『ホットミルク。』
私は、「ホットミルク」を、あまり好んで飲まない。というか、「ホットミルク」は、嫌いだ。あの、ホットミルク特有の、表面にはる薄い膜が、小さい頃からなぜか、嫌いだった。ホットミルクに砂糖などが入った、「中途半端に甘いバージョン」にいたっては、最悪だ。冷たい牛乳は、好きだし、たっぷりの牛乳で作る、濃厚なコーンスープにはる薄い膜は、むしろ大好きなのに。「好み」とは、不思議なものである。私が、小学4年生のとき、母方の祖母が亡くなった。癌であった。私の「虎のような,性格の荒い実母」と違い、性格の「たいへん穏やかな優しい人」だった。何軒も病院をかわり、「もう打つ手はありません。」と、医師から宣告された末、自宅で、ほぼ寝たきりの「最後の日々」を過ごしていた。体のあちこちにあったらしき癌は、最後は、顔の頬の部分に転移し、サプリメントと、プロティン等を「ホットミルク」で、食事代わりにしなければならないほど、祖母の容態は、悪化していた。ふっくらしていた祖母が、みるみるやせ細っていく様子は、子供心にも、そう遠くない未来に起こる、 『いやな何か』を充分予感させた。そんな祖母が、ある日、ミルクパン(ミルク専用のなべ)に残った、自分の食事用に暖めたホットミルクの残りを見て、弱弱しい声で、『ばあちゃんの残りのとば、飲んでも、大丈夫かとよ..。』(自分の残りのホットミルクを飲んでも、病気は移らないよ。)と、ぽつりと言った。「いつもホットミルクに、 全く手をつけない私」に気づいていたのだ。私は、一瞬きょとんとして、次の瞬間、「罪悪感」で、胸がいっぱいになった。私は、ただ、嫌いなだけで、全くそんなつもりは、なかったのだが、祖母は、ずーっと、気にしていたのだ。私は、すぐさまキッチンに向かうと、自分用のカップに「大嫌いだったホットミルク」を、なみなみとそそぎ、祖母の目の前で、無理に一気飲みした。微妙に生暖かい、さめかかった白い液体は、私ののどの奥に吸い込まれていった。気持ち悪かったけど、私は、必死で、がまんして笑った。祖母は、少しだけ、微笑んだ。あれから、何年もたち、8歳の息子の母となった。息子にホットミルクをせがまれるたび、あのときの祖母の少しだけ微笑んだ顔が、今も、おぼろげに蘇ってくる。おしらせ、..7/9日のテスト終了まで、 お返事、訪問が遅れます。 気長に、お待ちください。 よろしくお願いします。