宇宙レストラン

ある時、シンデレラに憧れていた少女がいました。

少女は、玉ねぎの皮をコツコツと剥くという下働きをしながら、

シンデレラになるにはどうしたらいいのかと夢見ていました。

夢見ている時間が少女の喜びでした。

そんなロマンチックで無邪気な少女は、ある日、

もうすぐ玉ねぎが無くなってしまう。仕事が無くなってしまう、とシクシクと泣いておりました。

仕事が無くなるという事は、自分が必要では無くなるのだと、

生きていかれない事を意味するのだと、

恐怖に怯えた少女は、ある日、とうとう玉ねぎの皮を剥く事を止めてしまいました。

玉ねぎが無くなる恐怖に打ち勝つ勇気を持てなかったのです。

少女はシンデレラに憧れながらも、目の前の現実の奴隷となっていました。

現実に少女は、舞踏会すら出たことは無かったのです。

慣れ親しんだ場所は薄汚れていましたが、少女にとっては居心地がよく、安全で、

夢見る事を許された素晴らしい場所でした。

ですが、夢見る事しか許されない場所だとは気が付きませんでした。

シンデレラに憧れた少女は、何千年もの時を、夢を見続けることに費やしましたが、

決して夢が現実になる事はありませんでした。

それでも少女は、お城の中の寒くて、汚く狭いこの場所で、

たった一つの玉ねぎと寄り添いながら生きる事、

それが正しい選択なのだという思いを捨てられずにいたのです。

そしてさらに何千年かの時が過ぎたころ、少女はふと思いました。

この玉ねぎは私にとって何なんだろう？

少女は、長い年月の間、夢見る事が人生の喜びだと生きている中で、

玉ねぎの皮を剥くことが出来る事さえも忘れ、

そして誰から与えられたのかも忘れ去っていましたが、

玉ねぎの存在は月日と共に大きくなり、少女にとって、ますます大切な存在になっていたのです。

少女は大切な玉ねぎを観察し、玉ねぎをあらゆる角度から見つめてみましたが、答えは出ません。

少女は夢見ることをやめ、玉ねぎと向き合い始めました。

意外にもそれは少女にとって楽しい時間でした。

玉ねぎには色々な発見があり、叶わない夢を見続けるよりも生きている喜びを感じます。

ある日、少女は恐る恐る最後の一つの玉ねぎを剥き始めました。

玉ねぎを見つめる事から、玉ねぎを剥くという行動へと進んだのです。

少女はコツコツと一生懸命に剥ぎました。恐怖で手は震え、目からは涙が出てきます。

痛みで出ている涙に、いつしか悲しみと恐怖による涙が混じります。

この選択が正しいのかと不安で仕方がありませんが、少女の中で何かが始まったのです。

玉ねぎが無くなったら自分はどうなってしまうのか？

愛する玉ねぎが無くなるという、

その不安と恐怖にたった一人で向き合いながら、玉ねぎの皮を剥き続けたのです。

最後の玉ねぎの皮を剥き終わった時には、少女の涙は出尽くし、涙はこぼれませんでした。

玉ねぎを剥き続けるという恐怖との戦いを終えた少女の顔は、

幼い少女から、王妃のような威厳に満ちた顔へと変化していました。

王妃のような威厳をたたえた少女は、一つの扉を見つけると、

立ち上がり、迷うことなく扉を開けました。

少女のいた部屋のドアが開け放たれ、眩しい光が少女のいた部屋へと流れ込んできます。

ドアの向こうには、シャンデリアが煌めく美しい王宮です。

美しく管理された王宮の庭には、小鳥が楽しげな歌を歌い、

美しいドレスを着た華やかな蝶たちが、キラキラと輝く太陽の光に合わせてダンスを楽しんでいます。

太陽の輝きは王宮の中にも差し込み、光のカーテンのように揺れています。。

王宮には老若男女が集まり、何かのお祝いが始まるようです。

少女が王宮へと足を踏み入れると、少女の汚れた服は美しく輝くドレスへと変わります。

少女の頬はバラ色に輝き、少女のすべてが美しく輝き始めます。

少女からはこの世のものとは思えない神々しい香りが漂い、

美しすぎる少女に誰もが見とれます。

美しく輝きだした少女に近づく一人の王子。

「ようやく君に会えたのだ。」と、ひざまずき、少女の手にキスをすると、

少女の手を取り走り出します。

少女は王子を知っていました。ずっと忘れていたのです。

二人の目から涙がこぼれ落ちます。

王子が叫びます。

「父よ母よ、ようやく出会えました。出会えたのです！！」

王子は玉座に座る父と母の前で立ち止まると、少女と見つめあい、互いに微笑むと、

王子は少女の形の良い小さな頭に、美しい宝石で飾られた王冠を載せました。

固唾をのんで見守っていた人々から、割れんばかりの拍手が沸き起こります。

その時、どこからかラッパが鳴り響き、天が割れ、多くの天使が喜びの歌を歌い、空を舞っています。

何千年もの時を経て、今、幕は上がり、神の祝宴が始まったのです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ＥＮＤ


ところで、あなたはシンデレラになる準備は出来てる？



いつも応援クリックを本当にありがとうございます。
この記事を多くの方に読んで頂きたいと切に願っております。
ご賛同いただけましたらご協力をお願い申し上げます。
↓　↓　↓　↓

にほんブログ村

精神世界ランキング

 ☆Facebookページ開設しました。

「虹の壺」ファンページ 

EarthOneスタッフブログ
『蜘蛛の糸』