出てきたQボートだったら嬉しかったんだけど、ちょっとちがったようでした。 この時点で、スペクター一味がヘリコプターで逃げようとしています。ボンドは、ボートで追いかけ、ヘリコプターを銃撃する。その手にはワルサーPPKが。 いつのまに226からPPKに変えたのか。きっと、226の銃弾を撃ち尽くして、もう一丁もっていたPPKを取り出したのでしょう。 さてさて、『007スペクター』は、残念ながら当方が好む荒唐無稽、奇想天外系の007ではありませんでした。 映画としてはスリリングな展開でしたが、ショーン・コネリー版やピアース・ブロスナン版のような、これぞ007というには、もの足りなさがありました。 とりわけ、あの「ジェームズ・ボンドのテーマ」が、ラストでしか流れなかったが悲しい。『スカイフォール』だって、アストンマーチンDB5が姿を現したシーンなどで使われ、感涙ものだったのに。 やっぱりボンドの活躍は、「ジェームズ・ボンドのテーマ」にのってこそ高揚感があります。 次回作も、ダニエル・クレイグの続投とリアル路線は継続になるのでしょうか。 多少なりともファンタージー系に傾いているところに期待をもちたいと思います。 映画(全般) ブログランキングへ ご支援よろしくお願いします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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