F-projectの効果は?
東京ヤクルトスワローズが観客動員増を目標に始めた新プロジェクト、「F-project(FはFuruta、Fan、Fun、Fullの意)」が、初めてのシーズンを終えた。たまたま調べる機会があり、この成果を分析してみた。今シーズンの神宮球場については、終盤3試合ほど観戦しただけなので正確な実感を得たわけではない。ただ、自分の印象は「変わってはいるが、それが自分自身の喜びとして実感できた」というわけではなかったのが正直なところだ。まず、観客動員数の変化について。2006年の観客動員は1,315,389人(1試合平均18,019人)。ちなみに、2005年は1,307,731人(1試合平均17,914人)。つまり、観客数の減少については歯止めがかかったとも言えなくはないが、成功ではないと思う(ちなみに、開幕前には「今年は30万人増を目指す」という目標があったらしい⇒http://www.daily.co.jp/baseball/2005/11/02/193019.shtml)。次に。自分は巨人ファンであり、ビジター席で観戦することがほとんどなので、自分がその斬新さに気付いていないかもしれないとの仮説の下、知人で今年神宮球場に足を運んだ人にメールで簡単なヒアリングをしてみた(8人と少数だが、正式なものではないのでご勘弁を)。1人だけ年間15回足を運ばれた方がいらっしゃった。この方はさすがに慣れていて、昨年からの多くの変化があった(最後まで残るお客様が増えた、より楽しめる空間になった、など)という感想をおっしゃっていた。一方、残りの7人はみな3回以下の観戦数だった。うち4人は今年初めてスタジアムに行った方だったのが、面白さを感じていた方は7人中わずか1人という結果となった(ただし、この方は東京アパッチとのコラボレーションで興味を持ったバスケファンなのだが…)。この結果で、「頻繁に足を運ぶファンにとっては非常に魅力的な企画が出されているが、一般のお客さんがなかなかそれを享受できていない」現状が見えてくる。これこそが、今季の観客が増えなかった最大の原因ではないかと思った。詳しく考えてみる。このプロジェクトの主旨として、オフィス街である都心のサラリーマンなどを取り込みたいという考えが伝わってくる。私はサラリーマンではないが、観戦感覚はそれに近いのでは、と思っている。神宮球場に行くことは時間的にはギリギリとなることがほとんどだ。試合開始後に神宮球場に到着することもある。ちなみに、観戦に行くかどうかはその場のノリで決めることも多い。一人でプラリと行くこともある。では、現状の演出はそういう人間が適切にサービスが受けられる状態にあるのだろうか。サービスというのは顧客が感じられなければ意味がないのであるが、私が聞いた中では、あまり足を運ばないファンがそこをどれだけ感じられているかが非常に疑問の残るものであった。試合の主役はもちろん選手達なので、彼らが魅力あるプレイをすることが重要ではある。しかし、もう一歩お客さんを喜ばせるには試合の合間のサービスが不可欠だが、まだその質が足りないのではないかと思うのだ。実は楽天の最終戦の時にたまたま仙台にいたのでフルキャストで観戦したのだが、彼らはそれこそ毎イニングの合間に演出を提供していた。あまり野球に興味のない人々も非常に喜んでいたし、最終戦にもかかわらず満員であった。もちろん楽天も観客動員が昨年よりも減っているのが現状であるし、他の問題もあるのだが(それは別に書くとして)、彼らの方が努力とその成果の可能性を感じさせるのも事実だ。1人、「別に他の球団と比べて真新しいファンサービスがあるとは思わなかった」という意見があったのだが、こういう意見がなくなったとき、真の改革が実現できると思う。