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厚生労働省は,長期療養が必要な患者が入院する療養病床を,2012年度までに120,000床以上減らすことなどを目標に掲げた「全国医療費適正化計画」を,10月2日までに正式決定しました。
療養病床削減や入院日数の短縮によって,5年後に約7,500億円もの医療費を抑え込むことができるとしています。 療養病床の削減と入院日数の短縮は,患者を無理やり病院から追い出す施策です。大量の医療・介護難民を生み出す,国民犠牲の「医療費削減」計画となっています。 計画では,政府が各都道府県に対し,療養病床の削減や,平均入院日数の短縮などの目標を立てさせ,それを国が全国計画としてまとめました。 療養病床の2012年度末の全国目標は,44都道府県(3県は検討中)の合計で,約211,000床です(回復期リハビリテーション病棟を除く)。2006年10月時点の病床数(44都道府県の合計で約333,000床)より,約122,000床も減らされることになります。 病院に入院した患者の1回当たりの平均的な入院日数(平均在院日数)は,全国計画で2006年の32.2日を,2012年度には29.8日に,2.4日短縮する目標を掲げました。 計画では,これらの目標達成による「医療費削減効果」を,各都道府県に算出させました。42道府県(5都県は示さず)の医療費総額は,計画を実施しない場合は2012年度に約32.6兆円になるのに対し,計画を実行すれば約31.9兆円に抑えられるとしています。 同計画は,2006年に自民,公明の両党が強行した医療改悪法で策定が決められたものです。 【参考】療養病床 長期にわたる療養が必要な患者が入院する病床。患者が入院する場合,通常は急性期の病床(一般病床)で治療を受けたあと,回復期リハビリ病床での治療を経て,療養病床に移ります。 医療・介護の充実を求める声が高まるなか,5年後に7,500億円もの医療費を圧縮しようという計画を決定したことは,国民の願いに逆行するものです。 計画は中止すべきです。 「医療費適正化計画」の推進は,後期高齢者医療制度の実施とならんで,自民・公明の連立与党が強行した2006年の医療改悪の柱のひとつでした。 改悪に向けた議論のなかで,経済財政諮問会議では2005年,奥田碩日本経団連会長(当時)など民間議員が,医療費の総額をGDP(国内総生産)の伸びの範囲内に抑えるべきだと提案しました。 こうした議論のなかで厚生労働省が打ち出したのが,療養病床や平均入院日数の削減によって医療費の伸びを抑えるというやり方でした。 法案審議時,政府は全国に380,000床ある療養病床を150,000万床まで減らす目標を提示しました。介護型の130,000床を全廃し,医療型の250,000床を150,000床に削減するという内容です。 しかし現場からは,「患者の受け皿となる介護施設や在宅介護などが足りず,多くの介護難民・医療難民を生むことになる」などの批判が続出しました。 都道府県の担当者からも「厚生労働省の指示通りに減らすと,病院にも介護施設にも入れない患者が出かねない」との意見が出されました。このため,計画策定の日程は大きくずれ込みました。 厚生労働省は,今年3月に全国計画を決定する予定でしたが,都道府県の計画がなかなか出そろわず,半年以上も過ぎてからの正式決定となりました。 それでも,まだ3県が未策定というのが現状です。 その内容も,政府が当初目標とした療養病床削減目標数を下回るなど,矛盾にぶつかっています。画一的な削減目標が,現場では通用しないことを示しています。 こうしたなかでも,療養病床を122,000床以上減らす計画を強行することは,深刻化している地域の医療崩壊を,いっそう加速させるものです。 医療切り捨て政策の大本には,社会保障予算の自然増を毎年2,200億円も減らし続けるという社会保障費抑制路線があります。 療養病床の大幅削減の撤回し,国民が安心して暮らせる社会にするために,社会保障を充実させる路線へと転換することを強く求めます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Nov 24, 2008 11:32:40 PM
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