私が一人暮らしをしていたアパートには、おあつらえ向きの、首吊りに適してそうな
ロフトがあった。
何度そこで試してみたか。
何度、物干しロープを持って、深夜徘徊して死に場所を探したか。
死ねる人は、ドアノブとタオルでさえ首吊りして死ねる。
羨ましい。
今の家には、首吊りに向いている場所がない。
なんか、生きてるのか死んでるのか、鬱なのか、そうじゃないのかすら、
分からない。
とりあえず、今日の段階では、死にたいとは思っていない。
出かけたい、遊びたい、と思っている…関係者の方、ごめんなさい。
でも、楽しみたいよりは、息が詰まって、息抜きしたい。
深夜でもいいから、コンビニまででもいいから、
できることならそっとタクシーを呼んで、外出したい。
引きこもっているわけでもないんだろうけど、物理的、体力的に自粛してもう9ヶ月目。
玄関の外に出たのだって、憶えてない。
「あじさいが欲しい」という来客に留守番中に対応した。
4月末に、たまらず半年ぶりに門の外に出て、少しだけ散歩した。
そうそう、今週は生命保険の会社の電話攻撃の相手に疲れ、
それらしい夢まで見た。
死亡保険金なんていらないのに、昔加入してるから、
そういうのしかなくて、考えたくないよ。もう今は乗り換えできない。
親より先に死ねばスムーズだと、普段から考えている。
ああ、そうそう、つけ加えておかないといけない。
私は、この自粛期間中、中村倫也さんにかなり助けられた
今日というか昨日、久々見たアーティストは、ほとんど活動できずにいる。
年末に買ったライブDVDを、鑑賞できていない。
それは、家庭の事情、定期的にZOOMしてるから、息を殺してなきゃいけない。
そんなので、時間のロスも多いから、やりたいこと、できるはずのこともできなかった。
そんな中、偶然知った、「中村さんちの自宅から」という、中村倫也さんの
ステイホーム動画を楽しんだ。
知らなかっただけで、前から出演作は見ていたのだけど、顔と名前が一致したのは
この、玄関からも出られない家に来てからだ。
哲学的だったり、前向きな生き方だったり、つかみどころがないながらも、
魅力的な人柄に、もっと知りたい、毎日観たい、とどんなに疲れていても朝まで動画を観ていた。
(ライブDVDは起きて、活動的に観たい、歌いたいから、やはり観られない)
三浦さんと同世代で、同じく役者さんなので、複雑。
一人七役、「水曜日が消えた」を劇場で観たかったけど(まだあってるかもしれないけど)
行けそうにない。
死ぬ権利あるよ、と言いつつ、苦しみたくないので、一時期
「コロナで死んだら意外と楽かもね…」とこぼしてみたこともあったが
相当大変そうだ。
おまけに後遺症まであるという。
肺の病で苦しみ続けた人生の終わりには、向いてないように思う。
そうだな、中村倫也さんのおかげで、動画配信、主演ドラマ、主演映画、
次も控えていて…と辛い日々の中でも、なんとなくの目標ができていたのだ。
感謝せねばなるまい。
そういえば、あとひとつ、春の楽しみがあった。
紅茶党の私は、毎年ダージリンファーストフラッシュを楽しみにしている。
その年のものは、お高いのだけど、「頑張ってまた1年生きてて良かった」という味わいなのだ。
貧乏性だから、ホットでおかわりしたい。
今年は、コロナで輸出入がうまくできなかったのと、産地インドですら、
せっかくの紅茶のシャンパン(ダージリンファースト)がダメになってしまったそうだ。
何とか買えただけでも、ありがたい。
で、今年は暑かったので、まだ開封していない。
香りのお茶でもあるので、開けたらすぐ飲みきるのがいい。
美食探偵ではないけれど、最後の晩餐は分からない。
最後と分かっていると、何も食べられそうにない。
でも、中村倫也さんは蕎麦なのだそうだ。
私も蕎麦好きだが、これまた家族がらみで、病気の時ぐらいしか蕎麦は食べられない。
蕎麦を買って、自分で茹でればいい話かもしれないが、そんな自由もこの家ではない。
私も最後の晩餐候補にしておこう。
ドラマで、探偵さんが紅茶を飲んでいたのも、良かった。
そうだ、晩餐はともかく、最後の飲み物は、特別おいしいダージリンファーストフラッシュがいい