だいぶ遅れてしまいましたが、やっと新装版読むことができました。
文庫本一冊目の『普通の男』のほうは、既に何年か前に読んでたのですが
今回、新装版で文庫本『普通の男』『普通の恋』の2冊をくっつけて
更に書き下ろしのショートストーリーも収録しての発売ってことだったのですが。
すいません。なかなか値段の方で購入する気になれず。
だって、文庫本買ってるし、読んでるし。
で、ずっと待ち続けてやっと手に入れて今読み終わりました。
何年か前に一冊目は読んでいたので、ちょっと手前の話しは知ってるけれど。
やっぱり最初からページを捲って、ゆっくりゆっくり三日間掛けて読みました。
わたしは、小説を読むのがものすごく遅いです。
文字の意味をかみ砕き、その情景を想像しながら読む作業に
とっても時間を取られます。
時々、その文字から思う浮かべる情景と言葉の羅列が表す意味が
すっきりと心の中に入ってこない場合は
同じ文章を3回くらい繰り返し読むので、ほんとうに大変なんです。
たぶん、他の人よりも理解力に欠けているのかもしれません。
でも、このお話は、前回読んだときも。
冒頭の文章から、
『コンビニで買うおにぎりは赤飯に決めている。』という明確で理解しやすい
文字で始まっていたので、すっきりとその情景が、まず目に浮かび。
コンビニ・赤飯おにぎり・会社員といったなじみ深い個体の羅列が
わたしとしては、その後すんなりと文庫本一冊の世界に入り込めたのだと思います。
そして。この物語は、初めて編集者になった男性が四苦八苦しながら仕事を
覚え、そこで生まれて初めて同僚の男性社員に恋心を抱き
相手の男性社員も、同じように生まれて初めて男性に恋心を抱き
抑えることの出来ないその恋心を、相手に伝えることができず
ふたりとも自分自身に混乱していく様を描いたお話なのですが。
どこを読んでも、主人公達にとっては初めて物語なので。
文字理解力が不足しているわたしには
その初めてという状況と混乱が、丁寧に書かれているのでほんとうに読みやすく
すらすらと読み進めることができました。
でも、この物語はBL小説なのに、いわゆるアレな激しいシーンがまったくなく
お互いが自分の気持ちに自分で消化できず、右往左往して誤解が生じていく
だけのシーンが、延々と続くのです。
でも、とても理解しやすく。その気持ちの行方をふたりがどうしていくのか
非常に気になる文章で、お互いのかみ合わない心の糸を
どうやって引き寄せて心を寄り添わせていくのか
本当に気になってしまう、とても良い文章でした。
とても良い文章を書く作家さんは、何回読んでも
読者を飽きさせない力があるのだと思います。
前回読んで話しの筋を知っているのに。
もう一度、ゆっくりゆっくり楽しみながら読ませてしまうのは
その作家さんの書く文字とそれが表す物語の意味に
読者は、引き寄せられて、読むたびに気持ちよくなるのだと
思います。
作家さんって、すごいなあと思います。
榎田さんという作家さんも、きっと、そんなふうに
読者を、気持ちよくさせてくれる文章表現をする人なのだと思います。
とても良い小説でした。
これは好きな物語です。これからもずっと好きなお話だと思います。