高橋克彦『写楽殺人事件』
東洲斎写楽とは何者だったのか。謎の多すぎる人物、本当の姿が見えない人物。写楽は生きていた当時から謎に包まれた絵師だった。だからこそ、色々な物語が想像される。この作品もそんな作品の一つにすぎない。それにも関わらず、私はこの作品を“事実”として受け入れてしまいそうになった。初めて読んだ中学2年生の頃の話だ。さすが高橋克彦と言うべきか、とにかく吸引力のある文章。そして写楽や浮世絵などに関する情報も厚い。正直、犯人が誰かよりも、写楽は何者なのかを解き明かしていく方に心を奪われた。とにかく吸い込まれて、食事やトイレなんか忘れるぐらい熱中して読んでしまう。傑作だ。