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源義経黄金伝説■第28回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 Manga Agency山田企画事務所 ★you tube「マンガ家になる塾ー漫画の描き方 ★「マンガ家になる塾」★ 西行は義経に、東大寺の重源(ちょうげん)から預かったものを渡す時がきたと考えた。 「さあ、義経殿。やっと二人になれたところで、重源殿からの贈り物です」 西行は義経に竹包みを差し出している。 「これはどうもありがとうございます。さて、これは…」 「まあ、まあ、開けてくだされ。それからお話しいたします」 西行は、にこりと微笑んだようであった。 「おお、これは、建物の図面ではござりませぬか。これを私のために…」 義経は子供のように、喜んでいた。 「そのように喜んでくだされるならば、西行は、いささか恥ずかしく思います。 いやいや無論、私が図を起こしたものではない。ほれ、お主も知ってござろう。重源様の図面なのじゃ」 「おお、あの東大寺を再建されておられる重源様の…」 「よいか、私が直々重源様に頼んだのです」 「一体何故に、このような図面を」 「よいか、義経殿」 西行は真剣な顔付きとなり、義経の方へ膝からにじり寄った。 「これはあくまでも二人だけの話ですぞ」 義経は西行のただならぬ気配を感じ、顔色を変えている。 「奥州藤原氏を信じてはならぬ」 「何を仰せられます。あの藤原秀衡殿が…」 「まあ、義経殿。落ち着いて聞きなさい。秀衡殿は別じゃ。秀衡殿のお子様が問題なのじゃ」 「子たちが一体私に対して企みを持っておられるといわれるのか」 「そうじゃ、義経殿。己が身の上考えて見なされい。いずれの身かわからぬお主を育ててくれ、勉強されてくれたは秀衡殿。が、子たちはお主のこと、よくは思っていまい。考えてもみなさい。お主がいることで平泉が危険になっておりますぞ」 「私に、この平泉から逃れよとおっしゃるのか、西行殿。それはあまりではございませんか。私と秀衡様のこと、西行殿はよくご存じではないでしょうか」 義経は涙を流さんばかりである。 「よいか、義経殿。この地図の通り建物を建てなおされませ。そして密かに北上川の抜け穴を作られよ」 西行は、秀衡を動かし人即に手配をさせていた。 「抜け穴ですと、私は敵に後ろを見せる訳にはいきません」 「万が一のための予防策でございます。そして、この造作には、この男を当てられよ」 西行は後ろから、人を呼び入れた。人影が急に義経の前に現れている。 「お初にお目にかかります。東大寺闇法師、十蔵と申します。重源様から命を受けて、この平泉まで参りました。どうか、この建物の作事の支配方は、私にお任せくださいませ」 西行が一人ごちた。 「不思議な縁でござりました。平清盛殿、と私は北面の武士の同僚でございました。清盛殿は平家による日本の支配を確立し、この私は義経殿をお助けしたのです。治承・文治の源平の争いの中を、私は伊勢に草庵をかまえ、戦いとは無関係に生き残ってこれたのも、秀衡殿のお陰です。食扶持の費用は、秀衡殿にまかなっていただいた」 「西行様にとって、秀衡様はどのようなお方なのですか」 「そうでございますな。あれは私が二九才の折りでございましたか。京都で秀衡さまにお会いいたしました。そのおうた折り、佐藤家に、夢を与えて下さったのです」 「夢ですとと」 「そうです、京の戦いにもかかわらず、奥州には、この平泉のような仏教の平和郷、極楽郷があるという夢です。私が昔、この平泉を訪れた時の思い出は、、この戦乱の世に、いつも、目に焼き付いていて慰めとなるは、この束稲山の桜の姿なのです。あれが、この世にあっては、何か平和の証しのように私には見えたのです」 「西行様は、桜の花がそれのどまでにお好きなのか」 義経がたづねる。 「私は、月と花をよく謡います。日本の「しきしま道」の根本なのです。 が、この何年か身近に人の死をみすぎました。その京の地に比べ、この奥州平泉の地、なんと静かなことよ。100年の平和、その時期をお作りななれた奥州藤原氏の見事さよ」 義経が深くためいきをつく。 「西行様は、秀衡さまと御同族と聞いております」 「さようでございます」 「では、藤原秀郷様の子孫ですか」 「そうです」 「兄上が西行さまに在られてごきげんはいかでございましたか」 「銀の猫をいただき歓待させました」 「藤原秀郷の子孫、西行どのが、坂東新王、頼朝殿を、つまり新しい反乱王将門(まさかど)をとどめるわけですか」 「私にとってもこの地は安住の地、が、この私の存在が、この平泉の地を、地獄に変えるかもしれません」(続く) 続く2010改訂 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 Manga Agency山田企画事務所 ★you tube「マンガ家になる塾ー漫画の描き方 ★「マンガ家になる塾」★ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.01.11 22:27:58
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