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May 1, 2016
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カテゴリ:ヒーロー映画


 夢の対決というものがあります。
 たとえば、ゴジラ対ガメラとか。
 ジャイアント馬場対アントニオ猪木とか。
 さらに、キャプテン・アメリカ対アイアンマン。

 『シビル・ウォー』では、なんとキャプテン・アメリカ対アイアンマンの夢の対決が実現したのです。

 ゴジラは東宝の看板怪獣です。一方のガメラは大映の看板怪獣。
 双方ともに映画の中では最強の怪獣です。
 最強がふたついると、見ている側としてはどっちが強いか、とても興味があるところです。
 でも、二大怪獣が闘うことは、今までのところありません。
 それは、映画会社が異なるという単純な理由もありますが、双方が看板怪獣であるだけに、どっちが強いか白黒つけちゃうわけにはいかないからでしょう。

 しかし、場合によっては『座頭市と用心棒(1970)』という夢の対決が実現してしまうことがあります。勝新太郎演じる座頭市は大映のキャラクターで、三船敏郎の用心棒は東宝のそれです。
 あるいは、『新座頭市・破れ!唐人剣(1971)』では、日本の時代劇ヒーロー座頭市と香港の時代劇ヒーロー片腕必殺剣の方剛が対決します。この映画では、日本版と香港版とで、決着のつきかたがちがうとか。やはり、ヒーロー対決は気をつかいます。

 もし、ゴジラ対ガメラが実現したとして、東宝版はゴジラが勝ち、大映版ではガメラが勝つ、なんてのもおもしろいかもしれません。でも、リアリティがなくなりますね。

 ヒーロー同士、どっちが強いかは見てみたい気持ちは十分なんですが、そこにはタブー感があります。それはヒーローは、つまり正義の人だから、どっちかを負け役にしたくないという気持ちです。

 ジャイアント馬場とアントニオ猪木の対戦も、プロレスファンのみならず、世間的にも注目を集めていました。実現には至りませんでしたが。
 この2人は、かつて、日本プロレスという団体に所属していました。力道山が創設し、1953年から1973年まで活動した団体です。

 この団体は、日本人レスラーと外国人レスラーの対戦が基本となっていて、日本人のスター選手同士の対戦はありませんでした。
 いってみれば、日本人レスラーは1号から始まる仮面ライダーの軍団で、外国人はショッカーの怪人という構図です。

 プロレスでは、善玉側をベビーフェイス、対する悪玉側はヒールといいます。
 日本プロレスにおいては、日本人レスラーがベビーフェイスであり、外国人レスラーはヒールでした。
 だから、ベビーフェイス同士の試合は原則的に行われません。
 プロレスの試合は、基本的に善玉と悪玉のバトルですから、ベビーフェイスの日本人同士の闘いはタブーなのです。

 そういう状況下の日本プロレスの歴史の中で、二度ほどテレビ中継を通じて日本人のスターレスラー(ベビーフェイス)同士の対戦を見たことがあります。

 一回目は、1960年代の前半に、遠藤幸吉対吉村道明でした。結果は吉村のリングアウト負けでしたが、試合後の吉村は「いやぁ、まいりました」という調子で笑っていました。勝った遠藤も、笑顔で吉村の健闘を讃えていました。
 プロレスというのは喧嘩まがいにやりあうもので、善玉の日本人と悪玉の外国人の対決は流血や反則攻撃もあるという殺伐としたものだったので、プロレスの試合で闘った者同士が和気藹々としている様子はとても珍しいものでした。
 この場面からは、「たまたま闘って勝負がついたけど、本来はお互いベビーフェイスの仲間同士だもんね」とことさらに強調したがっている様子を感じました。

 二回目に見たのは、1970年代の日本プロレス末期に、高千穂明久(後のグレート・カブキ)対グレート小鹿戦です。
 この対戦は、日本プロレスが崩壊に向かってひた走る時期でした。馬場、猪木の2大スターが日本プロレスから脱退し、観客動員数は低下の一途をたどっていました。そこで、なんとか客を入れたいとの思いから、それまでのタブーを破って、日本人同士の試合を組んだのです。

 この試合が遠藤、吉村戦とちがうのは、小鹿がヒールだったというところです。

 当時、日本人レスラーが修行や遠征等で本場アメリカに行くと、ヒールになりました。所変われば品変わる、というわけですね。
 日本人レスラーは、日本に帰ってくればベビーフェイスになります。ところが、グレート小鹿は、アメリカでやっていたヒールのままで日本でも試合をしたのです。
 だから、遠藤、吉村戦のように、「お互いベビーフェイスの仲間同士だもんね」という雰囲気はありませんでした。
 グレート小鹿は反則攻撃で高千穂を苦しめましたが、最後は高千穂が一瞬の逆転技である逆さ押さえこみで勝利をものにしました。さらに、このときのレフェリーのカウントが早かった。
 一瞬の返し技、早いカウントというのは、小鹿の負け方をフォローするものです。悪役小鹿の負けは致し方ないところだが、この負けは不運な負け方だった。決して実力で負けたわけではない、との言い訳が読み取れます。
 たとえ善玉と悪玉の試合であっても、タブーであった日本人同士の対決においては、負けた方の商品価値やプライドを傷つけることをしなかったのです。

 さてさて、『シビルウォー』です。
 ことほどさように、ヒーロー(ベビーフェイス)同士の対決は難しい。
 しかし、この映画では、なんとスーパーヒーローたちが、キャプテン・アメリカ軍団とアイアンマン軍団に分かれてバトルを繰り広げます。

 そこには、意見の食い違いもあれば、悪の奸計にまんまと嵌まって生じた誤解もあって、対立に発展してしまいます。

 ヒーローバトルの第1回戦は、空港を舞台としました。
 超人たちの並外れた力が激突するので、空港の建物も航空機もつぎつぎと破壊されていきます。
 でも、このバトルは、本気のぶつかり合いとは言い難い様相を呈していました。
 さすがに善玉ヒーロー同士なので、悪に対するときのように、相手をぶっつぶすまでの気持ちはもてないようでした。
 これは、先に書いたプロレスの遠藤対吉村の試合の印象に似ていなくもないと思いました。

 そして、シベリアのヒドラ秘密基地で、第2回戦が行われます。
 ここでは、キャプテン・アメリカとアイアンマンの壮絶大将決戦となります。
 これまで、様々な行き違いがあっても、根底ではお互いに仲間意識なり、リスペクト感なりをもっていましたが、ある事情からアイアンマンが本気でぶち切れます・・・。
 小鹿の反則技に業を煮やした高千穂が勝負をつけにいった、とそこにもっていくのはこじつけでしょうか。

 あとは見てのお楽しみ。

 この映画の中では、一見まじめで堅物そうなキャプテン・アメリカ=スティーブ・ロジャースが反体制側を選び、一見自由奔放、やんちゃぼうずのアイアンマン=トニー・スタークがスーパーヒーローの活動を規制する「ソコヴィア協定」を受け入れます。
 考えてみれば、トニーのアイデンティティはスターク・インダストリーと切り離すわけにいきません。それにくらべてスティーブは、長い冷凍睡眠状態から目覚めた存在ですから、現在の社会になんのしがらみもありません。

 それにしても、この映画は豪華絢爛。アベンジャーズがらみ以外に、スパイダーマンやアントマンも登場するとは思っていませんでした。

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Last updated  May 1, 2016 10:07:40 PM
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