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テーマ:ネットで観た映画(104)
カテゴリ:ミステリー映画
9人の翻訳家 囚われたベストセラー【Blu-ray】 [ ランベール・ウィルソン ] スティーブン・キングの『ミザリー』では、小説『ミザリー』の熱狂的なファンが、作家を拉致して、自分のために新作続編を書かせた。 その気持ちは、わかる。 当方、何気なく『ザ・ファブル(2019)』を見たら、おもしろくって、何回も繰り返して見た。 原作漫画も読んだし、公式ガイドブックも買った。 サブスクで『ザ・ファブル 殺さない殺し屋(2021)』が配信されたときは、『ザ・ファブル』と交互に、繰り返し見続けたほどだ。 じつのところは、すぐにも続編を見たい気持ちでいっぱいだったが、それはできない相談だから、代替行為としてその2本を見ていたのだ。 『ザ・ファブル』のおもしろさとは、殺しの天才と、彼に課せられた平凡な日常生活とのギャップにあると思う。 今は、アニメを毎週心待ちにして見ているし、もちろん映画の続編を熱望している。 事程左様に、おもしろい作品は、ファンの過剰ともいえる期待、または渇望感を生むのだ。 【あらすじ】 世界的ベストセラーミステリー「デダリュス」三部作の完結編が書きあがった。出版社社長エリックは、独占出版権を獲得し、世界同時出版に向けて翻訳作業に取り掛かる。9人の翻訳家が集められるが、小説の事前流出を防ぐために、地下シェルターに幽閉される。そこでは、外出もSNSも電話も禁止だ。にもかかわらず、原稿の一部がネットに流出し、「500万ユーロを支払わないと、次々と原稿を公開する」という脅迫メールが届く。疑心暗鬼に囚われたエリックの締め付けは、ますますエスカレートし、拳銃の引き金が引かれる。しかし、原稿の流出は止まらず─。 冷酷な隔離、厳しい行動管理のもと、なぜ原稿は流出したのか?これは、密室殺人に通じるミステリーである。 そして、ベストセラーとなった小説は、読者のものか、作者のものか、それとも出版社のものなのか? 後半部分で、オリジナル原稿の奪取作戦が回想される。 これまでの犯罪ストーリーは、金塊や宝石や、国家的な重要機密、ヘロイン等が狙われる話が多かった。 しかし、今回は、小説の原稿なのだ。 要は、モノがなんであっても、それが大金を生みだせばいいのだ。 原稿の奪取作戦が、計画通りにことが運ぶかどうか、サスペンスフルな展開が繰り広げられる。 しかし、映画の流れの上では、その時点ですでに原稿の流出はわかってしまっているんだよね。 「作戦が成功し、原稿が流出したっていう話なの?」と先読みすれば、物足りなさを感じた。 スリリングではあっても、結果は見えているから、ちょっともどかしかったのだ。 だが、しかし、この映画はそんな生易しい展開ではない。 原稿の奪取のサスペンス、さらに流出にかかわる謎解きだけではない。 隠された真実が顕わになる。 「そうだったのか!」 鮮烈な大どんでん返しが起こるのだよ! 出版社の社長エリックは、冷酷非情なヴィランとして、わかりやすく描かれている。 彼は、大ベストセラー小説という金脈を掘り当て、金銭的利益が最優先事項だという価値観で行動する。 それに対して翻訳家たちからは、作品や文学に対する愛が語られる。 さらに、熱狂的なファンの立場からすると、ネット流出がルール違反であることを知っていたとしても、ベストセラー小説への飢えを満たそうとするのだ。 世界的なベストセラー小説『ダ・ヴィンチ・コード』などの「ロバート・ラングドン」シリーズでは、4作目となる小説『インフェルノ』の出版時には、内容の流出を防ぐために、翻訳家たちを地下室に隔離して各国語に翻訳させたそうだ。 そのことが『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』の元ネタになっている。 無論、『インフェルノ』を翻訳しているときに、地下室で銃撃などの事件性があるできごとが起こったわけではないのだろうが。
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