鳩山政権の米軍への“思いやり”は自公より突出
昨年秋に発足した鳩山・民主党政権が初めて編成し,先月下旬に成立した2010年度予算。 この中で,『米軍再編経費』,『アメリカ軍「思いやり予算」』,『沖縄のアメリカ軍基地・訓練を「たらい回し」するSACO(沖縄に関する特別行動委員会)関係経費』の合計額が,過去最高の3,369億円に上っています(グラフ1)。 自民・公明両党の旧政権に比べても,アメリカ軍への“思いやり”ぶりは異常突出しています。 過去最高となった理由は,米軍再編経費の急膨張です。 鳩山政権が,本格実施の局面に入ってきた米軍再編で,自民党・公明党連立政権下の日米合意をほぼそのまま踏襲しているからです。 前年度比で481億円も増額し,総額を1,320億円と1.6倍化しました。(歳出ベース,以下同じ) このうち増額幅が大きい事業のひとつが,沖縄のアメリカ海兵隊「移転」のためとして行われるアメリカ領グアムでの基地増強計画(前年度比126億円増)です。 アメリカ領にある米軍基地を日本国民の税金を使って建設するもので,世界的にも,歴史的にも例を見ません。 もうひとつは,アメリカ海軍厚木基地(神奈川県)の空母艦載機をアメリカ海兵隊岩国基地(山口県)に移駐する計画(同215億円増)です。 これも基地の大増強計画です。 移駐に伴う新たなアメリカ軍住宅建設のため,周辺住民の強い反対にもかかわらず,愛宕山(岩国市)の用地買収費も初めて計上しました。 民主党は野党時代,沖縄の海兵隊のグアム「移転」協定や,米軍再編計画を受け入れた自治体だけに「再編交付金」を出すという露骨な「アメとムチ」の政策である米軍再編特措法に反対しました。 昨年の総選挙でもマニフェスト(政権公約)で「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」と明記。 政権発足直後も,北沢俊美防衛相は,野党議員の国会質問に対し,アメリカ海兵隊の普天間基地(沖縄県宜野湾市)の「移設」問題に限らず,「日本における米軍駐留の全体の見直し」を行うとの考えを示していました(昨年11月20日,衆議院安全保障委員会)。 ところが,予算案を決定した昨年12月25日の記者会見では,北沢氏は「米軍再編については,普天間飛行場の移設先の検討を続けていくことになっているが,それ以外のものは淡々と予算計上をして執行していく」と表明し,国民への公約を裏切りました。 しかも,「普天間以外」というものの,普天間基地のアメリカ海兵隊キャンプ・シュワブ沿岸部(名護市)への「移設」という従来の日米合意に基づき,シュワブ内の既存隊舎などの再配置や環境現況調査を継続するための費用も計上。 自民党・公明党連立政権下の計画を白紙に戻したわけではありません。 実際,防衛省が作成した2010年度予算の説明資料は,普天間「移設」問題を含め「(米軍)再編関連措置を的確かつ迅速に実施する」とした自民党・公明党連立政権の閣議決定(2006年5月)を踏まえて,「施策の推進」を図るとしています。 一方で,鳩山政権は,普天間基地の新たな「移設」先を5月までに決定するとして,総選挙での「県外・国外移設」という公約に背いて,「県内移設」の動きを強めています。 具体的な「移設」先が決定した場合は,「速やかに必要な契約手続きに入れるよう」(防衛省)に予備費(3,500億円)などを活用し,新たな負担を行う方針です。 政権内の有力案として,沖縄の米海軍ホワイト・ビーチ沖(うるま市)を埋め立て,3,600メートル級の滑走路2本と3,000メートル級の滑走路1本を持った巨大基地を建設するという計画が報じられ,県内では「何のための見直しなのか」という批判が上がっています。 アメリカ軍への「思いやり予算」(日米地位協定でも義務のない米軍駐留経費の日本側負担)も1,881億円と依然,高水準です(内訳はグラフ2)。 民主党は予算編成作業の目玉として「事業仕分け」を行いました。 「思いやり予算」については,米軍基地で働く従業員の給与水準だけを対象として実施し,「見直しを行う」との評価結果を出しました。しかし,政府は2010年度予算で「見直し」を行いませんでした。 SACO関係経費は前年度比57億円増の169億円。 周辺住民が強く反対しているアメリカ軍の海兵隊北部訓練場のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)の工事費もきっちりと盛り込んでいます。 もう言葉もありません。